トール村
「は? 自分の年齢が分からない!?」
フィラリアに属する港の近くにある商店街。通称「フィラリアの台所」ーーセレィア。
トラエール(徳島。ウェーランドはその港と周辺街の総合的な呼ばれ名)方面行きの船から降りたウォン達は休憩所に居た。
年齢と自分の名前を聞かれたミアリーはこう答えた。
”記憶が無い”
それを聞いたウォンは混乱した。同行のピーコ、ロラと同じだった。
「どういうこと?」
「んとねー。昔、優しいじーさんがいろいろ食べ物を作ってくれたんだよ。おいしかったの!」
ツインテールの短い髪がピコピコと跳ねながら、嬉しそうに説明する。かなりの調理人だったらしい。
「で? そのじいさんは?」
「知らない。覚えているのはそれだけ。次は・・・・燃えているの」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・はい?」
「家がねー燃えているの。みんーな。どこを見ても燃えているの。なんかね、青色と赤色の旗が喧嘩をしているの」
「帝国派と反帝国派!? それ、紛争だよ・・・・!」
「マジかよ」
「ああ。聞いたことあるわ。ウォン知っている?」
青色の旗は帝国派の特徴。赤色はその真逆だ。時々・・・というか、旅をしてきたウォンとピーコにしてみれば「日常的な喧嘩」だ。ただし、規模がでかい事を除いたらの話。
「その紛争は暴走して、周りを巻き込むことが良くあるんだ。多分、ミアリーはその余波に・・・・」
あまりの事実に口を閉ざす。
「えっーと、続きを言ってもいい?」
「ん。ああ。別にいいよ。どっちにしても言いたくないならねやめてもいいよ」
「うん! みなの家が燃えて、誰にも居なくちゃったんだよ。それでね、足にカードを踏んだの! それが「ミアリー」。 なんかね、17歳ってあって、それを見せたら急に大人になってうれしーの!」
「うん。大体分かったよ。そのカートを悪用していることもね」
ため息を漏らすウォン。だが、内心は違った。可能性を考えていた。おそらく、大切な人が死んだトラウマによる記憶喪失。それなら辻褄が合う。ミアリーが自分から離れたくないのも、一人では怖いから・・・・。
「それでね、お金を無くして、お腹がグ~~~~~って鳴った! だから、ウォンを売ったの。あっ、ギルドに必ず返してね、って1万メルをくれたのーーー!」
「うん。シリアスな空気を返せ。そして、待てコラ」
「・・・・・ひっとして、ミアリーなりに仕事を探したかもな」
「あは、あはははは・・・・じゃあ、次は私の番ね。これから故郷の村へ行くわよ。トール村よ」
トール村はフィラリアから東の方にある。これと言った特産物は無く、小さい村らしい。
「道はどれくらい?」
「すぐにたどり着けるわ。まぁ、歩いたら分かるから」
「嫌な予感するのはミアリーだけ?」
「奇遇だな。俺もだ」
もうすぐ護衛の任務が終わる。そう思い、早速トール村へ向かった。
「・・・・・・すぐにって言ったのは嘘だったの?」
「半分正しいわね。30分は私たちなら<すぐに着く>よ」
「じゃあ、後ろの、へばっているミアリーは?」
「野道をあれこれ1時間は歩いてるからかも・・・・」
ミアリーは18歳ではなく、子供であることは確かだ。故に長い道を歩いたことは無いだろう。紛争から逃げた時も似たような状況になっていたかもしれないが、多分馬車に乗ったんだろう。
ロラはこんな長距離でも平気に歩く。慣れているんだな。
ウォンとピーコは不死不老(というよりも幽霊に近い)の為、「疲れる」という感覚は無い。
「ウォン。どーして、幽霊になったの?」
「あー。説明しても分からないと思うよ」
「俺たちが喋っているのを信じてもらえる事よりも難しいからな」
「私はあなた達を見ていると、この世の不思議な現象も納得できるわ」
それはどういう意味だろうね? ロラさん?
「あ。見えてきた。トール村よ」
村の人口は150人。老人の割合が高く、子供は少ない。そんな村だ。
ウォン達は村長の家を訪ね、面会した。
「ようこそ。トール村へ。同時にロラを同行してくれてありがとうございます。ただ、ペッドは用意できませんが、歓迎はしますよ」
「いいえ、すぐに帰りますので気にしないでください」
「そうですか。・・・・ロラ、後で話がある。ここで待ちなさい」
「はい。お爺さま」
「あの~」
手を挙げて言いにくそうに口をモコモコするのはピーコだ。
「ここからは個人的な質問ですが、ロラの関係・・・というか、町長とはどういった関わりですか?」
「うーむ。気になりますか?」
「以前に、地位が下がっただけでお金には困っていないと聞いていたので。ただ、イメージとは違った所があって」
「むぅ。それでは軽く説明しましょう」
「ありがどうございます」
村長さんは咳払いし、
「まず自己紹介を。私はカノルラです。ロラの保護者でもあり、里親です」
「里親?」
「親が何らかの理由で居なくなった時、預かり家族のように育てる。その役目を果たすのが里親です。ロラが来たのはおおよそ2~3年前といったあたりかな・・・・その両親は会社の運営に失敗、借金を作り、私にロラを預けてから姿を消したのです」
「なるほど。ではロラが騎士になりたいというのは知っていましたか?」
「知っていました。むしろ、この私が勧めました。仮にも他人の子であっても働いても貰いたかったです」
「ゆくゆくは村守に成りたかったけどね」
ロラはガックリと頭を垂れる。そんな様子を見て、何ともいえない感情になった。
村守。その言葉通り、村を守る警備員ようなものだ。だが、今の時代では盗賊とかが居るので、リスクが高い。故に相当強くならないと勤まらないのだ。
「分かりました。説明してくださりありがとうございます。・・・・ウォン、待たせたな。行こうぜ」
「うん。ミアリーはどうする? 行きたい所とかある?」
「んー・・・」
ミアリーが首を傾げて考える。そのとき、村長の家に一人の男が走って来た。
「カノルラ様! 大変です。嵐の子がまたにしても問題を引き起こしたそうで・・・・」
「またか。あれほど叱ったというのに」
「それが、今回の場合、逆だそうです」
「なに?」
村長・カノルラが薄く反応した。男はフィラリアの病院で治療を受けていると言い、ロラに気づいた。
「なんだ。びっくりした。ロラか。あんまり見ない内に綺麗になったな」
「誉めても私の心は動かないわよ」
「知っているさ。ああ。クロノが騎士試験に合格したらしい。嵐の子は知らせたくない気満々だったが」
「本当? そう。あいつ、とうとう私を出し抜いて、なれたのね」
「ロラ・・・・・・・そうだ。君が居るなら頼みたい事がある。嵐の子の機嫌を良くしてくれ」
ロラはいかにも嫌そうな顔して、村長さんに目をやる。
「すまんな。ロラに大切な話がある。ここから離れるにはいかんじゃ」
「まずいな。今のあいつを何とかしないと」
「大丈夫よ。代わりに行ってくれる人が居るから」
あ。この話の流れは。
「ウォン。頼める?」
ピーコは頭を抱え、ミアリーは傾げる。ハテナマークが浮かんで見えるようだ。ウォンはため息を吐いてから、
「分かりました。ただし、報酬は頂きますよ」
「ええ。3人分で800メルはどう?」
「・・・・(安いけど仕方ないか)。いいですよ」
収入 ギルトからの借金 1万メル
支出 船乗り代+商店街での食事+お菓子
5965メル
その他色々 2500メル
現在残額 1535メル
借金返済責任者 ウォン&ピーコ




