出会い
「ピーコ。獲物は、これだけ?」
「うるせー……」
燃える火の周りに小魚が2匹ある。これは夜の川で死狂いで採れたのだ。主にウォンが。
「感知能力があるなんで反則級だろうが」
「それは言い訳だよ。ピーコだって、馬鹿力があるじゃないか」
「見えないんじゃ、役に立ねぇよ!」
ピーコの言う通り、既に陽が暮れた頃の川はかなり暗かった。
「まぁまぁ、食べようよ。なんなら、全部食べてよ」
おーし、と意気込むピーコ。
「って…食をエサにするな! あっぷねー」
「はい。頂き」
「っおい! 何全部食べているんだ!? ちぃとはよこせ!」
無理やり奪い取るピーコ。
「なぁ、ウォン」
「ん?」
「俺だち、目的は違うだろ…。何で一緒に居るんだろうな」
「僕が方向オンチだから助られて貰っているじゃ駄目かい?」
「む。なんか違う」
「まあ、どちらにせよ、結論を出すのは早いと思うよ」
「そうだな」
出発するタイミングは決めてない。朝ご飯を食べてからだったり、その前だったりする。極めて行きばっだりの旅である。
だからこそ、僕は思う。
旅とは何なのか?
何故に歩くのか?
「ウォン。気のままに歩くのも案外悪くないぜ」
「分かっている」
出発して3日目の昼に、ウェーランドという小さな港に着いた。
この港は街と船乗り場を総一化しており、貿易が盛んである。
「…と説明が、このガイドブックに書いてあった」
「ピーコ。その説明に失礼だと思わないの?」
前にステーキ用の肉で金を使い果たしたので、別々に見回るだけの行動となった。
ウェーランドは海に近い港なので店で売られる物はほとんど魚だ。
野菜はあるが、少ない。
「なんだか、盛り上がっているけど」
人々は妙に静かだ。ウェーランドの近くに何かがあったのだろうか?
ふと、おばさんだちの会話が耳に入った。
「最近、紛争が多いのよ」
「やだねぇ~物騒で」
「ここまで戦火が来ないといいわね」
ああ。そうか。紛争か。
この国は『大日本帝国』という名前があり、経済とか、世論とか、そういう理由で帝国派と反帝国派がぶつかり合っているのだ。ただ、国軍と呼ばれる軍人は紛争に参加しない。だって、国を守るだもん。こんな喧嘩にはやらない主義らしい。
「っと…ん? ここ、どこだ?」
僕は気づいた。うっかり道を迷ってしまったことに。
道案内はピーコに頼んでいるので、滅多に1人で歩いたことは無かった。
「やばいな。戻るか……あれ?どの道だったけ?」
ついさっきまで歩いた道を忘れる僕。
その時、誰かの視線に気づいた。
振り返ってみると、10代の女の子が居た。ツインテールが特徴で、赤い服を着た女の子だ。
しばらく見つめ合う僕と女の子。
やがて女の子が口を開く。
「500メルで売れそう」
「え?」
「うん。売る」
「え? えええ???」
女の子は僕を持ち上がると、小さく走り始める。
あれ?僕の体重、重いと思うけど…。
そのまま、とある店に着いた。
女の子は僕を店員の前に置く。
「これ、売って!」
「あいよ! 300メルだね!」
『…あの、僕は売り物じゃないけど」
「うわっ!」
「犬が、喋った!」
「僕はウォン。君は? できれば、名前を聞く前に殴りたいね」
「どのくらい殴る?」
「重く1発」
「私はね、ミアリー!」
おい。話の流れを無視した上に話題を逸らしたな?
「よし。先に殴るか」
爪を引っ込めて、刃物が無い右手で殴ろうとした時。
外から走る足音が聞こえた。
「ウォーーーーーーーーン!!!
ここに居たか!」
ピーコ、登場。何故、ここが分かった?
「うっそぉ! ぬいぐるみも喋った!」
ああ。さらにややしくなった…。




