11話 5人目・キミヒコの巻(前編)
私のロストバージンは17歳の夏。
先輩や友達に聞いても、あるいは雑誌やコミックを読んでも、この時期がベストだと当時の私は思っていた。
なので、17歳になったばかりの頃の未経験な私はとにかく焦っていた。
今思えばロストバージンなんて、早いも遅いも関係ないのに、当時の友達はこの夏休みに次から次へと脱皮してゆくのだ。
「えっ?安佳里まだバージン?ごめんねー私の方が先で(*'‐'*)ウフフフ♪」
と、妙に自信に満ちた不敵な笑みを浮かべられる。
しかもそんな言われ方をされると、早くバージンを捨てないとイケナイような気もしてくる。
私はキス恐怖症だし、余計に焦り始めていた。
───もしかしたら私、一生結婚できないかもしれない。。
そんな私の心の動揺を見抜いた男子が一人いた。
それがキミヒコ。クラスは違うけど同じ学校の同級生。
小学校時代に、2年間だけ同じクラスになったことがあるから、顔は覚えていた。
下校中、私が女友達とサヨナラを言って別れると、すぐに彼は近づいてきた。
「よっ!お前、俺のこと覚えてるか?」
と、いきなりこんな切り口から会話が始まり、私は立ち止った。
「うん…たぶん知ってる」
「たぶんかよ^_^;」
「印象薄いってゆうか…あんまし私としゃべってないよね?」
キミヒコは体裁悪そうに頭をポリポリ掻いた。
「だな。昔は俺、女嫌いだったから、ほとんどの女子と口利かなかったんだ」
なぜ女嫌いなのか理由を聞く興味もなかったから、私は別な質問をしてみる。
「じゃあ今は女好きなの?」
その答えは即答で返ってきた。
「あぁ。なんでか知らないけど、どんな女も可愛く見えるんだ。例えお前でも」
「なにそれ(`ヘ´#)」
「ワリぃ。悪気はないんだ。まぁ、これが思春期ってやつなのかもな」
「自分で勝手な結論言わないの(-_-;)」
一体何を考えているのか、つかみどころのないキミヒコ。
そんな彼が次に切り出した言葉は、いきなり思わしげなセリフ。
「歩きながら話そう。実はちょっとお前と話したかったんだ」
「えっ?」
私はドキッとした。もしかしてそれって、私への告白?
そんなかすかな予想をたてながら、私達は並んで歩き出す。
「ぶっちゃけ言うけどさぁ、お前さぁ…」
はて?告白にしては『お前さぁ』とは思いきり不自然。
私は無反応でキミヒコの次の言葉を待つことにした。
「お前さぁ…そんなに焦んなよ。後で後悔するようなことは絶対すんなよ」
一瞬ビクッとしたけど、なんとか気づかれないように冷静を装う私。
「何のこと言ってるの?あんたに私の何がわかるの?」
「お前、まだバージンなんだろ。早まって無駄なことするなってことさ」
「どうして私がバージンて決めつけるのよ?」
「だって何日か前、直美が言ってたし」
「Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lえっ?」
直美とは、下校途中でさっき別れた友達のこと。
彼女はキミヒコと同じクラスだから、適度な会話はしてるのだろう。
それにしても直美ったら、何で私のことを…(≧ヘ≦)ムッスー!
「お前さ、今まで全然彼氏いなかったのか?」
「いたけどみんな別れた」
「みんなって…同時に何人とも付き合ってたのか?」
「バカ!時期はそれぞれズレてんの!」
「うーーーん。。」
なぜかキミヒコが考え込んだ。ホントにわからない男。
「じゃあ聞くけどよ。付き合ってた男たちとは全然何もナシか?」
「そんなのないよ」
「一人も?」
「うん」
「そんなんで付き合ってたって言えるのか?」
「なんでよ?エッチしなきゃ付き合ったって言えないの?」
「そこまでは言ってねぇよ。じゃあキスもしてないのか?」
「キスは……したけど」
バカな私。なんでキミヒコにこんなこと言ってんだろ。。
「キスは許せても、エッチは許さなかったってことか?」
しつこく質問攻めをするキミヒコ。お前はエロ雑誌の取材記者か!
「もうどうでもいいじゃない!私にとっては許す許さないの問題じゃなかったの!」
「…は?どういうことなんだよ?」
いけない…また説明を求められる言い方をしてしまった(⌒-⌒;
「あのね、別に私は誰からもエッチは求められてなかったの!そんな野獣みたいな人、自分の彼氏には絶対選ばないもん私!」
「じゃあ何でみんな別れちまうんだよ?」
「それは…」
「それは?」
「もうこれ以上言いたくない!」
私は早歩きでキミヒコより5,6歩先に出た。
そのスピードのまま50メートルほど歩くと、後ろからキミヒコが駆け寄って来る。
「わかった。もう何も言わなくていい。俺が言う」
「えっ?」
歩くスピードをゆるめて、私は横に並んだキミヒコに振り向く。
「安佳里。俺と付き合おう」
「!!!」
(続く)