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あやしろ  作者: 納碗野うずみ
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山神白(やまがみしろ)

「・・・中二乙」

そう冷たく言い放ったのは女子大生。

「え・・・・?」

ハトが豆鉄砲を食らったような顔をしているのは白。

「いやいや・・・。だってさ、いきなり『自分は神様です』とか言われたって現代人はほとんど信じないって・・・。神社と言い服装と言い、結構手が込んでるけど・・・・人をからかって遊ぶのは良くないよ?」

あーあ、結局ただのイタズラか。割のいいバイトだと思ったのにな。

「え・・・いや、私神様なんですけど」

白と名乗った少女は食い下がる。

「はいはい。でもあなた、高校生くらいでしょう?その歳でこんなことしてて、恥ずかしくないの?お父さんとお母さん、このこと知ってるの?」

「いや、だから本当に神様なんですけど私。本当に」

「いやいや、どう見てもただの人間だから」

「神様なの!神様だって言ったら神様なの!アイアムアゴッド!」

「あー最後の一言余計だった。今ので確信持てましたーあなた人間です」

「なんでよ!」

「いや、だって普通神様が『私は神です』とか言わなくない?」

やれやれ、と言うような表情の代。一方の中二病女子はぐぬぬ・・・というような表情。どう見ても代優勢だ。

「・・・わかった。そこまで言うならお見せしましょう」

仕方ないな、と言いたげな素振りを見せつつ、白はそう言った。

「え、なになに?学生証でも見せてくれるのかな」

「そうね、そんなものよ」

白はそう言うと、ニヤッと笑って見せた。

 次の瞬間、白の体がふわっと宙に浮いた。

「・・・・・え?」

今度は代が目を丸くする。

「どう、驚いた?これで私が神様だってことを信じ・・・」

「ウソくせーー!」

途端に代の表情が曇る。

「え、え、なんで?ほら?目の前で飛んでんじゃん!ほら!」

白は取り乱す。なんでこの人間、私が神様だってこと全然信じようとしないの???

「いや、だってほら『私は神様です』とか言いながら浮くってこれ確実にヤバめのカルト教団じゃん」

「あ・・・しまった、そんなのもあったな・・・。じゃあほら、光ります」

そう言うと、今度は白の体の周りがほんのりと光りはじめた。夕暮れ時ではあったが、なんとなく、光っているのは分かる。

「いや・・・どうせそれも何かの手品でしょ?飛んで光るとか、カルト教団じゃなかったらただのテーマパークのパレードだよ」

代の顔が引きつっている。まずい、このままでは確実に『イタい中二病女子高生』みたいな感じになってしまい、二度とこの神社には来てくれないかもしれない。それだけはまずい。

「え・・・えと・・・・・あ、あとほら!龍にも変身できるよ!」

中二病女子高生がそう言った瞬間、轟音と共に代の目の前が白煙で覆われた。

「うっ・・・・・・な、今度はなんの手品よ・・・」

煙はすぐに晴れた。さっきまで、少女が浮いていたあたりには、白い苔に覆われた巨木が一本出現していた。

「な、なにこれ・・・・・・?」

代の目の前に現れた巨木。妙だ・・・根のあるべき部分には、鳥の足のようなものが見える。幹はカーブしながら、代の反対側に伸びている。なんだこれは・・・。

「え、えっと・・・・・・?」

今度は白い木の上の方へと目をやっていく。な、なんだこれは・・・。代のちょうど頭の上。真上から、テレビドラマやアニメでしか見たこと無いような生き物が・・・龍が、代を見下ろしていた。

