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残り火  作者: 天笠愛雅
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不可抗力?

名前は、上原佳純。

小学校時代の友達だ。

彼女とは特に仲が良かったという訳ではないが、悪い訳でもなかった。

ただ、彼女もまた零斗に思いを寄せているということはなんとなく聞いていたし、その立ち振る舞いからも分かっていた。

まさかそんな彼女が今、彼の隣に、しかも同じ高校にいるなんて。

恐怖すら感じた。

女の執着はここまでのものなのかと。

私は行けるところまで彼らに自然な感じで付いて行き、どのような関係なのか探った。

彼らはスーパーに入って行った。

スーパーなんて高校生のカップルは行かないだろう。

私はただあの二人がまるで夫婦のような仲ではないようにと願うことしかできなかった。

家に帰って私は自分の部屋のベッドの上で泣いた。

外では我慢していた分、とめどなく涙が溢れてくる。

「女の執着」

それは、恐ろしくも、可愛らしくも、儚くもある。

男への愛は裏を返せば支配欲に過ぎない。

私のものにしたいという、アクセサリー感覚でもある。

けれど、私は違う。

違う…。


 いつの間にか寝てしまっていたみたいだ。

瞼が平常時の半分くらいしか開かない。

そうだ、私は泣いたのだ。

体を起こすと、ズキンという鈍い頭痛がした。

昼食も食べていないし、肉体的にも精神的にも疲労のある最悪の目覚めだ。

ただ、いくらかは冷静になれた。

良い冷静さとは言えないかもしれないが。

何で彼のためにそんな一喜一憂しているのか分からなくなってきた。

彼以外だって男の子は星の数ほどいる。

太陽を掴めない女性なんてこの世に溢れかえるほどいるだろう。

私はその女性の中の一人に過ぎない。

そんなぐれた気持ちの中でも、私は自然とインスタを開いた。

彼のストーリーが更新されている。

パスタの写真だ。二人分の。

もう私は何も思わなかった。

いいじゃない、彼が何をしていようと私には関係ないのだから。


 腕が痺れている。

一瞬僕は授業中に寝てしまったのかと思った。

けれどそれは違った。

背中に感じる温かさ。毛布だ。

学校では感じることの無い温もりは、僕に気持ちの良い目覚めを提供してくれた。

テーブルに突っ伏した状態から顔を上げると、部屋には夕日が差し込んでいた。

それと下着姿の佳純が。

…?!

「ごめん!」

僕は元の姿勢に戻った。

痺れた腕に頭が当たり電撃が走ったがそれどころではなかった。

「あ、私こそごめんね。気にしないで。零斗が起きないからお風呂入っちゃったの」

気にしないのはいくら何でも無理があるだろう。というか、彼女は立派な女子高生であるのに、猿のような男子高校生にそんな姿を見られて何も思わないのだろうか。

…慣れている?

そんな考えが頭をよぎった。

「分かったから服着てくれないか?」

「あ、うん、着たよ」

僕は安心し再び顔を上げる。

そこには男子にとっては下着だろ、と思えるような薄着の佳純がいたが、これ以上何か言っても逆に意識していると思われるかもしれないので言及は避けた。

「はぁ、びっくりした」

「ふふ、ごめん」

まるで僕をからかうかのようにいたずらっぽい笑みを浮かべる佳純。

「でもさ、お互い成長したと思わない?」

今それを言うか。色々意識してしまうだろ。

「そう…だね」

「零斗も筋肉ついてるし」

佳純が僕の身体を舐めるように見ているのは分かっているが絶対に目を合わせてはいけないような気がして必死に目を逸らした。

「ねぇ、零斗…」

「ごめん!用事あったんだった!今日はありがとう帰るね」

何か佳純は言おうとしていたが、僕はその場の空気に耐えられなくなって、逃げるように佳純の家を後にした。

「やばすぎ」

初夏の夕空の下、変な体験をした僕はぽつりと呟いた。

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