ある日突然私の前に王子さまが現れた
「雫様に彼女ができた~!?!?!?」
「円花、落ち着け!」
痛いっ! 雑誌で殴られたよ……。
どうもみなさん、乙屋 円花といいます。
アイドル、一野 雫様が好きで好きで仕方のない高校二年生です。
そして私をアイドル雑誌で爽快に殴ったのが、富永 愛生。
愛称はとみちゃん。
名前に‘愛’ってついてるけど、どこが愛だよ、ウソツキ!
彼女は私の頭を野球ボールにしたよ!?
「ひどいよ、とみ(・・)ちゃん! 私が雫様を愛していることを知りながら、朝一番の第一声‘おはよう’じゃなくて’雫くん彼女できたよ‘だなんて!」
「だから、落ち着けっての!」
「また殴った! おに~! あくま~!」
ここまで来るととみ(・・)ちゃんの攻撃はやむ。
「雫様に彼女……。相手は誰なのっ!?」
「さあ、公表されてないよ」
公表されてない……?
え? なんか記者に撮られたから、発覚したんじゃんじゃないの?
「ブログで発表したんだって。‘彼女ができました’って。その更新以来、何も書かれてないんだけど……」
秘密にするってことは一般人?
芸能人だったら公開するはずだしな~。
「誰なんだろう?」
「さあねー」
うぅ……。私の雫様が~!
「♪~ 夏が終わる前に抱きしめて。戻らない季節を焼き付けたい」
帰り道、雫様の歌を口ずさみながら帰る。
はぁ~。戻らない季節は泣いちゃうな。
雫様の声がまた最高。
「君、ちょっと来てくれない?」
立ち止まった私の前には、フードをかぶった高身長の男の人。
わたしの背は152センチだから、見上げるくらいに高い。
なんか雫様に似てるな~。
「ちょっと来て!」
私が答える前にその人は私を路地裏に連れ込んだ。
これってやばくない?
もしかして不審者!? こんな人気のないとこまで連れ込んで……。
に、逃げなきゃ。
「あのさ!」
「や、やめてください!!!」
伸びてくる彼の手を振り払って、私は彼を突き放した。
「変なことはしないよ! 俺、わかる?」
「ふぇ?」
彼はフードを外して、私を見下ろす。
「雫、様?」
「よかった……。俺のことわかってくれて」
雫様が私の目の前にいる……。
なにこの展開。夢?
ある日突然、私の前に王子様が現れました。