家督相続
徳山館の一室にて
わけもわからず城に連れてこられてしまったのだけど
だいじょうぶなんだろうか……
ん?
「失礼します。 初めましてそれがしは貴方様の身の回りの世話を仰せつかったものです。 何なりとお申し付けください」
「おう……」
「さっそくなのですが貴方様のお召し物は身の丈に合っておりませんのでお着替えを用意していますのでお着替えください」
「……わかった」
一体なんなんだ!
「終わりましたか?」
「ああ」
着物の着付けってこうするんだね
何人かの人が着付けをしてくれた
現代人の俺には到底無理だわ
「では、案内いたします」
そして案内されたのは大広間の上座
そこで待っていたのは
な、なんだよ! これは!
目の前にいるのは大勢の武士
これはまるで……
ん?
「第六代蠣崎家当主として松前義広を迎えいれ、われら家臣一同忠義を尽くすことを約束いたしまする」
「…………」
は?
「どうかなされましたかな?」
「えっと……自分が、此処の当主に、ですか?」
「そう申しました」
衝撃告白だ!
「どういうことですか! 唯の平民に過ぎないこの私が当主? 私にはまったく理解ができかねます!」
「私はこの場を仕切らせていただいている小平季遠と申します。今は亡き先代が臨終の際に遺言で『松前にいる松前性のものに家督を継がせよ』との指示がありこのようなことになっている次第であります。それに唯の平民がその様な大それた名を持つ筈がありませぬか」
「確かに……そうですよね」
確かにそうだな
あまりにも露骨すぎたか……
「しかし、私はいいのですがあなた方はそれで満足いくのですか?」
「家臣一同承認を頂いている次第でございます」
「本当にいいのですね?」
「武士に二言はござらんぞ」
そう言って季遠のそばに侍っていた老人が言った
「これは、失礼いたしましたわい。儂は厚谷重政と申す。今までは宿老を仰せつかっておった」
「そうですか」
「じゃから殿は何の心配もせず、われらを仕切ってくださればいいのじゃよ」
「……わかりました」
蠣崎家か…………太平の世を築けるか試してみるのも悪くないな。それに帰れるか分からない今、これが天命であることを祈るか……
「当主の件引き受けました。しかしやるからには私は天下を狙いますがよろしいですか?」
「「な、何を……」」
「ほ、本気でございますか!」
季遠があわてて聞いてくるが俺は
「至って、本気ですよ」(ニヤリ)
そう答えた
そして
「もう一度聞きます、これでよろしいですか?」
「「はは!!」」
こうして俺は松前義広として蠣崎家を継いだのであった