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16話 突然のお誘い

 家でも毎日酔い潰れるようになった私。

 今では部屋にお酒のストックは切らせない。

 意外と私はお酒に強く、二日酔いもしなければ吐きもしない。

 吐くのは男に無理やりキスされたときだけ。

 セフレとは適当な理由でキスはしないで済んだ。

 歯の治療中だとか、口内炎ができているだとか言っておけば何も問題はない。

 所詮セフレ。相手は合体さえできればそれでいいのだ。


 愛なんてどうでもいいと思っていた。

 愛は裏切り。偽り。偽善。口実。不信感。

 ただそれでしかなかった。


 でもセフレとの関係も全て断ち切り、仕事以外の日々がほとんどひきこもり状態になると、例えようもない孤独感に襲われるようになった。

 それもそのはずだと自分でも思う。

 今まで私は男が半年以上いなかった時期などなかったから。


 その孤独感の中で、私が求めたもの。それは相思相愛の新しい恋愛の形。

 私は人に影響されやすい。結婚してゆく幸せな友達を見ると、どうでもいいと思っていた愛がいとおしくてたまらなくなる。

 今の私の心には、冷たいすきま風が通り過ぎているだけ。

 今まではそれでも平気だった。

 でももう無理。心の拠り所が欲しい。愛に包まれる暖かさが欲しい。

 都合のいい話なのはわかってる。だから人には言えない。

 

 そう今更思ってみても、世の中そんなにうまくはいかない。

 こんなに長い間、彼氏ひとりできないのは、今まで好き勝手なことをしてきた罰。

 本当の愛情を手に入れたくなったときに限って男に縁がなくなっている。


 私は妄想族になった。

 願いが実現しないと、自分の中で想像した理想だけが空回りする。


 映画のワンシーンのようなロマンティックなキス…

 キスもできない私がこんなことに憧れるなんて不思議。

 だからそんな憧れと同時に、自分へのもどかしさもたまらなく感じていた。



 そんなある日の休日、自宅にいた私に想像外な場所から突然の電話が入る。

「あのー、こちら日本人テレビなんですけど」

「はぁ?テレビ局…ですか?」

「ええそうです。突然ですみません」

「はぁ…」

「実はですね、うちのバラエティ番組に出演していただきたいんですよ」

 私にはまるで狐にはつままれたような話し。何かの詐欺?

「…よく意味がわかりませんが?私、タレントでも有名人でもないですよ?」

「あ、すみません。説明が前後してしまいまして…」


 なんだか怪しげでもあったけど、別に振り込めとか言われたわけでもなかったし、その後詳しい説明を聞けば事情がやっとつかめてきた。

 つまりこういうこと。

 対面番組に出演するゲストタレントに、その人の初恋の人と対面させるという企画。

 それが私ってわけ。事情は理解できたけど、それでもやっぱり驚いた。

 私の知ってる限り、知り合いや友達に芸能人なんていないはず。

 まぁ私はテレビを観ない主義だったから、そっちの方面にはうといのだけれど。

 けれど、そのタレントの名前だけは知っていたから益々驚いてしまった私。

 芸能界で活躍する彼は本名ではなく、あくまで芸名。

 テレビ局の人から彼の本名を聞いて、みたび仰天した私。もう心臓に悪い。


 彼の本名はリュウヤ。。

 そう、私の4人目の彼氏だった人。

 

 そんなわけで、とりあえず返事は明日まで保留にした。

 全国ネットのテレビにいきなり出演するんだもの。戸惑いだってあるし、着て行く服があるかどうかわからない。

 それに少し彼について確かめたいこともある。

 リュウヤはテレビで一体どんなことをして人気が出ているのか?

 その詳しい事情を知る人間は、意外にもごく近しい身内にいた。


「お母さんお母さん、ちょっと教えて」

「ん?なによ?めすらしいわね」

 私は部屋で洗濯物をたたんでいる母に尋ねた。

「あのさぁ……“チビリおぱんつ”って芸人、そんなに面白い?」

                   (続く)

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