21話 いきなりやって来た
「もしもし俺だけど」
朝っぱらから私のケータイにかけて来たのはリュウヤ。もちろん予想外のこと。
「なに?どうしたの?アタシまだ寝起きなんだけど」
「じゃあ、家にいるんだね」
「…まぁ今日は仕事も休みだし、今んとこは…」
「じゃそっち行くわ」
「( ̄▽ ̄;)えっ??」
“ガチャ”
唐突な電話がまた唐突に切られた。
「なんでなんで?…来ていいって言ってないのに…」
唖然として固まった私。
来るって直接ウチに来るつもり……のはずよね?
いまいち頭の整理がつかないまま、とりあえず少し部屋を片付けなきゃと思っていると、玄関にチャイムの音。
「Σ( ̄□ ̄;ええっ?まさか!」
一瞬ドキッとしたけど、冷静になろうと気を静めた私。
『リュウヤがこんなに早く来るはずないよね。。今電話切れたばっかだし…』
そう思いつつもなぜか不安で、母より早く玄関に出てみた私。
でもそのまさかが現実になった。
「よぉ。こないだぶり」
「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lウソぉぉぉ!!」
それは紛れもなく、パンツの覆面をしていないリュウヤだった。
「そんなに驚かなくたって。今電話したじゃん」
至って淡々としゃべるリュウヤ。
「今だから驚いてるんでしょ!どこからかけてたのよ?」
「ここの門の前」
「(ノ__)ノコケッ!」
「ごめん。俺あと1時間しか余裕がないんだ」
「仕事?テレビの?」
「うん。“爆笑hey!カモン”の収録なんだ。観たことある?」
「あー、その番組ならお母さんが毎週録画してる」
「そうなんだ。じゃあお母さんに挨拶でも…」
「そんなのいいからとりあえず先に私の部屋に行って」
「え?安佳里の部屋に?いいの?」
焦ってリュウヤを自分の部屋に追いやる私。
これには一応理由がある。
母は起きがけにリビングでテレビを観ながら着替える習慣がある。
父は夜勤でいないし、特にこの日曜は私と同様、今起きたばかり。
私が玄関に来る前に、開いていたリビングのドアを一瞬チラ見すると、まさにその光景だったから。
そんなわけで、高校以来約6年ぶりにリュウヤは私の部屋に入ったことになる。
「ちょっと待ってて。なんか飲み物持って来る」
「いいよ別に。俺が急に来たんだから」
『一応、気にはしてるのね…(^_^;)』
私がリビングに行くと、母がスクワットをしながら話しかけてきた。
「あの子誰?彼氏?」
「違うよ。お母さん見たの?」
「あんたたちが扉を通り過ぎるときに一瞬目が合っちゃったわよ」
「へぇ」
「なんか冴えない子ね。パッとしない子っていうか…」
「お母さん、それ同じ意味^^;」
「あんたの部屋に入れて危険じゃないでしょうね?素性はわかってるの?」
「いくら私でも素性の知らない人を部屋に入れないよ」
「ならいいけど。外は明るいんだからエッチなんかしちゃダメよ!」
「お母さん、よく娘にそんなこと言えるよね(-_-;)」
「心配だもの」
「てか、外が明るくなかったらいいの?(⌒-⌒;」
「親の上げ足とらないの!」
母は自分の発言がヤバいと感じたときは、いつもこう言って切り抜ける。
私も母と口論するつもりもないから、それはそれで平気。
「お母さん、なんかお菓子ある?」
「そこにチョコパイ買って来てあるから持って行きなさい」
「ん〜、朝からちょっとヘビーのような…」
「ならプチチョコパイもあるわよ。小さいからいいでしょ?」
「まぁいいけど…^^;」
私はお盆にコーヒーとチョコパイを載せてリビングを出ようとすると、母が新聞の番組欄を見ていつもの独り言。
「あ、今日はお昼の番組に“チビリおぱんつ”がゲスト出演するわ」
と、ウキウキモードの母。私にイタズラ心が芽生える。てか本当の事なんだけど。
「お母さん、今部屋にいるゲストも“チビリおぱんつ”だよ」
「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lなんですってぇぇぇぇ〜!!?」
「そういうことだから。あとでここに呼ぶ?」
スクワットが止まった母は放心状態っぽかった。
どれほど大ファンなんだ全く…
「じゃあね」
再び私が出て行こうとすると母に呼びとめられた。
「そのお菓子とコーヒー、お母さんが持って行ってあげる」
「えっ?」
「早くよこしなさい」
と、強引にお盆を奪い取られた私。そして母がまた一言。
「朝からチョコパイなんて、少し重たくないかしら…?」
「あのね…( ̄ー ̄;」
(続く)