表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/77

25話 頭の整理

 私にしては珍しく、数日間考え込んでいた。

 もちろん家にこもりっきりとかじゃなくて、仕事にはちゃんと行ったけど。

 家にいても職場にいても、どうしても心に引っ掛かっていることが拭えない。

 それはリュウヤの好きな彼女は一体誰かということ。

 でも全く見当もつかない。

 高校時代、リュウヤが私の次に付き合った子の存在なんて、知りもしなかった。

 この事実のおかげで、全ての説明がつかない。


 この1週間、私は高校時代の卒業アルバムまで引っ張り出した。

 そして一人一人の写真をチェックしてみたけれど、リュウヤと噂のあった子なんて誰もいない。

 だいいち、リュウヤのような変わり者に近づく子なんて、私くらいのようなもの。

 だから余計に私の頭の中は整理がつかなくなっていた。


 “彼女に観てもらいために作ったネタ”


 これはリュウヤがトークバラエティで言っていたこと。

 なぜ?単に彼女に笑ってもらいたかっらから?

 発案の秘密って、このことと関係があるの?いや、きっとある!

 今までずっと考えて来て、そういう結論に達した私。

 私はリュウヤの持ちネタである一発ギャグを、もう一度母に確認してみた。


「なんなの安佳里?あんたもギャグしたいの?」

「そんなのやるわけないでしょ!ただの確認だってばっ!」

「なんで確認するのよ?」

「ちょっとね。いいから教えてよ!」

「あーはいはい。えっとね、やっぱり代表的なのは“フィッチュ”ね」

「うんうん。まだあったよね?」

「あとは“おでこスリスリ”“鼻スリスリ”が有名よ。もらったDVD観ればいいじゃない」

「めんどくさいもん。それほど面白くもないし」

「あんたねぇ…(`ヘ´#)」


 つい母に向かってまずい言動をしてしまった私。ちょっとだけ反省。

 母の言う通り、ここはDVDを見直して検証してみる必要があるかもしれない。


 再生デッキはリビングにある。うちにはノートパソコンがないから自分の部屋で観れないのが難点。

 思った通り、私がDVDを再生すると、母もそばにやって来て一緒に観賞することになった。

「お母さん、よく飽きないよね」

「あんたが好きな歌を何べんも歌ってるのと同じよ」

 ちょっと意味が違うと思うけど、とりあえずそれは無視した。



 案の定、母のウケは相変わらずすごいものだったけど、私は冷静に観終えることができた。

 笑うより何かヒントを得るために。

 そしてその大きなヒントが、まさか母から与えられるとは思いもしなかった。


「今年の流行大賞は間違いなく彼よ」

「たぶんね」

と気のない相槌の私。

 母は構わず持論を展開する。なんせチビリおぱんつを語れば熱くなれる人だから。


「彼のギャグはね、人とのコミュニケーションになってるからいいのよ」

「まぁ確かにね」

「だからおでこスリスリなんて、年寄りでもマネしてるし」

「へー、知らなかった…」

「フィッチュだって幼稚園児もやってるのよ。可愛らしいじゃない」

「幼稚園児はオマセだもんね」

「キスって感覚じゃないのよ。もっと軽いスキンシップね」

「ふうん…」

「若者の間でもね、今やディープなキスは嫌われるんだってよ。リポーターが取材してたもの」


 まさか母の口から“ディープなキス”なんて言葉が飛び出すとは…(^_^;)

「お母さん、それ娘に言うこと?(⌒-⌒;」

「もうあんたもいい大人なんだから平気でしょ」

 母は最近私と友達感覚だ。まぁそれはそれでいいんだけど、私の相談相手にはなれない。


 部屋に戻った私は、またベッドに仰向けになり、リュウヤのギャグを再度振り返ってみた。

 母の言葉からも、明らかになっているチビリおぱんつの社会現象。

 ひとつひとつのオチがキュートで可愛い。覆面の変態ぽさがなけれなもっといいのに。


「ディープなキスは嫌われる時代…か。私にとっては嬉しいことだけど…」


 ────────ハッ!?(゜〇゜;)


 私はベッドから飛び起きた。

 そう、突然気づいたのである。

 ひらめくというか、なんというか、こんなことは学生時代のテスト中にもなかったこと。


 ────そっかぁ…そうだったんだ。


 私は一番重要な部分を思い違いしていたことに気づいたのだ。

 ホント、バカな私。もっと早くわかっても良さそうなのに。。


 その後、いろいろ考えさせられた私は、夜になるまで迷ったあげく、リュウヤにメールした。


「リュウヤ、時間の都合教えて。会って話したい」

                    (続く)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