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U.S Hunting in Fantasy World  作者: 青カビな俺
1st.Deer hunting
6/9


 タリアとジェイソン二等兵の二人は、罠を設置した場所から離れ、草原のど真ん中に座り込む。

 タリアはMMRHunterに長い筒状のようなものを銃口部に取り付けた。サウンド・サプレッサーを装着した。

 キコキコとマズルに回しながら嵌め込む。荷物から、三脚トライポッドを出して、MMRHunterを載せて安定させる。

 ジェイソン二等兵はそれを感心しながら見ていた。

 

 

「サイレンサーなんか持ってるんですね」

 

「登録料を支払ってから、NFAウェポンのクラス3だったかに登録するまで大変だったッスよ」


 

 笑いながら、スコープカバーを開け、もう一度チャージングハンドルを引き、薬室に弾が装填されているか確認する。

 スコープを低倍率にして、獲物を探す。

 風が通れば揺れる草原、見慣れているレティクルの線、たまに飛ぶ鳥のような生き物を見渡す。

 

 

「なんか居ますか?」


「そちらのACOGでも見つからないんスか?」


「ちょっと、まだ、はい」



 見たことないような葉の形をした木々が集まる森林から、親子連れの獣が現れた。

 餌を探しているのか、雄が先導し、雌が子供を守っている。

 彼女はその親子連れを見つけ、スコープの倍率を上げて観察する。

 

 

「ヘイ!ジェイソンさん、2時の森林方向!獣の親子連れ4匹!」

 

「えっ?!あっ!本当だ」



 レンジファインダーをジェイソン二等兵に渡して、彼女はMMRHunterを構え直した。

 グルップは握りこまずに優しく添える程度、引き金にはまだ指を掛けない。

 

 

「距離は、幾つッスかね?」


「あーっと、距離、200mちょっと」


「200m、風は…」



 風速計を出して確認。

 左の風、風速2m程度とデジタル数値で表れた。

 

 スコープ越しに観察する。

 直ぐに撃って外して逃げられたら、暫く動物はそのポイントには現れない。

 硝煙や銃声から、異変を察知して動物はその周辺には近づかないのだ

 慎重さと我慢を求められる。

 

 

 親子連れの獣の先行していた雄が、突然走りだした。

 雄叫びを挙げて、何かを威嚇するような様子だ。

 走りだして、茂みに姿を隠す。すると、何やらバックのようなものを口にくわえている。

 バックのような物には、小さな人間らしいものがオマケみたいにジタバタと抵抗していた。

 

 

「ジェイソンさん、見えるッスか?」


「はい、多分エルフの子供かと」

 

「この世界には、エルフだなんて耳鼻科の医者とモデルのカメラマンが大喜びしそうな種族が居るんスか」 


「自分も近くであんまり見たことないですけども…」



 おそらくこのままでは、小さな人間らしい生物は食べられてしまうだろうが、かといって、見殺しにするのは目覚めが悪い気がする。

 タリアは、一回ジェイソン二等兵を見て、彼の反応を伺う。



「アレは、助けるべきッスかね?」


「周辺住民の反感や関係的には、助けた方が得策かと…」


「自然摂理の弱肉強食の妨害活動…ッスね」



 ヘンゾルトスコープの倍率を適正にして、MMRHunterのセフティを解除。

 スコープのレティクルに子供の獣の胸に合わせる。

 頭部は剥製にした時美しくないから避けると共に、頭に弾丸が残って生きていた場合に撃たれた動物にとっても半殺しは残酷である。

 獣の体は鹿のような体であり、それに牙を足したような違和感ある造形だった。

 

 獣の口から、小さな人間らしい生物が離れ、獣の子供が近寄るのが見えた。

 

 タリアは息を吐いて止め、躊躇無く引き金を引いた。

 









 突然の出来事だった。

 茂みから身体を出した瞬間に、リレイは浮遊感と回転性の目眩に襲われた。

 

 

「はぇっ?!」



 目眩と思っていたことは全く違い、音も無く素早く近づいてきた獣にバックと服を噛まれてしまったのだ。

 獣はリレイのバックを噛んで、そのまま子供の場所まで彼女を持っていく。

 雄の獣の子供と雌は眼を輝かせて餌の期待からか、涎が口から垂れていた。

 このままでは、獰猛な獣達に食い散らかされて、無残な姿となり、残骸は鳥や虫の餌となって大地の肥料になってしまう。

 餌になるためにここまで来たのではない。

 新しい世界を見に来たのであって、こちらの世界にお別れしに来た訳でもない。

 

 確かに別世界への期待をしているが、死後の世界には期待も何もない。

 

 しかし、自然摂理、食物連鎖、弱肉強食の原理が彼女を襲う。

 

 死への本能的恐怖から、これから訪れる死から逃れよう抵抗する。

 

 

「離せ!ワチは小さく歩く美味しい褐色お肉ではない!!」



 手足を必死に動かして、獣の口から逃れようとする。

 その努力と抵抗は意味をなさず、餌という運命、死は獣の歩くスピードと同じ速度で迫ってくる。

 

 

 

 こんなはずではなかった。


 違う、こうじゃない。

 

 神よ、好奇心のままに行動しては罰が下るのですか?

 

 この世とあの世の先祖に笑われてしまう。

 

 

 

 数秒で彼女の思考が絶望の色に染まった。

 その絶望の色も長く持たない。

 

 今度は本能、生命の防衛本能と悲鳴、生きて食われる限り続く激痛で打ち消されるだろう。

 

 親の獣の口から、離され地面へ落下。

 落とされた痛みと死への恐怖が彼女を襲う。

 

 獣の子供と雌が大きく口を開けて、涎の引く口腔内と立派な牙を見せつける。

 

 

「あ、あああぁ、い、嫌じゃ!!」



 一番に迫る子供の獣の顔を殴る。

 その瞬間、子供の胸に穴が開いて、外皮系、器官系の皮膚を点状に破く。

 肺、肺胞の細胞を5.56mmの狩猟用弾丸がマッシュルーミング、弾頭が潰れる様に広がり、破壊する。

 

 命中した子供は、スイッチが切れたように前足から倒れ、一瞬遅れてリレイに聞いたことのない何かの破裂音が響いた。

 

 子供の獣が倒れると、その獣の家族は林の深い方向へ逃げて行った。

 

 

「な、なに、何が起こったのじゃ?」



 今目の前で起きた出来事が、予想外過ぎて混乱するリレイ。

 自分は獣の顔を殴った。

 そうすると、殴られた獣の胸に穴が開いて、その穴から血液と気泡を垂れ流し、手足を痙攣するように動かす。

 唾液とこみ上げてきたであろう吐血する獣は、悲鳴を上げて苦しむ。

 

 その瞳には、リレイが写っている。

 

 彼女の眼にも、今自分を食べようしたから殴ったら、穴を開けてもがき苦しむ獣が写っている。

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