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46話 こんなときのお邪魔虫

 濡れた髪や洋服も乾かぬままに帰宅した。

 結局こんな騒動もあって、リュウヤと落ち着いて話すことはできなかった。

 でも収穫はある。

 帰りはリュウヤのポンコツ車で送ってもらったし、次に会う約束もした。

 なのに車の中では私のリリアに対する幻滅と怒りをリュウヤにぶちまけてばかり。

 興奮状態がおさまらないせいもあって、なかなか本題には入れなかった。

 ちょっと大人げない自分に反省したのは帰宅してからのこと。

 またしてもタイミングを逃す私。


 (;-_-) =3 フゥ


 深いため息。

 車中とはいえ、せっかく二人きりの時間があったのに、ろくな話もしていない。

 しいて言えば、なぜリュウヤは貧乏生活してるのか聞いたこと。

 結構稼いでいたはずだから、もっと良いマンションにも住めるし、こんな軽のポンコツにも乗らなくていいはず。

 だけどそんな疑問もリュウヤの一言であっさり片付けられた。

「俺、車も家にも興味ないから。てか贅沢したいとも思わんし」

 そう言われたら身もフタもない。話しもここで終了。

 ダメな私。それ以上、話を膨らますことができない。

 かつては付き合った仲だというのに。。

 反省ばかりが先に立つ。

 家に着いた時なぜ『ちょっと寄ってかない?』くらいの一言すら言えなかったんだろう。

 所詮これも結果論。あとからそう思うだけ。


 ───次に会うときこそ…

 今度こそ、私のストレートな気持ちを言おう。

 本当は今日もそう決めてたのにリリアに邪魔された。

 でも次こそは最後のチャンスだと思って。

 言葉はシンプルでいい。今までのことを素直に謝って、そして好きという気持ちを伝えよう。

 それで付き合うかどうかはリュウヤの判断。

 私は彼を傷つけた。だから私が判断することじゃない。


 約束はあさっての夕方。

 私の人生において、ひとつのターニングポイントになるかもしれない日。

 待ち合わせ場所はリュウヤの指定で、街の真ん中にあるオアシス広場。

 そばには大河が流れていて、向こう岸に見える都会のコンクリートジャングル群が、夜になると川の地平線に沿って横一線、きらびやかな夜景に変わる。

 まさに夜は灯りが宝石の輝きにも見えるほどのパノラマ状態。カップルたちの定番。

 私も実は2年くらい前に、一度セフレと来たことがある。

 その時の第1印象は、まるで“銀河鉄道999”に乗って、空から観た機械都市の灯りを眺めているように思えた。

 でもセフレにしてみれば、当時は夜景をロマンティックに眺めるというのではなく、野外エッチに萌える場所として単に選んだだけだった。

 

 近くにはオフィス街や芸能プロダクションが多く点在し、リュウヤの事務所もそこから近い。

 彼はは自分勝手に引退宣言はしたけれど、事務所との契約期間はまだ終えていないし、仕事のスケジュールも残っていると聞いた。

 おそらくあさっても、事務所から早く到着できるようにと選んだ場所なのかもしれない。


 ───ピンポーン


 玄関からチャイムの音。

 そう言えば母は留守。リビングに婦人会の打ち合わせで帰りが遅いとの書置きがあった。

 打ちあわせだの会議だのときれいごとの言葉を並べたところで、実質的にはただの飲み会&カラオケ。

 どっちにしろ、私が玄関に出なきゃなんない。

 シャワーも入ったし、もうだるいから居留守使おうかな。。


 ───ピンポンピンポンピンポン!


 なんだろう?このしつこさ。子供?何か緊急の用件?それとも回覧板?

 仕方がないから、様子だけでも見ようと足音を立てずに玄関まで行った私。

 そして覗き穴からそっと外を伺った瞬間、私は息を呑んで思わず後ずさりした。

『なんで?なんでここにいるの?』

と、私の心の声。それが何度も自分にこだまする。

 だって…だってそこには私が子供のころから大キライな人物が立っていたんだもの。。

 しかも母も父もいないときに現れるなんて最悪も最悪!

 困った。本当に困った。どうしよう。。

 困惑する私。でも、追い返すわけにはいかない人物。居留守も使えない人物。

 例えその人が私のトラウマを作った張本人だったとしても…


 ───ギンゾー。。。何で今なのよ。。

                         (続く)

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