36話 確かめなきゃ
ケータイでのやり取りが続いていた。
「ちょっとそれってどういうこと?じゃあなんでリュウヤはあんなこと言ったの?」
私はボタモッチーという謎の芸人に問いかける。
「僕もこいつの真意がわからんのです。ジョークのつもりで言ったとしか…」
「ええっ?そんなことジョークで言うことじゃないでしょう?」
この一瞬で、この芸人はバカじゃないの!と思った私。
あの場面をジョークと受け取るなんて、頭がマヒしてる!
まぁそんなノータリン芸人だから売れてないのかもしれないけど。
「す、すいません。僕の言い方が間違ってました。ジョークじゃないですよね(⌒-⌒;」
と、私のテレパシーが通じたのか知らないけど、すぐに訂正したボタモッチー。
でも彼の声は明らかに動揺しているよう。
カチンと来ていた私は、そんな彼に強い言い方をしてしまう。
「あなたも芸人さんなら、今後のためにも軽はずみなことは言わない方がいいと思いますよ」
「はい…気を付けます」
ケータイの向こう側でも恐縮しているのがわかる。
少し脱線したので私はすぐに話を元に戻した。
「リュウヤは誰にも相談せずにあんなこと言ったの?」
「ええ、たぶん。マネージャーにも相談してなかったようで…それに。。」
「ん?それに?」
「ええ。それに司会者の誘導尋問もウマかったから、予定外のこともしゃべってしまったって言ってましたよ」
「ちょっと何でそれをもっと早く言わないのよ!!」
「すんません。忘れてました^^;」
やっぱりこの売れない芸人はノータリンだ。
「ねぇ、あなたとリュウヤは今どこにいるの?」
「今はこいつのアパートなんです。酔い潰れてるから叩いても起きる気配がありません(-_-;)」
「リュウヤに事情を聞いてみたい気もするけど…」
「是非そうしてもらえないですか?」
「うーん。。。」
「あんなこと言っちゃあバッシングが自分に集中するに決まってます。ちょっと考えればわかりそうなもんなのに…」
私は心の中で『お前もな!』と反復していた。
今思うに、もうひとつハッキリしないことがある。
それはリュウヤが酔い潰れている理由。
世間のバッシングに怯えてのことなのか?それともリリアと別れが原因なのか?
そのことをこの冴えない芸人に聞いてみると、これまた不思議な答えが返って来た。
「いえいえ、そういうわけでもないんです。こいつは後悔はしてないって言ってましたから」
「ええっ?後悔してない?」
「はい。逆に『これで良かったんだ』ってブツブツ繰り返し言いながら飲んだくれてましたもん」
益々謎を呼ぶリュウヤの言動。
推理ドラマではないけれど、まさにそんな感じ。
でも、私は深く推理しないことにした。前と同じことになるから。
こんなことで推理を楽しんでるように思われたくないし、今は本当にリュウヤが心配だから。
なら私はどうしたらいいのか?
答えはすぐに出た。行動あるのみ!
行こう!リュウヤの元へ。今すぐに!とにかく確かめなきゃ。
「ボタモッチーさん、そこのアパートの場所教えて」
(続く)