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60話 名コンビデビュー

「あのね安佳里。アンタすっごーく勘違いしてるよ」

「えっ?」

「普通そう思わないでしょ?アンタ天然にもほどがあるわよ」

 なんか真っ向から私の予想を否定され、戸惑いと恥ずかしさが交錯する。

「………ごめんさゆみ。私の頭じゃそうとしか思えないの。わかんないから教えてよ」

 

 そりゃ天然要素たっぷりの私だけど、まさかこの場で指摘されるなんて考えてなかった。

 さゆみが私の表情をマジマジと感心しながら覗き込んでいる。

「しっかしよくそんな発想できたわね。アタシがレズビアンなわけないでしょ」

「だって…普通にそう思ったんだもん。ホントに違うの?」

「(ノ__)ノコケッ!これだもの(;-_-) =3 フゥ」


 なんだかバツが悪くなった。

 私だって勇気を振り絞ってこんな言いづらいこと言ったのに。

 恥ずかしいのを承知の上で言ったのに。

 私はすぐに浮かんだ疑問について問いただしてみた。納得できる説明がほしいもの。

「じゃあ聞いてさゆみ。だったらあのケーキの文字の意味は何だったの?」

 私がそう言うや否や、矢継ぎ早に出てきた彼女の言葉。

「だから見なかったことにしてってさっきから言ってるでしょ!」

 さゆみがイラッとしたようだ。語調も強いし、ちょっと怒っていそうな顔が怖い。

「だってわかんないんだもん。怒る前に教えてくれてもいいじゃない」

 私だってこのまま大人しく引き下がれない。

 さゆみがチラッとケータイで時間を確認した。

「時間ね…」

 また意味不明なことを口走るさゆみ。なぜすぐに教えてくれないんだろう?彼女はそんな秘密主義じゃないのに。

「安佳里、心配しないで。アタシが教えなくてもすぐにわかるわよ」

「???」


 その意味を理解する時間は、そう長く待たずにやって来た。

 店内に流れるお知らせアナウンス。

「皆様、本日はご来店誠にありがとうございます。お待たせ致しました。本日限定・スペシャルステージでございます」

 何のことかピンと来なくて、そっとさゆみに耳打ちする私。

「お待たせって言ったって、何が始まるのか知らないのにおかしいよね?」

 するとさゆみはキョトンとして言い放つ。

「ライブだよ。チケットに書いてたじゃない」

「私、チケット見てないもん」

「私がカウンターに出したとき見たでしょ」

「あんな一瞬で何がわかるのよっ!」

 ちょっとイラッときた私。でもさゆみはあっけらかんと、

「あぁ、そうだったっけ」と軽く受け流すだけ。

「もうっ!」


 アナウンスは更に続いた。

「これから当店の特設ステージにて、本日デビューのお笑いコンビが登場してネタを披露します」

 私は小声でさゆみに囁いていた。

「初舞台の芸人さんが会場の客にウケることなんてあり得なくない?」

「バカね。それがいいのよ。面白くなかったらお金払わなくて済むんだから」

「あー、なるほどね。そう言う意味だったんだ」

「そういうこと」

「でもさぁ、どんなコンビか知らないけど、なんだか気の毒ね」

「・・・・」


 店内スピーカーからのアナウンスがコンビを紹介する。

「それでは登場してもらいましょう。“もちドラゴン”のお二人です!」

 会場から形式的な軽い拍手に迎えられ、ステージの隅から今にもはちきれんばかりのぴっちぴちなスーツを着た超肥満の男性が現れた。

 これほどの肥満体型な人を見たのは、リュウヤのアパートでモッチーを見て以来…えっ?ええっ?

 

 私は驚きのあまり、テーブルから立ち上がってしまった。

 私たちのテーブルはステージから一番遠い位置だったから、突然立ち上がってもまわりは誰も気づいていない。

 ───モッチー本人じゃないの!

 ステージのモッチーは、予め用意されていたイスに座って演技を始めた。


「そろそろ予約の相談者が来るころだが…」

と言って間もなく、お約束のように次なる人物が登場。

「あのぉ、すみません。恋愛のカウンセリングをされている丸餅先生でしょうか?」

 突っ立って見ていた私は、更なる驚きで自分のイスにドサッと尻もちをつくように腰を下ろした。


「リュウヤだ………」


 さゆみの視線を感じた。彼女はおそらくこのことを知っていたに違いない。

 だからきっと私に微笑んでくれてるのかもしれない。

 でも今すぐには彼女の方へは振り向けなかった。

 だって…だって今の私は数ヶ月ぶりで観るリュウヤに目線が釘付けだったから。。

 

 それにしても、もちドラゴンだなんて…; ̄_ ̄) 


                    (続く)

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