速度の変わらない想い
俺は急いでいる。
早く彼女に会いたい。
しかし俺の体はこれ以上早く進めない。
こんなに必死に走っているのに、体は言う事を聞いちゃくれない。
それでも出来る限りの力を使って、突き進む。
早く、早く、彼女に会いたい。
すると後ろから嫌な声が聞こえてくる。
ちっ。
また嫌味なあいつか。
「よーぅ。まだこんな所にいんのかよ、ノロマ」
俺の反応も待たず、奴は俺の横を追い抜いて「じゃーなー」と行ってしまった。
腹の立つ奴だ。
ちょくちょく俺をおちょくりに来やがって。
あんな奴じゃなくて、彼女に会いたいんだよ、俺は。
早く、早く。
やっと彼女の後ろ姿が見えた。
「やぁ、やっと会えたね、短針」
「そうね、長針。会いたかったわ」
そういえば、何かで聞いたことがある。
織姫と彦星って奴は年に一度しか会えないらしい。
一時間に一回も会える俺達は、幸せなのかもしれないな。