⑦
顔を近づけ、お互いの額を合わせる。
タリアはジャパニーズYURIを連想した。
こんな世界にも、ジェンダー?性別?を超えた愛があるのか…と。
しかし、その考えとは違い、唇が触れることもなかった。
頭へと直接言葉にできない[何か]が流れてくるのは分かった。
脳みそに感覚的器官は備わっていないが、何か液体を無理矢理流されているような錯覚を覚えた。
突然のことで、タリアは頭を離そうとしたがリレイがそうもさせない。
酔った脳みそには刺激が強く、判断力が鈍った。
脅威と感じポケットから折り畳みのナイフを取り出して展開しようとする。
その瞬間にリレイは頭を離す。
「よし、これで良い」
「これで良いって…何をしたッスか?!」
「ほれ、言葉が分かるだろ?」
「はぁ?!言葉が…分かる訳…」
「分かる訳ないとでも?」
「……分かる訳……あったッスね」
不思議そうな顔をして、被っていた帽子を取り頭を掻くタリア。
その手に握られていたナイフを見てリレイは、溜息をつく。
「……ハァ。ワチは闘いにきたのではない。ここの異世界の人間達とここの世界の連中との通訳になろうとしてやってきたのじゃ」
「ワォ!通訳、あんなインプットとアウトプットを同時にできるマルチタスクな脳みそをお持ちなんて!ちびっ子ちゃん、凄い!!」
「おヌシ、酔っているな?」
「酔ってない酔ってない、まだ序の口のほろ酔いは酔った内には入らない」
タリアはナイフをしまい込み、未開封品のバドワイザーの缶を投げて渡す。
「お礼に金ピカ麦ジュースあげるッスよ」
「なんじゃ、そのキンピカムギジュースというのは」
「アメリカンゴールデンコーク」
「分からぬが飲んでみれと?」
タリヤは頷き、リレイは疑心暗鬼そうに投げ渡された缶を見た。
しかし、飲めと言われても開け方を知らない。なんだこの円柱状の金属の固まりはという顔をしている。
Ah!と言いながら、リレイの手の缶を開けてやり、一口飲んだ。
「勿論、毒も何も入ってないッスよ」
「せやか」
リレイは、バドワイザーを飲んでみる。
案の定、顔をしかめる。
「ワチらの麦酒よりは美味ではあるが、ワチの舌にはちと刺激が強すぎる」
「刺激?刺激って、バドワイザーに刺激もなにも無いっすよ」
「ここまで、シュワシュワしない麦酒が此方では主流なのじゃ」
そう言いながら、リレイは舌を出して空気に晒し、その姿を見てケラケラ笑うタリヤであった。
これが二人の出会いであった。