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残り火  作者: 天笠愛雅
2/8

昔の友達

「あー、彩羽(いろは)?なっつ」

「勝手に見んなって」

フォローされた彩羽の写真を見ていると、中学時代の親友の悠馬(ゆうま)が僕のスマホを覗いてきた。

今日は中学時代の仲良かったグループで久しぶりの集まりだ。

「彩羽ってあの彩羽ちゃん?」

女子の友人、佳純(かすみ)が悠馬に訊く。

「そうそう、なんかインスタ見てんの」

「いや、違くて。違くはないけど…」

「可愛いよねぇ。元気にしてるかな」

佳純がしみじみと言う。

そんな言い方になるのも仕方ない。最後に会ったのは五年くらい前なのだから。

「全然見かけないよな」

僕は週六で駅に行くし、最寄りも彩羽と同じはずなのに一回も見かけたことがない。

謎の力が働いているかのように。

「私は時々見るよ。まあ話したりはないんだけどね」

これもまた女子の友人である未琴(みこと)は会うと言う。なるほど、全く時間が違うのか。

僕は朝練がある日もない日もとりあえず早めに登校する。

対して未琴の学校は比較的近めだ。彼女も同じくらいの距離なのだろう。だから会わない。

「なんならさっき私たちが駅で集まってた時にいたけどね」

「いたのかよ」

 小学生の頃は彩羽とよく一緒にいた記憶がある。

幼稚園も同じだったが特に仲良くなったのは小学校の時だと記憶している。

何でも言い合える仲で、今思えばそういう関係がいかに貴重だったか身に染みて分かる。

今のクラスの女子と接するときは気を遣わなくてはいけないし、あからさまに好意を向けてくる奴もいる。

正直、部活に集中したいから恋愛とかは興味ない。

果たして本当に恋愛に興味が無いのか、それとも好みの女子がいないからそのような言い訳をして恋愛を避けているのか、自分には分からない。

ただクラスに友達と言えるような女子はいないし、絡むのはほとんどが男だ。

まあさすがに僕も男子高校生だから女子と話したい時だってあるけれど。

だからこそ彩羽のような存在は欲しくある。

僕は他の三人にバレない様にそっと彼女のアカウントをフォローした。

「零斗、乾杯してよ」

悠馬が無茶ぶりを投げてきた。

「お前がやれ!」


 不味い。

いつもはペロッと余裕で食べてしまう母の手作りハンバーグが不味い。

余計なことを考えれば考えるほど喉を通らない。

「やっぱ体調でも悪いの?」

母が心配してくる。

「ううん、大丈夫」

大丈夫。体調は別に悪くない。

ただご飯が喉を通らないのだ。

箸の先にちょっとだけハンバーグの欠片を乗せて口へ運ぶ。

だが、それだけでも食べるのがきつい。

理由は分かっている。

彼のことが頭から離れないから。

けれど、この感覚は初めてではない。

彼と仲が良かったのは小学生の頃である。

もし彼と出会ったのが中学や高校だったら今は変わっていたのだろうか。

小学校低学年の私は、いくら彼のことが好きだろうが、小学生なりのアプローチしかできなかった。

彼のものを隠したり意地悪なことを言ったり、よくある「好きな子をいじめる」やつだ。

それを私は懲りずに毎日のようにやっていた。

彼を泣かしてしまって先生に怒られたこともある。

そういう関係だったから最終的には何でも言い合える仲になったのかもしれないけれど、私としては不満である。

意地悪を続ける日々。そんな中、当時一番仲の良かった女の子、未琴に言われたことがある。

「もしかして、零斗くんのこと好き?」

私ははっとした。

よく聞く、誰が誰を好きという会話の「誰が」が私?と。

その時は「そんな訳ないでしょ」と無邪気に言い返したつもりだったが、年月が経ち、小五の私は気づいてしまった。

零斗のことが好き。

その日の残りの授業中、私は少し離れた右前の方に座っている彼のことをずっと見ていた。

時々目が合ってはすっと逸らして。

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