駆け落ち騒動 1
徳島県内のとある田舎に1軒の古い家にウォンとピーコが眠っていた。
「ああ~空飛ぶ竜姫(十二干支・辰)にフられて~」
「一方的にお別れを言われ~」
そう、2人は寝言を呟きながら。
「泣きながら歩く俺たち」
「2人の旅は終わらないよ」
一軒の古い家とはいえ、二階もあり、面積が大きい。普通の人が持てる最高の家だっただろう。今は売り地となり、新しい人が買い、ウォンとピーコを置いたのだ。
「ああ、東は巨人が居て」
「人の娘にちょかいを出したら巨人とマジ喧嘩になった」
巨人はどうやら、人の娘を好いていて、「俺の物に出すな」という感じで逆キレされた。当の本人は気づくところか、一目で逃げ出したので知らない。
「ああ、西は任侠がいて」
「おっさんって口を滑らしたら、リアル鬼こっご」
ピーコの無自覚喧嘩売り発言のせいである。このせいでウォンは「向こうの世界で犯した罪」のことを蒸し返すような行動をしてしまい、お互いに殺意満々で魂技Lv3を使用。大規模な戦跡を残し、150年も眠ることになった。
「ああ、北は被害者達(辰を除く残り全部の12干支)が居て」
「再会して、2人で精一杯謝って許して貰えてそうだったのに、ピーコのうっかりな言動で僕らをフルボッコ」
これも無自覚なピーコのせい。ある意味、一緒に居たくないトラブルメーカーである。
なお、十二干支の皮を被った者の1人、未が「あたしが作った女形人型機械に女装して(憑いて)くれたら許していいよ」とか言い出した為、Lv1<<瞬光>>で逃げ出した。
「ああ、まだ見ぬ南は人魚が居て、噂によると体が敏感で触られるとそれはもう生々しい」「アウトオォォォォ!! やめて!? いきなり連載中止になるような発言、やめて!!」
いきなりウォンがピーコを蹴り飛ばし、叫んだ。実は2人とも目覚ましていたのだ。こうなるのはいつものことである。
「なんだよ。まだ会っていないしいいだろ」
「それとこれは別だよ!?」
「ふーん。じゃあ。胸が大きい女は好きか?」
「は? なに言ってんの?」
「ふっふふふふ。分からないのか? あの胸に対するロマン! 夢のような女に抱く欲望! この沸いてくる激情!!!」
「ごめん。一ミリも分かりたくない」
「なら、お前は何だ? クソ気持ち悪い女が欲しいのか?」
「・・・・・いや、その話じゃなくて・・・もういいや。僕は内面が可愛い女が好きだ! 例えば、いつも男勝りで偉そうな女がある時突然、弱々しく僕を頼ってくる姿が萌えるっっ!!」
「それ、俺じゃん!!!」(向こうの世界では女だった)
「あれ?」
その時、廊下から足音が聞こえ、戸が開いた。
コート、瞳、髪、靴、手袋の全てが黒い男。悪魔アボロスだ。
「・・・・朝から元気だな。これで狂気があるのか疑いたくなる。まぁいい、お前らにお客様だ」
「アボロス。君たちを置いたのは君?」
「それは客から聞け。あいつなら何でも教えてくれるさ」
アボロスの誘導によって接客の間へ入ったウォンとピーコは座って待っていた1人の女性に驚く。
「あっ、起きたんですね。良かった。私が魂エネルギーを分けてあげたんですからそのままじゃ困るところでした」
「あの、確か、十二干支のーーー」
「はい。名前だけ忘れたんですね。・・・・フフフ、これで女装させる口実が作れ・・・・ケブンケブン、何でもありません。私は十二干支・未、ラバーネラルです」
可愛らしいロリっ顔で屋内でも床に置かない青色のハンティング。時々、危ない発言をするが、就職は機械技師。彼女も十二干支の1人で人型機械に憑いており、勤務地を転々としながら長い長い旅を続けている。
「ラバーネラル・・・・さん。どうして、ここに?」
