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62話 ノンフィクション・コント

リュウヤ「で、タイムカプセルには何が入ってたんですか?」

モッチー「フフッ…聞きたい?」

リュウヤ「いえ別に」

モッチー「そんなに聞きたいんなら仕方ないわね。教えてあげる」

リュウヤ「あのー…」

モッチー「アタシが小5のときの写真を入れてたの。もうそれはそれは凛々しい姿よ」

リュウヤ「自画自賛ですか(⌒-⌒;」

モッチー「だってまだ体重が80キロしかなかったときですもの」

リュウヤ「小5で80キロ…( ̄ ̄ ̄∇ ̄ ̄ ̄;)」


 ステージでの熱演は更に続いた。

 会場内は、大笑いこそしてないけど、クスクスと笑う声はあちこちから聞こえる。

 私は自分が笑うよりも、まわりの反応が気になっていて、どうかこのステージが成功するようにと無意識に願っていた。

 コントもすでに15分を超えるロングサイズ。

 そろそろ終盤に差し掛かって来る頃だと思われた。


リュウヤ「先生、本当にカウンセリングなんかできるんですか?」

モッチー「どういう意味?」

リュウヤ「だって、恋愛相談ってのは、自分の豊富な経験を元に良いアドバイスをしてくれるもんじゃないですか?」

モッチー「それが全てではないけど、まぁそうね」

リュウヤ「失礼ですけど、先生のルックスでは恋愛経験豊富とは思えないんですけど」

モッチー「なにを無礼な!!」

リュウヤ「だってモテそうに見えませんし」

モッチー「そこが甘いってさっきから言ってんのよ!」

リュウヤ「今初めて言われましたけど…^_^;」

モッチー「いい?恋愛経験ってのはね、なにもお付き合いすることが全てじゃないの!」

リュウヤ「はぁ…?」

モッチー「モテるだけが経験じゃないわ。アタシには撃沈経験が101回という記録があるもの」

リュウヤ「あんたは武田鉄也か?(⌒-⌒;」

モッチー「アタシにとって輝かしい自慢の記録よ」

リュウヤ「開き直ってるとしか思えませんが…」

モッチー「この経験がバネになって、アタシの今の地位があるの。わかる?」

リュウヤ「全然」

モッチー「頭悪いわね」

リュウヤ「すみませんけど、お願いですから女言葉はもうやめてもらえません?何だかマツコデ○ックスがしゃべってるみたいで」

モッチー「そう、その例え。アタシは昔からそうやって肥満の有名人に例えられてバカにされて来たのよ」

リュウヤ「僕は肥満をバカにしてるんじゃなくて、オカマのマネをやめてほしいだけなんですけどね」

モッチー「あなたはわかってない!」

リュウヤ「は?」

モッチー「この異性のキャラができるからこそ、アタシは男女両方の失恋の辛さや苦しみが充分にわかるの!モテない人の切実な思いや、消極的にならざるを得ない人の心の痛みがね」

