10話 私のトラウマ〜少女期〜
それは私が8歳の誕生日を迎えた冬の朝。
いつものように、誘いに来た友達4人と登校途中での出来事だった。
溶けない雪が残っている舗道の脇。
その雪とアスファルトの境目に思わず発見してしまったもの。
───それはデカうんこ。。
ヘ(≧▽≦ヘ) キャアアアアア〜!!
動物の仕業か、あるいは人間なのか、子供ながらに議論する私たち。
だが所詮結論など出せないまま、私たちはただキャーキャー騒ぎながら、うんこをチラ見しつつ通り過ぎる。
「まだホカホカだよ?」
「ヤダぁそんなこと言わないでよーふみちゃん」
とまぁ、そこまではまだ良かった。問題はこのあと。
一匹の白い子犬が、可愛い声でワンワンと吠えながら、しっぽフリフリこちらに向かってやって来た。
首輪をしていない。たぶん人慣れした野良犬なのだろう。
私の友達の一人が「こっちおいで」としゃがんで両手を差し出す。
なのに子犬は途中でコースを変更したのである。
────え?
誰もが目を疑った。
その子犬は、道端の”ホカホカうんこ”に向きを変え、そばまで行くと、パクッと食べてしまったのだ。
Σ|ll( ̄▽ ̄;)||lひえぇぇぇぇぇ〜!
しかも子犬はすぐに向き直り、私たちの元へ走って来る。
ヘ(≧□≦ヘ) ギエーーー!!
もう可愛い子犬でも何でもない。
一目散に逃げるのみ。
何メートル走っただろう?100メートルは走ったかもしれない。
息切れした私達は、ゼエゼエ言いながら後ろを振り返る。
すると、ちょうど脇道から現れた3人の女子中学生が、その子犬と遭遇していた。
「(≧∇≦)キャー♪可愛い〜!おいでおいで〜」
中学生の一人がしゃがんで子犬を抱っこする。
「ヤバいよあれー」
と私が呟いたときはもう遅かった。
子犬は喜んで、女子中学生の顔や口までペロペロと舐めまくっていたのだ。
私は唖然とした。
だって…1分前にはうんこを食べていた子犬なのだ。
それも知らずにその中学生もお気の毒。。
その光景を見て吐き気を催した私とは対象的に、友達のふみちゃんは大ウケ。腹を抱えてのバカ笑い。
こんな人もいるんだ。。
とにもかくにも、私がキス嫌いになった決定的瞬間でもあった。
それ以来、今でも想像してしまうこと。
もしキスする相手がその直前に、どんでもないゲテモノを食べていたとしたら?
そう思うのと同時に、うんこを食べた犬の記憶が必ずフラッシュバックされてしまう。
更に言えば、そのフラッシュバックは妄想に発展し、その子犬が私目がけてキスをせがみにやって来るのだ。
もう尋常な精神ではいられない私。
キスをされると吐き気がするのは全てそのせい。
こんなわけで、私は8歳でキスとジンギスカンと犬が嫌いになり、それは今でも変わらない。
(続く)