駆け落ち騒動 2
トラエールの港、ウェーランド。そのギルド「人助け」。
食店と冒険者との交渉を一体化している、今は当たり前のギルドである。
受付はメラルだ。
そのうちのテープルセットに17歳になったミアリーとアリアが座っていた。
ミアリーは7年前と比べて胸が膨らみ、身長も延びた。今や未熟であるが、アリアと比べても負けぬ美人になっていた。
「どうにかならないか?」
反帝国派のリーダー、アリアがミアリーに相談する。
「う~~ん。さすがの私もこれは手上げかも」
しかし、弱々しい声で返した。
元々、国王が持ってきた縁談である。相手はコメアンの王子だ。日本語が堪能できるし、何より交流が一層固めることができる。
そんなメリットに帝国の姫様、嵐の子が反論した。
私は男とキスしたくない。もしするならば、一番信頼できる男でないと無理だ!
そう言い返したのだ。
「将来に関わる大切な話であるのは分かるんだが・・・もう少し姫たる覚悟を持ってほしいものだな」
下手したらコメアンと戦争になりそうな状況だ。この際、政治がどうしたとか、やり方が悪いとか贅沢は言っていられない。
最悪、この国が死ぬ。
「・・・・嵐の子、それを聞いたらすっごく怒るよ?」
ミアリーは嵐の子がずっと男になりたいのを側近で見てきたし、できればあの人の嫁さんになりたいと思っている。
「む。何故だ。・・・・そうえいば、エランが女装をやめさせたのはミアリーらしいな」
何かを思い出したのかように口を開いたアリア。
エランは嵐の子とミアリーと同じく、10歳からの幼なじみだ。昔はよく女装していたのだが、今は髪を短く切り、服を変えてイケメンになり男らしくなってきた。
「ええ。よく分からないけど、確か11歳の際、「その女服凄く似合わないね」、「それでも着たいの? それって似合わないのを言われるのが好き? それをドMって言うんだよ」、止めに「あー。なんか分かった気がするの。アリアがエランに振り向かない理由」と感じで言っただけ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうかした?」
「・・・・エラン、泣きながら男服を買いに行ったぞ。ミアリーが言った後に」
「そうなの? 気づかなかった」
あっらんとした雰囲気で何事も必要以上に悪いことをしたとかは考えていないミアリー。
「まぁイケメンになったし、あの性格を抜きにして付き合おうと思えばできるんだが。正直彼に対して好意は無いよ」
「当然ね」
はぁとため息を吐く二人に白い犬が近づく。
「すいませーん。嵐の子のこと知っている人居ませんかー」
そして、喋った。
突然の声に驚き、飛び退く。
が、すぐにミアリーは気づいた。
何となく見覚えがあるのだ。
「やだな。僕だよ。覚えてないの?」
「・・・・・ウォン? ウォンなの?」
「うんそうだよ。7年も待たせたね。ごめん」
ミアリーは白い犬に近づいて、たきつく。
「おかえりなさい。ウォン」
「ただいま。ミアリー」
ミアリーが離れると、アリアが咳払いする。
「・・・・ウォンだったな? ラバーネラルから聞いているが、女装はどうした?」
「あー。会ったんだ。そりゃそうか。どうりで嵐の子の行方が分かるはずだ。・・・・女装はしないよ。だって、あれはどう見ても男の娘だし・・・・」
「え? 完全な女機械じゃないの?」
「違うよ。確かに、ピーコが憑いたのは女機械だよ。でも僕はやめたんだ。だからこんな体」
「なるぼと」
「さっそくだけど、行こうか。嵐の子が居る所へ。皆で説得しないど、国がヤバいんでしょ。今、ピーコが先に行っている。説得できたら、僕は・・・・・おん・・・いや、男機械に憑いて何にも知らない騎士団にやられる役割を果たすよ」
ーーーー
「これが俺の過去だ」
ピーコが真顔で話を終わったとき、嵐の子は真っ青になり、「君はなんてことを・・・・」掠れた声で言う。
嵐の子の隣に居るエランも似たような様子だ。
今は椅子に座っており、下半身は動かない。
ミアリーが11歳の時、倒れてきたボロボロの家から嵐の子を突き飛ばし、庇ったのだ。元々、嵐の子が周りを巻き込んで冒険という名目でボロボロの家を調べに向かったのが事故のきっかけだ。
その事を嵐の子はずっと負い目に思っているが、それ以上の深い闇を見ることになった。ピーコの過去だ。
「もし、縁談を断れば、こういう可能性があるかもしれない」
「・・・・・・・」
「無理は言わねぇ。ただ、奇跡でも起きない限り、諦めろ」
今度こそ、嵐の子の顔から生気が無くす。
ピーコなら何とかしてくれる。あいつはゴブリンの大軍を壊滅した奴のだから。