リュウヤ「よくわかんないけど、きっとそれは一理あるんでしょうね…(-_-;)」

モッチー「そういうことね」

リュウヤ「じゃあそろそろ僕の悩みを言うことにします」

モッチー「つべこべ言わずに早く言えば良かったのに。ここまで20分経ってるから2万円よ」

リュウヤ「ガ━━ΣΣ(゜Д゜;)━━ン!!時間制ですかっ?!」

モッチー「基本1分1000円よ。リーズナブルでしょ?」

リュウヤ「ボッタクリじゃないですかっ(^□^;A」

モッチー「いいから早く言いなさい。時間はどんどん経過して行くわ」

リュウヤ「じゃ、じゃあ急いで言います。その…僕の好きな彼女なんですけど」

モッチー「それって男性?それとも女性?」

リュウヤ「それ、さっきも言いました!女性です(`ヘ´#)」

モッチー「で、その彼女に気持ちを伝えようとして、できないってこと?」

リュウヤ「いえ、伝えてはいるんですけど、僕の本心とは違った伝え方をしてしまったんです」

モッチー「このバカタレがっ!とうへんぼくっ!」

リュウヤ「( ̄□ ̄;)!!なんでいきなり怒るんですか?まだ詳しく言ってないのに」

モッチー「これが怒らずにいられるかってんだ!」

リュウヤ「先生。キャラが男に戻りましたけど」

モッチー「う…ちょっと茶化さないでよ!大事なとこなんだから!」

リュウヤ「すんませんw」

モッチー「あなたの悩みなんて全然大したことないわね」

リュウヤ「え?どういうことです?」

モッチー「あなたはただの意気地ナシで度胸ナシのクソったれよ」

リュウヤ「ボロカスですね( ̄ー ̄;」

モッチー「当たってるでしょ?」

リュウヤ「確かにその通りです。僕は意気地も度胸もないし、お通じも良いからクソったれです」

モッチー「あなたは本心を言うのが怖いだけ。仮に本心を言ったとしても、その言葉に自信が持てない。将来を思うと不安が付きまとう。そう思ってるからでしょ?」

リュウヤ「な、なんでそこまでわかるんですか?」

モッチー「女の勘よ」

リュウヤ「先生は男じゃないですか(-_-;)」

モッチー「まぁそれは冗談として、長年の経験がなせる業ってとこね」

リュウヤ「撃沈の経験しかないくせに…」

モッチー「なんですって?!」

リュウヤ「いえ、何でもないです(^□^;先生、僕はどうすればいいんでしょう?教えて下さい」

モッチー「あなたは甘えてる。ブサイクでもないのに言うべきことも言えないなんて最低よ」

リュウヤ「ブサイクでないことが甘えに関係してるんですかね?^^;」

モッチー「大ありよ。ブサイクの人間はね、何を言っても人には不快に聞こえるの。聞く耳さえ持ってくれないときもよくあるわ」

リュウヤ「僕は何も言えないタイプだしなぁ…」

モッチー「そこが甘ったれだっていうの!ブサイクはね、告白する勇気が人の100倍はいるの。決死の覚悟で告白しないと先に進まない。でも結局はフラれて傷つくのよ」

リュウヤ「それが先生の101回だったわけですね?」

モッチー「アタシのことはもういいの!つまりあなたのような“中の上”みたいな男が、本心を言えないなんて甘ったれもいいとこ」

リュウヤ「手厳しいですね; ̄_ ̄)」

モッチー「顔のいい男はくだらないこと言っても女性にはウケるでしょ。だからあなたは恵まれてるの」

リュウヤ「そうですかねぇ…」

モッチー「自分の容姿にコンプレックスがおあり?」

リュウヤ「ないです」

モッチー「ホラみなさい。あなたはそんな立場にありながら心が情けないほどくずぶってる。アタシから見ればふざけた話よ」

リュウヤ「なんだかコントじゃなくなって来たようなんですけど…(^_^;)」

モッチー「マジ話コントだもの」

リュウヤ「で、結局僕はどうしたら?」

モッチー「そんなのひとつに決まってるでしょ!あなたの本心を全ておおやけに伝えればいいのよ」

リュウヤ「公ってどういうことですか?」

モッチー「どうせあなたの性格なら、彼女とひっそり会ってコソコソと誤解を招くような言い方しかできないのがオチ」

リュウヤ「はっきり言いますね。それも当たってますけど^_^;」

モッチー「だからこの場を借りて、今ハッキリさせるのよ。それが公ってこと。わかる?」

リュウヤ「なるほど。よくわかりました。じゃあ僕…言いますっ!」

モッチー「そうよ!その意気よ!」

リュウヤ「ちょうど今日は彼女のバースデーなんです。それも兼ねて言わせてもらいます」

モッチー「つべこべ言わずにさっさと行動しなさい!」


 コントを観ていた私の胸がドクンと鳴り、それから鼓動が急に速くなった。

 リュウヤがステージ中央まで歩み出て、観客席を見回し始めたから。

 もしかして───と思ったのもつかの間。

 彼の視線はついに私をとらえた。


「安佳里いぃぃぃーっ!ハッピーバースデー!誕生日おめでとうー!」


 こちらに向かって大声で叫ぶリュウヤ。お客さんも一斉に私の方を振り向く。

 突然の出来事に度胆を抜かれた私。

 まさかまさか───いきなりこの場で名前を呼ばれるなんて。。


                  (続く)

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