 再び轟音、そして白煙。次の瞬間、代の目には薄く朱の混じった空と、朱色の雲だけが映っていた。

「どうです?これで信じてもらえたかしら。私が神様だって」

ふう、と一息つくと、白は自慢げな顔をした。代はゆっくりと、顔を人の形をした白へと向ける。そして一言。

「いや・・・神様と龍って、あんま関係なくね?」




 外もすっかり暗くなった。今、代と白は社務所の中で、コタツに入りつつバイトの面接をしていた。

「だから・・・なんで信じてくれない訳さ。龍にだって変身したじゃん!」

「まあ・・・確かに変身してたけどさ・・・・。でも、龍に変身できるからって神様の証明にはならなくない?」

代はそう言って、お茶を一口すすった。

「いやいや、だってほら、千と千尋のハクだって龍に変身できるじゃん!神龍だって神様だし」

言い合いしつつ、白は代の持ってきた履歴書に目を通している。

「まあ、神龍はすでに神って名前に入ってるし・・・。ハクはまあ、そうだね。じゃあほら、あなたは一体何の神様なわけ?」

「お!やっと私が神だと信じ・・・」

「仮に。神様だったとして」

「ったく頑固な人間だな・・・。私は山神白やまがみしろ。ほら、何の神様か、苗字で分かるでしょ?」

「怪しいなー。苗字に神って入っちゃってるしなー」

「そう言う神様もいるの!いい加減信じたらどう?オンシャダイ」

「いや、まだ確証が・・・・・って、今なんて言った?」

「オンシャダイ」

「なにそれ。ゲーム?」

「え・・・あなたの名前でしょ?御社代オンシャダイって」

「いや、フリガナあるでしょ」

「話をしよう。あれは今から三十六万・・・いや、一万四千年前だったか」

「ホラ。それ、確実にわざとじゃん」

「ははは。面白かったから、つい、ね。しっかしこれに気づくとは私も天才か・・・」

神様の癖にとても俗っぽいなコイツは・・・。

 実際、代は白の事を神様だと認めていない訳ではない。宙に浮いた段階ですでに信じてはいたのだが、アニメや漫画でしか起こりそうにないことが、自分の目の前で起こったために、彼女自身混乱しているのだ。

 もっとも、代がそのような事態に直面しても即座に信じ、適応できるアニメ・ラノベ愛好家であったなら、今のようなやり取りはまた、別のものになっていたかもしれない。だが、それもまた“運命石の扉(シュタインズ・ゲー

「さっきから一人でなにブツブツ言ってるの?」

不思議そうな顔をしながら、白がそう聞く。

「いや、べつに」

「そう。なら、いいけど・・・」

「ところで」

代が突然、神妙な顔をした。

「バイトの方は、面接の結果はどうでしょうか・・・?」

「ああ、それね」

白はため息をつくと、履歴書をコタツの上に投げ置いた。

「結果も何も、募集かけたのって代、あなただけだもの」

「・・・え?」

「最初から、代。あなたに来てもらうつもりだったの。御社代、みやしろのしろ」

そう言う白の表情も真剣そのものだ。

「詳しくは言えないんだけれど、ちょっと最近私だけじゃこの地域の面倒を見きれなくなってきてね。それで、霊力の強そうな人を探していたのよ」

「は、はあ・・・?」

中二チックなワードきた!!霊力とか!

「それで、まあ、あなたが一番素質あるかなって。名前的に」

「素質!・・・って、名前かい」

「御社なんて苗字、そうそういないでしょう?」

「まあねぇ」

「あなたは御社代。つまるところ、神社の代わりってことよ」

「神社の代わり?」

「そ。まあ、どういう事かは、これからだんだん分かっていくんじゃないかしら。たぶん」

「えー・・・なんだかこう、中二チックな展開になってきたっぽい?」

「そうかもね。まあ・・・うん、そうね。でも・・・」

そう言って白が続ける。

「引き受けてもらえると、嬉しいかな」



 外はすっかり暗くなっている。細く欠けた月が、闇夜で怪しく笑みを浮かべているように見えなくもない。そういえば、業務内容とか聞いて来なかったけど、一体何するんだろうか・・・。本当にカルト教団とかだったら嫌だな。あ、でも儲かるんだったら悪くないかも・・・。

 これから始まるであろうバイト生活に、代の心は少しだけ弾んでいた。


 そんな代の背中を、大木に腰掛けながら見つめる一つの影。

「ふぅん・・・あれが新しい『代わり人』ねぇ・・・。まあ、楽しませてくれるとうれしいんだけど」

そう言うと、謎の女性は怪しい笑みを浮かべ・・・

「とか言っちゃったりして・・・」

・・・なんなんだこいつらは。誰もこう、締まるセリフを言わないのか?まあ、そんな感じで姫山市を舞台とした物語の役者が、だんだんと、揃いつつあるのだった。




いや~、なんかこう、難しいですけどこう、ええ。妖しろを軸に新たなお話を作り出しますのでこう、ええ。ね。

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