戦場の華
夜間の監視は交代制だ。ウォンとピーコは寝てられないので、監視は男達に任せて、散歩。
「うん。感じるよ。ここに真っずく向かっている」
「よし。ミアリーが退屈しそうだからとっと終わらせたいな。あ、知っているか。借金が船代と賠償金(反帝国派の活動拠点で色々破壊した為)併せて、20万メルだぞ」
「・・・・・・」「・・・・・・」
「え、ええと、ミアリーに言ってないよね? 僕の犯した罪を」
「言うわけ無いだろ。あんなこと、大人にならない限り言わねぇよ」
「そっか。安心したよ」
「それに・・・・その・・・・なんだ、もう許しているし・・・ここは性転換が無いんだ。もし、俺が前世の姿に戻ったら」
「ピーコ。話の途中、ごめん。
ーーーーーーー来た」
直後、複数の叫びとともに、緑色の怪物が暗闇の中から走ってくる。コブリンだ。
しかも、数が多すぎる。100体はある。
「ちっ、早すぎる!」
「僕が止める!ピーコは」
「俺が殺る!お前が行け!!」
「明かり有る所まで後退! 後は暴れて!」
それから走り出した。ソウルラッシュは使わない。ただ駆ける。
テントを見つけると、迷惑になるのを構わず、突っ込み、寝ている人たちを叩き起こした。
*
「ソウルラッシュ Lv1 <<パワーギア>>」
テントまで誘い、魂エネルギーを使う。後先なんて考えてない。敵の姿は薄々見える。俺の体に赤いモヤが包み、腕を振り切る。
高速で突き出した拳からの空気の塊がコブリン達を吹き飛ばす。
「おら! おらっ!! 野郎どもめ、死ねぇえええ!!!」
連続で正拳。次々に当てられて、最初は100体も居たコブリンが今は10に減っている。
しかし、敵の増援が到着。500体追加。さらに、味方のテント、ウェーランドの近くにも出現。いずれにもバカバカしい程の多数のコブリンだった。
俺はその敵軍を見て、悟った。
「・・・・ああ。そうか。死にきたのか。ならば、相応の敬意を表しそう。あのな、ソウルラッシュってのは、使い方によって威力が変化するんだよ」
腕を上に伸ばして、
「Lv2 <<死音>>」
敵だけ効く超音波を出し、一気に200体のコブリンの頭を破裂させる。
さすがにこれは無理だと思ったのか、敵は魔法を詠唱する。だが、その間、背後に回り込む。殺すつもりで蹴り飛ばす。
集団に当たり、あっという間に肉の山が積まれていく。やがて、黒い霧になり消える。
その後、他の武闘派チームが来たのを気づいて、ふうっと一息をつき、意識を闇の底に沈める。
*
「ちい、わらわらと・・・・!」
テントの近くはコブリンと男達でいっぱいだった。
ある者は剣を操り、切り捨てる。
ある者は爆弾玉を無差別に投げて、大爆発を引き起こす。
ある者は自らの体を武器とし、敵陣へ突っ込む命知らず。
それぞれの手法で善戦していた。
「ウォン! ここはいい。女どもの手助けをしてくれ」
「後は何とかなる! あいつらが心配だ」
「頼む。行ってくれ」
そう言ってくれるし、もういいかな。<<瞬光>>でコブリンをしばきながら行くか。
体を白いモヤで包み、男達の視界から消え去る。
*
「何なの、こいつ! 弱いけど、滅茶苦茶弱いけど、数が・・・・!!」
お爺さまから教えて頂いた剣術を振るいながら、一般人を避難させる。突然始まった戦いだったので、可愛いパジャマと細い剣しかない。あーあ。髪も整えていないし、最悪!
「気を抜くな! ここでやられたらどうする!!」
そんな私と正反対に堂々と戦い、喝を送るアリア。うぅ。女なのに、男らしい・・・。服もそんなに安心できるものでもないのに、かっこ良く見える。・・・・ここにあいつが、騎士になれたあいつが居たらどんなに信頼できるものか。
いけない。ここは戦場。余計なことは考えるな。集中! 頬を叩いて、周辺の状況を理解しようとする。
前方は棒使いと短剣使い。私の隣は太めの剣を使うアリア。後ろは宿屋の扉。そこには避難させた一般人が居る。街道に広さはだいたいイケる。右左に道があり、前は家だ。私の役目はここを死守することだ。
コブリンは街道にみっちり埋めている。ざっと150体はある。弱いからいいけど、これは・・・・。体力が持てるのだろうか。
「!」
「ロラ!?」
しまった。油断したせいで、コブリンの攻撃を食らった。ビリビリと服を破られた。・・・・大丈夫。下着は無傷だ。こんな自分が情けない。こんな私を庇ってくれるアリアが自分より惹かれる男が多いだろう。
そう考えると怒りが沸いてきた。
「ふっ・・・。アリア、こんな奴、全部殺しましょう」
「焦るな。ゆっくり行け」
「分かっています。ですが、ここで引いたら、あいつに胸威張って言えませんから!!」
コブリンとの間合いを見極めて、首を切り取る。続いて、2体目も冷静に斬る。
うん。手応え有り。
「よし。私も負けてはいられないな!」
アリアも意気込んで、剣を振るう。その時、突風と轟音と共に、あれだけ居たコブリンが一瞬にして、肉体の欠片となり、黒い霧となって消える。な・・・・なに!? 何が起きているの?
強い風に目が開けて見ることはできなかった。
2度目の突風が来ては過ぎていった。恐る恐る目を開けると、コブリンの姿は無く、呆然と立ち尽くす棒使いと短剣使い、いつの間にか街道の真ん中で座るウォンが居た。
「ここら辺のコブリンは片付けたよ。安心して。ロラとアリアは一般人の心ケアを。僕はピーコの支援へ行ってくるから」
「ちょ・・・・ちょっと待ちなさい!! あんた、何者なの?」
「君は、狐かい?」
「残念。違うよ。僕はウォン。ただの機械犬さ。もっとも前世の記憶は人間だけどね」
機械犬だって? 約150体のコブリンをなぎ倒した者がただの・・・・?
信じれない気持ちでウォンを見つめると、
「あ。やばっ。時間きーーー」
突如に瞳からウォンの生気が失った。
え? 死んだ?
訳が分からず、混乱する私。アリアも同じ。
「心配するな。意識を失っただけだ」
すぅっと現れ、私に声を掛ける、アボロス。相変わらずジャケットが黒一色だ。
見た目はいいんだけど、なんか不気味だ。うまく説明できないけど。
「アボロスは知っているの? この機械犬のこと」
「それだけではない。ミアリーの出生、そしてウォンの罪と罰を知っている」
「いったい何をしたの?」
「それは言えない。ただ、まともに聞けないものであることは断言しておこう。それよりも戦況が変わった。コブリンが消え始めている」
言うだけ言って立ち去るアボロス。奴の言葉を受け入れにくい私は動かないウォンを抱き締めて、この感覚が現実であることを確かめる。それから私にできることを探し、実行した。まずは一般人の心ケアだ。