そんな思いが裏切られて、精神崩壊寸前状態に追い込まれ
る。
こんな時はいつも親友が助けてくれた。
「嵐の子。お前が償いにできることは命の水で立派な男になって、ここに戻ることだ。違うか?」
幼なじみのエランだ。
「でも・・・下半身が」
「あれは自分の判断でやったことだ。誰に言われて庇ったのではない」
「・・・・・」
「一応言っておくが、命の水は1人分しかない。複製も駄目だ」
「そんな・・・・・」
今、分かっている欲望は、嵐の子の男性化とエランの足の治療だ。どちらかを捨てて、片方の願いを選ばないといけない。
2つとも今の技術では実現できない。
完全に女になるか、友を見捨てるかーーー。
嵐の子、いや、帝国の姫様は迷った。
考えて考えて考え抜いた結果、ぷっつんと何か切れた音がした。それは己のプライドが崩れ始めた音という意味でも解釈できる。
「エラン・・・・」
「ん?」
「改めて見ると、格好いいな。キスをしたい」
「・・・・おい。嵐の子?」
「それは違うぜ。いいか、私はエルフォーセ姫だ。あんたが好きになった。心も体もアンタに捧げる。何なら奴隷にもなってやる」
「・・・・・・姫様。それはできない相談です」
「何故」
「姫様。よく思い出してください。今のあなたは縁談がある。それは喜ばしい事です。同時に私のような平民と接する立場ではありません。お分かりですか?」
「知らねーな。私はアンタと結婚をしたい」
その時、古い家の扉が爆破し、そこから何者が突っ込んできた。
「自動機械、目標、エラン! 他は無視しろ」
「ケラケラケラ、さあて、エラン邪魔だから死ね」
人型機械を操る少女、赤い三つ編みでメイド服を着ている美少女。
2人とも殺意が充満していた。嵐の子達が居る部屋へ向かい奇襲を掛ける。
対して嵐の子達は謎の2人が来るまで武器の準備をしていた。
しかし、対峙した瞬間、ピーコが
「わははは、悪いな。俺はお前等の敵なんだよ」
裏返りをする。
「くっ・・・!」
「ここは私に任せろ! お前を護る」
1対3。多勢に無勢であると分かっても大きい剣を持って、斬りに行く。
それをピーコが受け止め、少女が魂技で機械に腹殴りを命令。嵐の子にヒットすると、彼女は後退しせず、機械に対して2度目の攻撃を繰り出す。
一方、三つ編みの美少女はエランに近づき、小さく囁く。
「僕、ウォンです。十二干支・羊の計画です。外に騎士団が居るので、誘拐されそうになったと口裏を合わせてください」
「分かった。そうしよう。・・・・しかし、綺麗だな。本当に機械には見えない。中身もそうなのか?」
「・・・・・ラバーネラル(ひつじ)の趣味です。これ以上言ったら、魂技<<瞬光>>でブン投げるぞ」
その直後、外の庭が見える窓がいきなり割れる。騎士団が突入してきたのだ。
中にはクイーンセル、ミアリーも居た。奮闘する嵐の子を見ると一気に殺意を含んだオーラを出す。
そのまま、参戦し、機械使いの少女と人形を相手に闘う間、騎士団は三つ編みの美少女からエランを確保、保護した。
「ちっ、奪われたか。ここは引き上げよう」
ピーコの一言で逃げる3人組。
「はぁー。なんかびっくりしたけど、すっきりしたな」
「・・・どころで決まったの? 縁談のこと」
「どうしても結婚したくないって。だから、僕が恋人の役を演じることになった」
「はぁ!? どういうこと?」
「あ、なるほど。それなら結婚しなくでもいいな。命の水は私が責任持って取りに行ってやる」
「それならあたしも行かせて。何かの力になれるかもしれないし」
「決まりだな。国王に報告しよう。腹が痛いがな」
エランが頭を抱えながら、2人の意見をまとめる。いつも事件を引き起こしている嵐の子にとっては慣れたものだ。
そんな癖を直してほしいとエランとミアリーは心中で願った。
後日談であるが、縁談はコメアンから「恋人がいる」という一方的な言い訳で破談になった。
そして、ウォン達が姫様を誘拐したとして、各国に通知。
間もなく、「国際特別指定重罪者」という冤罪を被られる。
対象は十二干支全員。
賞金は各国によってバラバラである。ただし、全ての十二干支を集めた者に命の水を得られることは分かっていた。
かつて、アボロスが予言した出来事が当たった。これで本当にウォン達は犯罪者になった。
追う者と追われる者。
十二干支と大罪。
魔界と人界。
命の水と試練。
永遠と一瞬。
今、世界が、全てが、運命が、動き出そうとしていたーーー。
永遠の旅物語
第2幕 追う者と追われる者
ようやく話が進む・・・・・。ここまでどれだけ長かったか・・・・・。
理想とする完結編にはまだまだ遠いなぁ・・・・・・。




