アボロス
遂に物語の再開をしました。
週1で行こうと思います。
<<落日なる島>>グリレカス。
海に接面し、水位が増える事で壊滅危機に晒される島だ。いざ入ってみると予想した危機に襲われるような場所ではないと感じるだろう。なんとものんびりとした雰囲気があり、安心して暮らせる。実際、海に対して壁を作っている。
ーーーー旅人ガイト ゼガン社より
22時12分。
グリレカスの宿屋の出入口。
「ウォン」
名前を呼ばれたので振り返る。宿屋の入り口に金髪の三つ編みの女子が立っていた。ロラだ。全体的に小さく見えるが、胸はややあり、他の所も申し分ない程美しい。まさに美少女である。ただし、性格がアレであることを除いたらの話だ。
「眠れない?」
「半機械犬だからね。眠るという機能は無いんだ」
「それじゃ、夢を見られないね」
「君が羨ましいよ。騎士になれた夢を見れるんだから」
「・・・・ウォン。私のペッドに入ってもいいわ」
何処か寂しげな顔でとんでもない事を言い出す。これに対して微笑して断る。
「流石にそこまでの勇気は無いよ。明日は早い。休んでよ」
憧れの騎士試験に落ちたロラは故郷に帰る。それが両親との約束だったらしい。
ウェーランドは小さい領地であるが、軍事力はあり、兵士を募っていた。それでミアリーは遠い所からわざわざやって来た。だが、結果は非情なものだ。
「ウォンは誰かと結婚したいとは思わないの?」
「さあね。僕が人間になればいいけどね・・・。もしかしたら、君を選んだりして」
「・・・・私は・・・・」
「ああ、うん、冗談だよ。何にも真面目に受け取らない
で。戦乙女を目指して騎士試験に挑戦したんだろ?」
「うん・・・・」
曖昧な返事を残して、ロラは階段を上っていった。
やがて静かになる。しばらく放心していたが、ため息を吐く。夜空の月光が道を照らす。
まだまだ1人っぽちの時間が続きそうだ。
そう思い、地面を見つめながら座り待った。
ようやく陽が現れ、朝が来たと実感する。
ミアリーを起こした後、外でしばらく散歩する。
町中は商人が営業を始めていた。あちこちで店を展開する。
欲しい物は無いなと察してから宿屋に戻る。
宿屋に入るなり、自分を気づいた受付係の女性が声を掛ける。
「あ。ウォン。君を捜していた人が居たのよ」
「その人、何処に?」
「そこらの食堂に」
「分かった。ありがとう」
お礼を言い、食堂に向かう。
食堂はそれなりに内装しており、シンプルだ。狭い為か、椅子の数は少ない。それでも数十人は入れる。ただ料理はうまいらしい。一度食べてみたいものだ。そのせいか、人がちらぼら居る。
「あっ」
偶然にも目が合った。
「ああ。犬ってお前か。こっちだ」
体を黒一色で包まれたような人だった。髪も手袋も着たコートも靴も。服はさすがに別色だ。瞳は灰色か。
物に対して興味を持ったような笑い。そこに寒気を感じた。
「君は?」
「俺か。アボロスだ。・・・しかし、ロラは良い女だな。ついつい手を出してしまう」
「へぇ。性格がきつい女は好き?」
「はっはっは。何を言う。俺なりに育てる女が好きだ」
「・・・・? どういう意味?」
僕(見た目は犬)が喋っても驚かないアボロス。それどころか自らの性癖についての講義を突然始める。
「人間が食べるトマトとか、レタスとかは種を撒いて育て収穫し食べる。それと同じだ。俺は人の子をさらって、育て収穫(結婚)するのが好きなんだよ。分かるか?」
「ちっとも理解したくないね。それ」
「は~~~~~。他人は親の育てた子をいきなり食べようとする。俺にとっては成熟した実を味見する前に取られるようなものと同義だ」
「でも皆はちゃんと考えて付き合っているじゃん」
アボロスは腕を大きく動かし熱論する。しかし、瞳は笑ってない。見下している。誰を? 決まっている。僕だ。
そんな相手にイラッときた。でめぇ、喧嘩を誘ってんのか? しばくぞ。
「こんな事を討論しても仕方ないな。はっきりと言おう。
ミアリーを俺に寄越せ。
そいつは俺の獲物だ」
「断る」
その瞬間、空気が振動し、周辺の人々に寒気と恐怖を与える。
「ていうか、アボロス、人間じゃないよね?」
「その通り。改めて名乗ろう。悪魔アボロスだ。ランクは下の上といった所か」
またにしても笑う。よっほど余裕があるようだ。
「ミアリーは17歳だよ?」
「ああ。その情報、違うみたいだぞ?」
「は?」
「証明する物があっても、顔写真がないだろ。それが証拠だ。あいつは10歳だ」
じっとアボロスを見つめていると、察知能力に警報が鳴る。
「アボロス。これ以上、騒ぎを大きくしたくないなら逃げた方がいいよ」
「あん?」
アボロスとの睨み合いで空気が張り詰めているのに、ここでやってくるとは。
「ピーコがやって来る。超スピートで」
「ぶ・・・・・あっはははっは!!!! 何かと思えばそんなことか? 今の俺は力が無いが、避けるだけなら何とかできる」
「違うよ。そんなことじゃない」
その時、外から足音が聞こえた。直後、食堂の入り口の扉が勢いよく開く。
そこに居るのはピンク色のうざき人形。ピーコだ。彼は真顔で僕に詰め、
「ウォン!! ロラに何を言った!? あいつ、『人間ならいいかもね・・・・あ。でも、顔が悪かったら・・・う~ん』って悩んでいたぜ?」
「あぁ・・・それは冗談がストライクに受け取ってしまったんだよ」
「そんでさ、『女に関して何か注文はあったかしら?』と聞かれたんで、『確か、性格が男っぽい女が好きだったな』と答えたら本気で凹んで悩んでいたぞ」
「ピーコは一遍乙女心について勉強した方がいいよ。身のためになりたいなら」
「え? 俺、女心を持っているように見える?」
ピーコ。そーゆーことじゃないから。違うから。
「なるぼとな、そういう奴か」
こんな僕らのやり取りを見ていたアボロスは勝手に何か納得する。
「お? あいつ、若々しいひとなのに黒単色で気持ち悪いな。女に関しては失敗しそう人だな。ウォン、知っているのか?」
「・・・・・・ピーコと言ったな? 表に出ろ」
怒りマークが付いたアボロス。喧嘩を売る言葉を無自覚で言うピーコ。頭を抱えるウォン。もはや収まりがつかなくなってきた。
ここで見かねた受付係の女性が仲裁を買って出て、落ち着きを取り戻した後、
「一応警告しようと思ってな。これからお前等が向かうフィラリア、何かが起こっているぞ。気をつけろよ」
アボロスは言い残して去って行った。
「実はいい人だった・・・・?」
「みたいだな。ああ、ウォン、ミアリーが早く行きたいって騒いだぜ。ロラはフラフラと食い物巡りに行った」
「・・・・(ロラをどう慰めよう)分かった。ピーコ、気になる情報を手に入れたよ。ミアリーの年齢が怪しいらしい。後で確かめよう」
「了解」




