子供村の長
「そうですか。クロノ騎士が来たと」
子供村の最奥。村長宅。玄関の付近は図体がデカい男が立ち構えており、番人だ。家の中は広く、数人の女中が慌てしく動き回る。様々の使い道がある部屋を抜けて一番広い空間、「接見の間」には村長が唯一顔出しできる所だ。外回りの傭兵、村人、貴族などに対して普段から顔を見せることは無い。
最近開通されたばかりの電話に通して、門番の十二干支から連絡来た時、口を押さえた。騎士がやって来て話し合う理由が欲望の他に見当たらなかったからだ。こうなると、追い返すのは厳しい。
20歳にして若い村長になった女子、セリア・レイクラードは基本的に身寄りが無い子供を引き取って育てるのが仕事だ。なので、政治の知識は無しに等しい。十二干支を売るのも考えられた。しかし、あの2人を失った後、パワーバランス補える強者は滅多に居ない。どうしてもここに引き留まってほしい。
「分かりました。私が直接出ましょう。村長宅まで案内してくれますか?」
ここの全権力は私にある。引き留めたい理由を訴えるしかない。
*
クロノ騎士は緊張していた。国王からの直訴状があるとはいえ、門番があの十二干支だ。今まで様々な伝説を残した連中だぞ? その2人が黙って仕事しているという事は、より強い人が居る。そんな確信がクロノに有った。
「姫様の為にここまでやるとは・・・」
エルフォーセ姫様に今後の活動を阻止するには命の水を先に手に入れる。それが国王の野望だった。全ては姫様に絶望を与えて大人しくする為に。
まずは十二干支・丑と午を仲間に引き入れる必要がある。だが、今の主人は子供村の長だ。その人と話をつけておく。
十二干支・丑に案内され、村長宅に向かう途中でも鼓動が早くなっていた。
しかし、そんなクロノの思いを知らないクルエスは買売部へ赴く。
そこには子供達が自力で生活していけるように頑張って造った商売品が並べていた。食品。置物。様々な動物の模型。果てには木製のテーブルセット(椅子付き)までも有った。
「あの~~クロちゃん。これ、手作り煎餅、子供たちが造ったんです。お土産にどうですかぁ~~?」
「あ。後で買うんで安心してください」
「こっちのウインナーもおいしいですよ~~~。一口どうですかぁ~~~?」
「(うっ、肉・・・! ロラにお土産してあげたいけど)い・・・・いや・・・・要らないです」
「え~~。もったないですよ」
「アンタ、俺が何しに来たの、忘れていますよね?」
クルエスは笑顔で舌打ちし、今度こそ真面目に案内してくれた。正直、このキャップが怖かったりする。
ただっ広い屋敷に驚き、接見の間に通された。座って待つようにと言われたので、正座して待った。
10分ほど経った頃に、女性が入ってきた。
「お待たせて申し訳ありません。セリア・レイクラードです。それと正座を崩しても構いません。これから長話するのですから」
「いえ、お気にならずに。あ。クロノ・エスタン。騎士団の一員です。それより是非村長に見ても貰いたい物があります。・・・・時間よろしいですか?」
「ええ。拝見します」
長との距離は思いの外、近い。直訴状を手に取ってくれるとはいえ、わざわざ目の前まで接近しなくてもいいだろうに。
それでも気にしないのか微笑して着物を一枚脱いた。白衣があるが、元々着物に守られた胸がより一層に露出して見える。
危なく鼻血が出るところだった。
「もし、別の用事だったら、ベットインしたくなったとこです」
「・・・・好きな人が居るんで。浮気は困ります」
「あら。残念」
直訴状を読み終わってから元の位置に戻ろうとする気配は無く、そのまま見合って、長は経験者モードに入る。
真面目な顔に、殺気が滲み出ている。これは中途半場な議論では満足できないだろう。覚悟する必要がある。
「さあ、話し合いを始めましょうか」




