下
彼が私に残した手紙の返事を私は書いた。
世界で一番愛する人へ
私は、君から数えきれないくらい、いっぱい幸せをもらいました。
君と一緒に居られるだけで幸せだったよ!
君は私といて幸せでしたか?
私に沢山をありがとう。
君にありがとう。
世界で一番愛した女より
この短い文の手紙を送った。
君に届きますように。
と、祈りながら。
すると、それから、1ヶ月して、天国から手紙が届いた。
僕が世界で一番愛した女へ
きっと君はあの手紙を読んだんだね。
少し恥ずかしい気がする。
君のことをこれから永遠にずっと僕は愛してと思う。
僕は幸せ者だったと思います。
君は、僕を最後まで面倒見てくれたね。
最後まで一緒に過ごせて幸せでした。
沢山をありがとう。
世界で一番君を愛した男より
短めの文の手紙が送られてきた。
不思議な感覚だった。
もう、ここにいない人なのに…
うれしくてうれしくて、心が高鳴る気持ちと切なくて涙が出そうな気持ちが私を包む。
私は、疑いながらも、その手紙の返事を書き綴った。
世界で一番君を愛した男へ
こんな手紙のやり取り思ってみたら初めてだね。
私は、毎日、思います。
もし、あなたが生きていたらいいなって。
そんなことばかり。
私はも、ずっと最後まで君といれてよかったです。
悲しいこととか、切ないことのほうが多かったけど、その分幸せを沢山貰えたから。
君に出会わなかったら、こんな苦しくて悲しい思いはしなかっただろう。
でも、君に出会ったから、こんなにキラキラとしていて輝いた時間も優しい温もりも暖かさも、全部なかったと思う。
少し恥ずかしいね。
こんな思いを伝えることって。
私も君を愛しています。
きっとこれからも。ずっと。永遠に。
世界で一番君を愛した女より
少し長めの文を送った。
これは、夢だろうか。
「ねえ、まま」
眞理が私を呼ぶ。
「うん?」
「あのね、あのね、あのね…」
耳打ちで声が漏れるくらいの大きさで話す。
「何?」
「眞理が大きくなったら、ママに絵本読んであげるの」
少し間を空けてから私は、眞理に答える。
「そっか、ありがとう」
そう言うと、眞理は微笑んだ。
その眞理の笑顔に私はつられ、眞理の頭を優しくそっと撫でた。
そして、微笑んだ。
眞理の笑顔は、純粋で癒された。
眞理を私は抱きしめた。
私は、毎日毎日、ポストをチェックした。
まだ、ポストの中には、手紙は入っていなかった。
それから、2ヶ月が経ち、疲れながら、仕事から帰り、ポストを開けると、かわいいピンク色の封筒が入っていた。
宛ては私。送られて来た先は、天国にいる彼。
天国から手紙が届いていた。
思わずその場でその封筒を開ける。
やはり、封筒の中身は、彼からの手紙だった。
世界で一番愛する君へ
元気ですか?
風邪引いていませんか?
すぐ、風邪を引く君のことが心配です。
そういえば、そうだね。初めての手紙だね。
君は、風邪を引いて熱が高かったのに、僕の見舞いに来てくれたよね。
しかも、それで倒れて、僕の隣の病室にお世話になって。
君はいつだって、一生懸命で。
僕は、そんな君を愛しています。
世界で一番君を愛した男より
そんなこともあったな。
私は、手紙を読みながら、記憶を蘇らせる。
ごほほん、ごほほん、と咳が止まらない私。
朝ベットで目が覚め、起きると身体がだるい。
頭が痛い。
引き出しから体温計を探した。
どこだったっけ?
色んな場所の引き出しを開け探し回る。
そして、結局体温計は、見つからず、そのまま、部屋の床に倒れる。
気が付いたら、部屋の床にいて床が冷たくて気持ちいい。
さっきよりも身体がだるい。
ごほほん、ごほほん!
