29話 自分てどんなヤツ?
ビックリしたのは図星だったからじゃない。
今まで私に無関心だった母が、人の心を見通すような言い方をしたから。
───そんなはずないじゃない。
私は冷静にリュウヤを見てたんだもの。
6年ぶりに会っても、ときめきなんて全然なかった…
「お母さん、勝手な推測はやめてよね。リュウヤと私は別に何でもない。好きとか嫌いの関係じゃないの」
こう言っても母は信じようしない。
「安佳里、そんなに強がらなくても…」
「全然違うもん。それはお母さんの見当違い!リュウヤを好きなのはお母さんでしょ!」
「(〃⌒∇⌒)ゞえへへっ♪そうよ。悪い?」
「(ノ__)ノコケッ!」
ミーハーな母。どうせ1年後にはまた他の芸人とか、イケメン俳優に乗り換えるに決まってる。
「それでどうなの?安佳里は彼にちゃんとお詫びしたの?」
依然穏やかな口調で話す母。
「謝ったよ…ちゃんと謝ったけど……なんか思いっきり軽蔑されちゃったみたいだし」
「あらぁ…やっぱりねぇ」
「やっぱりって…^^;」
「そりゃそうよ。普通ならむかつくものよ」
「お母さんもそう思うんだ…」
「男の人にしてみれば、上から目線で自分の気持ちを弄ばれたって思うんじゃない?」
「そっか…そうだよね…」
意気消沈な私。胸にチクリと刺さる。
母でさえ、私の話を聞いただけで相手の気持ちを察していた。
私ってどんだけ鈍感なんだろ。ていうか、人間的にどうなんだろ?
男は愚か、同姓からも嫌な女だって思われて来たんじゃないだろうか?
「もっと時間をかけていいから自分の心を整理しなさい」
母は私の肩にそっとタッチして、部屋を出て行った。
小一時間ほど、考え込んでいた私。
けど余計に混乱するばかり。
だって、頭の整理なんて必要だと思ってなかったんだもの。
それは単に、リュウヤに対しての失言を悔やんでただけだったから。
なのに母から『本当は今でも彼が好きなんじゃないの?』なんて言われると、自分の気持ちすらわからなくなる。
私はたまらなくなって、親友のさゆみに電話をかけようとした。
でもその直前、ふとケータイへ手を伸ばす私の手が止まる。
───さゆみは私のことを親友だと思ってるんだろうか…?
こんな思いが頭をよぎったから。
一方通行の親友。私が勝手にさゆみを親友だと思ってるだけ。
考えてみれば、今まで私は彼女にさえ相談ごとなんてしたことない。
お互いの日常の不満をグチる愚痴友としては楽しく言い合える仲だけれど、所詮それまで。
親身になって聞いてもらえるとも限らないし、さゆみに真剣な話をするのってなんか恥ずかしい気もする。
私は更に5分くらい考えてから意を決した。
やっぱり話してみよう。
いつもテキパキしてるさゆみなら、きっと言葉を濁さずはっきり言ってくれるはず。
それに、私のことを本当の親友だと思ってくれてるのかどうかわかるかもしれない。
私はケータイの着信履歴から彼女に電話をかけようとした。
何気に見た履歴画面。よくみると着信は全てさゆみ。
少しだけ画面をスクロールしても、出てくる名前はさゆみばかり。
長年セフレとばかり付き合って来たから、女友達との交流はなくなっていた。
───寂しい女だわ私って。。。
こんなことを思いながら私はケータイ画面を見つめていた。
(続く)