表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/77

30話 さゆみの本音トーク

「ダメダメ。芸人なんて食いっぱぐれるって」

 

 ケータイでいきなりさゆみに言われた一言がこれ。

 そして続けざまに、

「ウチの親戚にも芸人の養成学校を卒業したのがいるけど、今だに日の目も見ないしバイトで食いつないでるんだよ。どうせ先がないのにバカな奴でさ」


「ちょっと待ってよ。何か勘違いしてるよさゆみは」

「何言ってんのさ。安佳里はテレビ観ないからわかんないんだよ」

 さゆみは男兄弟4人の中の妹として育ったせいか、性格はサバサバしていて、言葉遣いもビミョーに荒い。

「それどういうこと?私がテレビ観ないことなんて関係ないじゃない」

 理解不能な私はさゆみに説明を求める。

「あんね、チビリおぱんつみたいな1発ギャグ屋なんてさ、1年後にゃあもう芸能界がら消えてるもんなんだってば。だからよしな」


 この“よしな”という言葉で私は気がついた。

 まさかさゆみまでもがウチの母と同じ考えだなんて…


「ねぇさゆみ、ひょっとして私がチビリおぱんつのことを好きじゃないかって思ってる?」

と、ここはストレートに確認してみる。

「え?違った?」

「(ノ__)ノバタッ!やっぱし…」


 なぜなんだろう?どうしてそう思うんだろう?

「言っときますけどね、私、全然そんな気ないから」

と言ったところで、さゆみには言い訳にしか聞こえていない。

「えぇ〜?だったらなんでウジウジ気にしてるのさ?」

「だって…そりゃそうでしょ。深く人を傷つけてしまったんだもん」

「フフフ( ̄ー ̄)そんなの安佳里らしくないよ」

と、なぜか不的な笑いのさゆみ。

「あのさ、そんな人を極悪非道みたいに言わないでよ」

 ちょっと憤慨した私。

「じゃあ言うけど、安佳里が今までポイしてきた男たちに対してはどうなの?私の知ってる限りでは、あんたは男に謝ったことなんてなかったし、後悔したことだって一度もなかったじゃない」

「まぁ、そりゃ…」

「それに今までに別れた男たちの記憶だって、どうせほとんど残ってないんでしょ?」

「ギクッ!Σ(・ω・;|||」

 さすがさゆみ。痛いとこをつく。確かにその通りかもしれない。

 今この部分だけを人に聞かれたら、私ってどんだけアバズレなんだって思われそう(-_-;)

「だってあれはみんなセフレだもん。彼氏じゃないもん」

 私にはやはり言い訳にしかならない言葉しか返せない。

「ほら、自分で認めた。チビリおぱんつが彼氏だったってこと認めたじゃん」

「それはずっとずっと昔の話。高校時代のことよ」

「なのに安佳里は執拗に気にしてる。彼への思いが残ってないなら、反省なんてするはずないし、とっくに忘れてるはずだよ」

「もうっ!あー言えばこー言うんだから!さゆみは」

 彼女にこんな解釈めいたことを言われると、自分の真実の気持ちが余計に混乱して来たような気がする。

「安佳里、もう少し冷静になって考えてみたら?」

「私は冷静だよ」

「違う。なぜチビリおぱんつのことを忘れられないのかってことをじっくり考えてみな。何か結論が出たらまた相談にのるよ」

「Σ( ̄□ ̄;ええーっ!そんなのわかんないよー!」

 もうこれ以上考え続けるのもしんどいのにさゆみったら…

「決めた!忘れるわよ。私、もう考えない。きれいさっぱりに忘れることにする!きっと自然に忘れるよ。今までだってそうだったんだから」

 開き直った私がさゆみにこう告げると、彼女からはすぐに返事が来なかった。

 そして数秒間の沈黙後、さゆみがまたまた意味ありげな言葉を私に投げかけた。


「最後にあと一つだけ言っとくよ。もし、それでも彼のこと心に引っ掛かるなら、安佳里は自分で気づいてないだけで、やっぱり彼のことが好きだってことだから、それはちゃんと認めなさい」

「それって強引すぎない?」

「黙って聞きな。すぐ終わるから」

「…うん」

「そして安佳里なりのアピールをすべき。絶対安佳里の方からしなきゃダメ!」

「アピールって何よ?私もあなたのことが好きだったって言えって?」

「そう。軽蔑されちゃったんだから、失恋覚悟で攻めなきゃダメ。その姿勢を見せなきゃ相手に伝わんないよ」

「おかしいよさゆみ。さっきは芸人なんて食いっぱぐれるからやめろって言ってたくせに」

「だ・か・ら!それだけ安佳里の思いが強かったらの話。言わなきゃ悔いが残るでしょ?」

「その場合はね」

「そんで忘れることができたら『ハイそれまでよ』ってな具合で別にいいじゃない。アタシの言いたいのはここまでよ」




 通話が終わって私は大きなため息をついた。なんかどっと疲れちゃった。。

 親友と話して疲れが出ちゃうなんて、やっぱり私たちは本当の親友とは言えないのかな?

 でもさゆみがあんなに真剣だったのも初めてだったな。。


 私がリュウヤを好きなことに気づいていない?

 そんな訳わかんないことあるはずないじゃない。

 連ドラやケータイ小説の世界ならいざ知らす。

 それに、おそまつながら私、思春期なんてとっくに通り越してるわけだし。


 ───もう関係ないからさっさと忘れよう。

 ───もし失恋覚悟で攻めるとしたら、どう話そう?

 ───ダメダメ!私はリュウヤに軽蔑されたんだからもうTHE ENDよ

 ───でも彼に対してお詫びが足りてないとしたら?私はどうアピールすればいいの?

 ───やっぱりダメ。私から関わるのは、相手にとっても迷惑なだけ。

 ───もうっ!本当の私の気持ちって何なの?私はリュウヤが好きなの?キライなの?


 こんなことを考えている私は、リュウヤのことを忘れるどころか、3か月…半年が経っても解決することもなく、悩み続けるハメになってしまった。



 私って、何も決断できない人間だった。ホントバカみたい。

 私に一体何ができるんだろう? 何もできないじゃない。

 歴史に名が残ることなんてしなくていい。そんな器じゃない。

 なのに、ごく普通のことができないなんて情けない。

 自分を表現することができないもどかしさ。

 人に気持ちをぶつける前に、自分の気持ちが定まらない。


 私はこれら全てを自分の歪んだ性格とトラウマのせいにした。

 たぶんこの自己分析は当たってる。

 でも…

 でも、打開策は何もない。



 更にその1か月後、私は仕事帰り立ち寄った本屋で、驚く記事を目にした。


“チビリおぱんつと、モデルでタレントの横瀬リリアが深夜のお泊りデート”


Σ|ll( ̄▽ ̄;)||l

 私の体に電流が走った。

                (続く)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