13話 5人目・キミヒコの巻(後編)
ロストバージンした夜、私はそのまま朝までキミヒコの腕まくらで寝ていた。
後で後悔するようなマネはするなと言ってくれたキミヒコ。
無駄にバージンを捨てるなと忠告してくれた彼本人が、結果的には私を抱いた。
でも私は別に後悔などしていなかった。その時点では。
当時エッチに誘ったのはたぶん私から。
彼と体を重ねる30分前までは、彼自身でさえ私を抱く気などなかったはず。
なのになぜ私がそんなことをしたのか?
それは私の前彼・リュウヤとの別れで学習したから。
リュウヤだって私を抱きたかったはずなのに、それを口に出さずにこらえていた。
思春期の男子なら、絶対自分の好きな女の子とヤリタイはず。それしか頭にない男子だって大勢いる。
事実、あのとき部屋にいたリュウヤの股間は、恥ずかしい状態になっていた。
そして彼はそれを私にバレないようにとトイレへ駆け込んだ。
いつまでもそんな思いをさせてはいけないと別れを選択した私。
そして当分彼氏を作らないと心で誓ったはずだった。
でもそこに突然のキミヒコの出現。
彼もリュウヤと同じことを言う。
「キスが苦手ならそれでいい。お前の嫌がることはしない」
私もそこで言い返した。
「それでホントにいいの?我慢してるんだったら私も辛いし、付き合えないよ」
「いいんだ別に。安佳里がその気になったときで」
私は悩んでしまった。キスする気になることなんて、100年経ってもあり得ない。
結局、リュウヤと同じことになる。
それでも私はキミヒコを振ることもできず、数回のデートを重ねたある日、ついに私は彼の部屋にお邪魔することになる。
二人だけの密室。キスを避けるなら、普通そんな場所へはついていかないもの。
でもこの時の私には、ある秘めた決意があった。
「ねぇ、ホントは私と…キスしたいと思ってるんでしょ?」
意外にもキミヒコは否定しなかった。
「思ってるさ。でも前にも言ったろ。安佳里のイヤなことはしたくないって」
「うん…でもキミヒコは本当にそれでいいの?このままこの状態がずっと続いても?」
「……いいよ別に」
この若干の間が、彼の本心ではないことを物語っていたと思う。
「俺はお前が好きだからさ。お前を大事にしたいんだ…」
その言葉は嬉しいけど、逆に私自身、後ろめたい気持ちにもなる。
やはり、私の秘めた決意をここで言わなきゃ…
「ねぇ…」
「ん?なんだよ?」
「私と…エッチしていいよ(*v.v)」
「( ̄□ ̄;)えっ?」
当然のように驚くキミヒコ。
「む…無理すんなよ。お前、イヤなんだろ?そういうの」
キミヒコは勘違いをしてるようだった。それも当然かもしれない。
「違うよ。私、キスができないからそれ以上先に進めないだけ。キスさえしなければその…私を抱いても……いいよ(*v.v)」
「!?工エエェ(゜〇゜ ;)ェエエ工!?そういうことだったのか?」
「…ヘンでしょ?私」
「あぁ。否定はしない(^_^;)でも本当にいいのか?」
「…うん。。キミヒコならいい。優しくしてね。初めてなんだから」
「お、おう…」
こうして私は処女から卒業した。
かなりな痛みもあったけど、同時に幸せを感じた夜でもあった。
でも…それもつかの間のこと。
またしても私の行く手を阻んだのは破局という二文字。
このあとの7年間、つまり現在まで、私は荒れまくることになる。
(続く)