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63話 リアクション

これがドラマなら、予期せぬサプライズの感動に、溢れんばかりの涙を流している主人公がいて、会場のエキストラたちも大拍手でバースデーを祝ってくれているシーン。

 でもそれはあくまでフィクションの世界。実際の話、現実っていうのは作られたシナリオのようにはいかない。


 リュウヤからいきなり名前を呼ばれたときは、驚きすぎて固まってしまった。

 目を見開いて口はアルファベットの“O”の字。に開き、両手はほっぺたの横へ。

 誰が見てもヘン顔に見える私がそこにいるだけ。

 しかも観客から注目の視線を一斉に受け、そのヘン顔を会場全体にさらしてしまうハメに。

 恥ずかしさで自分の顔が火照ってゆくのがわかる。おそらく真っ赤になってるかも。

 当然ながら、そこにはドラマのように演出された割れんばかりの拍手なんて存在しない。キョトンとしたお客さんが好奇心の眼差しで私を見てるだけ。


 ───困った。本当に困っちゃった。

 この空気をしらけさせないために私はどうしたらいいの?

 別に私は芸人じゃないんだから、そんなことまで考えなくてもいいんだけど、冷静さに欠けた私の脳が一人歩きしそうになる。


と、そのときだった。

 リュウヤの口から新たな言葉が発せられたのだ。


「安佳里ぃぃ〜!受け取ってくれぇぇ!俺の気持ちはそれだぁぁぁ!」


 ───それって何?何なの?

 そう思ったのは一瞬だけだった。

 気づくと目の前にはさっきのバイト風の店員が、さっきのバースデーケーキを再び片手に持ち、私たちのテーブルの前でさっきのように立っていた。

 デコペンで書かれた“r”の一字足りない“mary me"もそのままに。

 たださっきと違うのは、ろうそくの灯がもう点いていること。


 明らかにバツの悪そうな表情の店員。私と目を合わそうとしない。

 そんなことよりも、ここで私は自分の大変な勘違いにやっと気づいた。本当におバカな勘違い。


 そもそもこのケーキは最初からリュウヤが予定していたもので、今のタイミングで出されるものだったはず。

 それが店員のうっかりミスで先に出されてしまったために、私はさゆみからのプロポーズだと受け取り、彼女を同性愛者だと思いこんでしまったというわけ。

 

 ───はぁ〜勘違いで良かった。。


 冷静さを欠きながらも、ホッと胸をなで下ろしている自分もそこにいた。

 さゆみとはいつまでも親友でいたいもの。そんな関係は信じられないし想像もつかない。

 そんな状況の中、焦り気味のさゆみが小声で私に囁いた。

「ほら安佳里、もっと驚いてよっ!さっきも言ったでしょ!これは見なかったことにしてって」

「…あ」

「今あんたは初めてこのケーキを見たのよ。わかる?さ、早く何か言いなさい!驚いたリアクションでもいいから。早くっ!」

 さゆみの強い命令口調に、なぜか素直に指示に従う私。

 正直、私に多少なりともM気があることは否めない。


「す、すごぉぉい!このケーキぃ〜!ビックリしちゃったぁ!」


 それはそれはとてつもなく白々しい小学生がやる学芸会でのお芝居だった。

 私の横でさゆみがズッコケている。

 小声でさゆみに言い返す私。

「しょうがないじゃない!突然そんなこと言われたって私、女優じゃないもの。一度見ちゃってるんだからねっ!このプレートの文字もプロポーズの言葉も……


 ────(゜〇゜;)ハッ!!


 突然、私は事の重大さに気がついた。

 リュ、リュウヤが私にプロポーズしてるってこと!!?

 反応が鈍い私の胸に再びズキュンと衝撃が襲った。


「それよそれ!上手じゃないの安佳里。その表情ならOKよ!」

「これはお芝居じゃないもんっ!」


 私はステージ上のリュウヤを観た。彼とモッチーはもうネタをしていない。ただじっと私を見ているだけ。

 ───まさか…返事を待ってるつもりなの?今ここで?


 そのときリュウヤが叫んだ。

「安佳里ぃぃぃ〜〜!とりあえず、ろうそく吹き消してくれぇぇぇ〜〜!」


 Σ(ノ°▽°)ノあ!


 今度はちょっと早合点しすぎちゃったかも。。(⌒-⌒;


                (続く)


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