プロローグ
「ハンティングってのは、昔は生きる為の日常生活動作の1つだったかもッスね」
「生きる為には、食べないといけないからな」
「けど、科学や文化が発展していって今日のハンティングってのは娯楽性高いモノになったッス」
「そちらの世界ではそのようじゃな」
1人の人間の女性と1人の小さなエルフの女性が、鬱蒼とした森の中で銃弾に倒れて死んだ鹿の様な動物の近くで雑談していた。
人間の女性は狩猟オレンジの撥水パーカー、カーキ色チノパンと前後ろ逆に被っているキャップ帽。Akdal MKA1919(AR15Shotgun)と赤いワンデイバックパックを背負っている。
そのMAKA1919の銃口からは、少量だが硝煙が上がっていた。
そして、彼女達の目の前には、まだ温かい獣の死体。
親鹿のような大きさの四足の獣であり、鹿と違うのは角が頭に三本と長い牙が二本生えている。身体もオレンジの入った体毛。
人間の女性は一度屈んで、十字を切る。
「異世界の、異教の祈り方か…」
「此方でも見られてるかは、分からないっすけどね。殺めた無害な命には、一応…。」
腰に巻き付けたウエストポーチからナイフを取り出して、動物のまだ温かい頸動脈を切る。血抜きの為に、近くの大木に吊し上げて放血させた。
止めどなく血液は音を立てながら落ち、地面は水気帯びた赤茶色く変色していき血の匂いが鼻腔へ。
「エルフの皆様の解体方法は知らないッスけど、適当で良いッスよね?」
「妾達は血抜きしてから内蔵を抜くぞ?」
「りょーかい。じゃあ、その通りに…」
人間の女性はバックパックから蛍光色のテープを出して、近くに木に貼る。
吊るした肉から少し距離を置いた場所にも、幾つかのテープが貼ってあり、それが彼女達の来た道を示す。そして、それが彼女達の帰るべき方向となる。
「本日三頭目っと。あとノルマ二頭ッスね」
そう呟きながら人間の女性は荷物を担いで、辺りを確認してから獣が居そうな雰囲気の方向へ爪先を向けた。
小さなエルフの女性は人間の女性の進む方向と同じ方向へ足を進める。
「無理に一日五頭狩らなくてもいいんだぞ?」
「まぁ、趣味ッスからねぇ。これは」
MKA1919のマガジンの残弾を確認し、白いショットシェル(散弾)が有ることを確認して、足を進める。
「命ってのは尊いけど、尊いからとはいえ殺めない理由にはならないのが食物連鎖」
「生きるとは、複雑よのぉ」
二人は鬱蒼とした森の中、迷いなく進んでいく。