表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/77

8話 私のトラウマ〜序章〜

「ちょっと安佳里。何ボーっとしてんの?」

「ハッ(゜〇゜;)」


 母が知らないうちにとなりにいる。

 私はリュウヤとの回想シーンから我に返った。

「ちゃんと火加減見てたの?心ここにあらずって感じよ?」

 まさに図星(⌒-⌒;

「…ちょっと眠くなっちゃっただけだよ」

 と、一応ごまかしてみる。

「じゃあ立ったまま寝てたってわけ?」

「寝てないもん。眠かっただけだもん」

「でも意識なかったみたいよ。目ぇ開けて寝てたんじゃないの?」

「お母さん、それ怖いじゃん」

「寝てるあんたは怖くないでしょ。怖いのはこっち」


 全くこの母親は娘の気持ちなどわかっていない。

 幾度もの失恋に、打ちひしがれている私の事情など知りもせず、ただのほほんと好きなお笑い芸人にうかれてるだけ。

 普通、元気のない娘の様子を見たら、

『どうしたの?具合でも悪いの?』とか、

『何か悩みごとでもあるの?』とか、母親なら察知するもんじゃないの?


 そんな私の苛立ちをよそに、母が突拍子もない話を切り出した。

「あ、そうだ。明日ね、銀蔵おじさんが来て1泊する予定になってるから」

「!?工エエェ(゜〇゜ ;)ェエエ工!?ギンゾーがぁ?」

「これっ!おじさんを呼び捨てにしないの!いくら苦手だからって」

「本人の前では言わないよー。でも何で来るの?」

「だってほら、タエおばさんに先立たれちゃってから、おじさん独り暮らしでしょ。さびしんぼうなのよ。最近は親戚の家を渡り歩いてるみたいなの」

「迷惑な話」

「可哀そうなじゃないの。明日の晩はジンギスカンにするわね」

「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lええっ?何でよぉぉ?お母さん、私へのイヤミ?」

 そう。私はジンギスカンが大嫌い。でもそれにはちゃんとした理由がある。

 何を隠そう、そうさせたのは銀蔵おじさんなのだから。

 そしてそれがまさしく、今も続く私のトラウマの発端にもなっているのだ。


 ギンゾーは元漁師。昔、大シケの海に呑まれて行方不明になったことがあるそうだ。

 でも、こういう人間に限って悪運が強いもので、奇跡的に航行中の船に拾われたらしい。

 こんな話を子供の頃に聞かされていたから、私はギンゾーがうちに来るたびいつも、

 ───海で死んじゃえば良かったのに!と思っていた。


「お母さん、ギンゾーはもう年寄りだから魚の方がいいよ。お寿司でもとろうよ」

「ダメよ。お父さんから言われたことなの。二人とも大好物でしょ」

「ジンギスカンなんて、北海道の人が食べるもんでしょ」

「安佳里、それは偏見よ。それにお父さんもおじさんも北海道生まれだから仕方ないでしょ。お肉も柔らかいし、お年寄りでも平気よ」

「(≧ヘ≦)もぉー!」


 私はキッチンから部屋に戻った。我が家は父が帰宅するまで夕飯は食べない。

 明日は憂鬱になる。彼氏がいたら外食するのに今はいない。最悪なタイミング。


 あ〜明日どうしよう?部屋から出ないでおこうかな…

 友達の家に泊まりに行こうかな…


 明日のことをあれこれ考えていると、ギンゾーの顔まで浮かんできた。

 思い出したくもない事なのになぜだろう?

 奴の顔が浮かんでくると、それにまつわる過去の記憶までもが…

 これってやっぱりトラウマのせい?

 

 それは私がまだ、物心ついたかつかないくらい。

 年齢にすると3歳頃の出来事だった。。

                  (続く)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