咳がひどくなる。
私は、だるい身体を動かし、ベット上で横になる。
「暑い…」
そんな時、ピンポーンとチャイムが鳴る。
動けない…
すると、チャイムは、何度も何度も鳴らされた。
うーん…
鍵は閉めてないことに気がつく。
玄関が開いた音がした。
あ…
お邪魔します…
僕はゆっくりと玄関のドアを開ける。
鍵が開いていた。
もしかして…
僕は、そのまま、彼女の部屋に行くと、真っ赤な顔をした彼女がベットの上で倒れていた。
「おい!大丈夫か?」
声をかける。
しかし、彼女から声が聞こえない。
また、風邪を引いたのだろう。
「今、冷やすから!」
僕は彼女のキッチンにある冷凍庫から、氷を、出した。
そして、急いで彼女の横になっている枕に氷を置いた。
はあはあと息の荒い彼女。
彼女の手をゆっくりとそっと握った。
目を閉じた彼女は、そのまま、眠った。
暫くして、そんな彼女を見ていたら、眠くなっていった。
気がつくと、そのまま、眠ってしまっていた。
彼女は、まだ、眠っている。
少しして、彼女は、ゆっくりと目を開けた。
「大丈夫?」
声をかける。
すると、彼女は、微笑みながら、首を縦に振った。
私は、一度起きると、なぜか、彼が座ったまま、私の手を握って眠っていた。
え?
しかし、そのまま、私は、彼の手を離さず、彼の寝顔を見ていた。
そして、そっと微笑んだ。
早く起きないかな?
私は、気が付いたら再び眠ってしまっていた。
まだ、それは、付き合い始めの頃のことである。
世界で一番愛する人へ
今日、良い報告があります。
眞理が始めて立ちました。
捕まりながらだけど、とても感動しました。
その姿を君と見れたらもっと良かったです。
あとね、もう1人。
できそうです。
眞理と一つ下か…
君と一緒に喜びたかったな。
いつか、子供にも聞かれる日があるのかな?
どうして、うちは、お父さんがいないのって。
そうしたら、どう答えるかな?
風邪は相変わらずよく引いてしまいます。
やっぱり君を一番愛していると思います。
かわいい写真、沢山送れるといいな。
君のことを今でも愛しています。
世界で一番君を愛した女より
天国に私は、その手紙を送った。
君に会いたいな。
そればかり。
君の笑った顔が浮かんできた。
「まま…」
え?
気のせいだろうか。
「まま…」
子供が…眞理が…初めて、喋った瞬間だった。
その日、感動と喜びで満ち溢れた。
1ヶ月が経ち、仕事の帰りに、子供を実家へ迎えに行った帰りにポストを開けた。
天国から手紙が来ていた。
薄い水色の封筒であった。
急いで慌てて部屋に入り、封筒から中身を出し、読んだ。
世界で一番愛する君へ
相変わらず、風邪は引いてませんか?
おー!そ
見たかったな。
君と子供たちのその姿を。
僕は、その場にはいないえど、君と一緒にずっといます。
ここに。
目には見えないけど、ずっと側にいるから。
それだけは忘れないでください。
君を愛しています。
短い文の手紙が送られて来た。
その手紙を手にした時、私の目に、涙が出てきた。
次々に出でくる涙。
そんな姿でも、私は君に手紙を書いた。
世界で一番愛する君へ
風邪は前に比べたら、そんなに引かなくなりました。
心配しすぎです。
あのね、今日も良い報告があります。
眞理がね、初めてままって呼んでくれたんです。
すごく、うれしくて、思わず泣いてしまいました。
感動と喜びを日々たくさん眞理からもらっています。
最後の彼との手紙のやり取りは、沢山詰まったもの。
言葉では言い表せない。
それっきり、彼からの返事は送られてくることはなかった。
タンスの奥から見つけた手紙は…
いつ、書いたのか、少し古びている。
世界で一番愛する人へ
ありがとう。
君を愛してる。
世界で一番君を愛した男より
今では、これらの30通以上の手紙は、大切に保管している。
今、思えば、不思議な出来事であった。
1年が経って全てがなくなった彼との手紙のやり取りと冬の別れ。
今年の冬も街は雪で真っ白である。
まだまだ、止みそうにもない。
彼からの手紙も再び現れた彼の姿もなくなってしまったクリスマスの日が来た。
きっと彼の代わりに2つの命を私に送ったのだろう。
街はキラキラと輝いている。
街は喜びで広がっている。
私は、1歳になった子供と、お腹の中の赤ちゃんと3人で君がいないクリスマスを送った。
その日、雪が止んだ夜、子供が眠り、暖炉にあたりながら、マフラーを編んでいた。
暖炉の火は暖かい。
窓の外をふと見た時、キラキラとした物が飛んでいる気がした。
その時、初めて気が付いた。
これらは、きっと雪の妖精のせいだ。と。
そう、私は心の中で決めた。
その夜、雪の妖精は、一瞬にして消えた。
まるで、これらが、夢であったかのように。
きっと、私を暗闇から光に彼が満ちてくれていたのだろう。
そう私は思う。
最後まで読んでいただいた皆様、心より感謝申し上げます。
ありがとうございます。