それを聞くと何かに怯えているような感情を見せ、綺麗な髪を掻き回す。相当な悩みを抱えている時の癖だ。
「あーーー・・・・・。これは個人的な依頼なんですが、私が作った人形機械でちょっと厄介な面倒事が起こりまして。話が分かる皆さんに協力をお願いしようと」
「内容は?」
「・・・・十二干支・子は知っていますね? そいつが人型機械で人間の恋に干渉し、駆け落ちを阻止しようとしています。ミアリーも絡んでいます」
「「・・・・・・・・は?」」
一気に説明され、パニック状態に墜ちるウォンとピーコ。
十二干支・子は精神年齢が幼く、漢字ですら読めない少女のような人だ。
ミアリー。ウェーランドで出会った少女であり、悲惨な過去を持った人物だ。なお、名前は他人の保険証から拝借したらしい。
ハッと何かに気づいたウォンがアボロスに向き質問する。
「そうだ。今の時間は? 僕らが眠ってからの」
「7年だな。ミアリーは17歳だ」
「そいつの就職は?」
「冒険者だ。筋はいいぞ」
「OK。ラバーネラル、続きを」
ハンティングの女性は頷き、話を続けた。
「はい。我々は国王の命を受けて、2人を追っています。仕事の得意様で多大なる感謝をしていますので。なお、2人には反帝国派が後ろ盾になっていて、援護しています」
その言葉に、吹き出すウォンとピーコ。
「ちょっ、反帝国派って・・・・どうしてあいつらが協力しているんだ!?」
「ただの駆け落ちだよね? 何でそこまでしなくても・・・・」
嫌な予感が段々はっきりしてくる。
「それが・・・・駆け落ちの2人の名前が、エルフォーセ・フランスクト姫様と下半身が麻痺したエランと判っていまして・・・・あ、姫様の名前、知りませんでしたね。
嵐の子と言った方が分かりやすいですね」
しばらく沈黙の間の後、
「おいいいいいいいいいいいい!!!!!?????」
「えええええええええええええええええええええ!?」
狂ったように叫んだ。
「いやいやいやいやありえないありえない」
「・・・・ありえるかも。だって、あの2人、男装と女装
でしょ。逆に考えたらこれ以上ない組み合わせだよ」
「だとしても、あの嵐の子があっさり受け入れるのか?」
「嵐の子って・・・・女なのに男になりたかったんだよね? どうして駆け落ちを・・・」
「・・・・嵐の子はそうする責任があります。だって、エランの下半身を麻痺させたのは他ならぬ嵐の子ですから・・・・・」
「え」「は?」
「・・・ここまでの内容が現状です。何か質問は?」
「あの・・・話は分かるけど、なんで僕らに? どう考えても関係が無いように見えますが」
「おっしゃる通りです。しかし、これは国王の思惑があるのです。・・・・無駄な願いと判っても国王からの伝言を申し上げます。
「誘拐犯の真犯人役を演じて欲しい」
ということです」
「「・・・・・・・」」
「この騒ぎ、姫様の自己満足だったのでは収まりが尽きません。そこで実は誘拐犯に人質されたとでっあげようと」
「は、はぁ・・・・・・」
「や、話は分かるが・・・・俺達、人形とからくり機械だぞ?」
「だから、私がこの話を買って出たのです。得意な技術で!!」
いきなりテンションが上がるラバーネラル。
あ。凄く・・・・嫌な予感。
「2人には人造機械に女装して(憑いて)頂きます! もう造り終わっていますし、新たな世界へレッツゴーです!」
「却下」×2
「拒否権はありませんよ。私はあなた達の被害者ですから」
「・・・・・」「・・・・・・」
その事を交渉の材料にするのか!?
正直、それを持って来たら、相手に反論できない。
自分は人ならぬ存在なのに、本能に冷や汗がドッと流れて警告する。
本当にどうしよう・・・・・・・・。




