端書き
それは、突然のことだった。
まるで、世界から切り離されたみたいに
まるで、backspaceキーを押したかのように
まるで、もとからこの次元になかったみたいに
君の形は薄れていった。
これは僕の日記みたいなもの、
あえて言い換えるならば君を探す旅路の記録。
だけども僕に君の記憶なんてない。
正確には誰にも君の記憶はない。
でも君はそこにいた。
顔も、名前も、息遣いも、
何も覚えてないけれど、
それ以外は全部覚えてる。
記録は初めから書かないとだね。
語ろうか。僕にとっての君のすべてを。
四月七日 (月) 晴れ
入学初日、話しかけてきたのは君だった…よね。
僕は「あ…」とか「うん…」とかしか言えなかった記憶。
いつの間にか返ってこなくなったけど、
あの日交換したメールアドレスは今も残ってる。
四月二十日 (日) 曇り
初めて君と出掛けた日、
いや、初めて女の子と出掛けた日。
どんな服、どんな髪型、どんな靴だったか。
今はもう覚えてないけど、いつも見てた君よりも
うんと可愛く見えたそんな記憶は残ってる。
五月十五日 (木) 雨時々曇り
この辺りからかなクラスで君を避け始めたのは。
いや、消えてたのかもしれな
。だっておかしいよ。先生だって君を避ける。
しまいには席までなくなって、
君は後ろで立ちすくんでる。
その時の君は心を失ったようだった。
五月三十日 (金) 雨
君は、ついに学校に来なくなった。
でもいなくなった訳じゃない。
メールのやり取りは残ってるから。
十二月
会いたい。その思いで家まで行った。
聞いてたとこは思ったよりも遠くて、
自転車じゃきつかった。
でも、君に会える。
そう思えば何てことはない距離。
だったからこそあの時は絶望だった。
聞いてた住所はここ5年間空き地だったから。
そのあとは誰に聞いても
なにを調べても君の痕跡はなかった。
君の存在そのものが失踪したようだった。




