嵐の前兆 (後編)
「ちっ、犬か・・・・」
「待て、人形も居る。喋れるようだ。どういう仕組みしているんだ・・・・」
「同じことだ。滅するぞ」
反帝国派の拠点の2階。階段を上って、男達の向こうに扉が見える。男達の泊まる部屋の扉とは綺麗さが違う。あそこがボスか。照明はついており、明るい。廊下はボスの部屋まで一直線だ。男達の部屋はその廊下の脇に当たる。
敵は、狙撃手の女、槍を持った男、二刀流の男。
「狙撃手は後! 槍は僕が。残りは任せた」
「ラシャー!」
話を終わったと同時に狙撃手が撃った。だが、手元が狂ったのか、天井に当たった。ーーそれが戦闘開始の合図だった。
ウォンは爪を引っ込めた手で右スレート。ピーコは腹に空中キック。それぞれ当たり、後退させたが、耐えたのは予想外だ。
敵はここがチャンスと思い、さっきまでの防御姿勢とは違い、猛攻に転じる。
二刀流はピーコを、槍を持った男はウォンを狙う。狙撃手は攻撃支援だ。
「そらそら、どうした!?」
「くっ・・・・・」
一撃から二撃目へ繋がる流れるような剣術。脚は移動を支えるものであり、蹴りを使わないが、扱い方を知っている。二刀流の男、実戦をやっているな・・・?
分析をしながらかわし続けると、いつの間にか壁まで追い詰められている。不気味な笑い、決め手の攻撃を繰り出す二刀流の男。
だが、辛うじて僕は避けた。剣は壁に刺さり、抜けなくなってしまう。
もう一つの剣を破壊する為、構えると何かが目前で通り過ぎた。銃弾だ。
二刀流の男が刺さった剣を捨て、残り一本で勝負を挑む。加えて、銃弾が僕を狙う。
さっきよりは楽になったものの、またまだ心苦しい。
だが、長引くと思われた戦闘は突然終わりを迎えた。
ピーコが乱入したのだ。振った拳は剣にヒットし、使えなくなるようにした。
「おらっ!」
「な!?」
続いてこの出来事に錯乱した狙撃手に腹に右スレート。あっと言う間に2人を戦闘不能にした。
「どうやって、槍に勝ったの?」
「んーー・・・・。なんか、力を貯めて、お互いにぶつかり合ったら、勝ったみたいな・・・・」
う~ん。ピーコらしいというか・・・。
「まぁいい。倒したんだ。行くぞ」
「そうだね。彼らには悪いけど」
最奥の部屋を開けると、そこには腰に剣を納めた女性と女の子(?)がいた。
「おい。エランっつうのは誰だ?}
すると、女の子(?)がびくんと体を震えた。
女性が前に出て、きりっと凛々しい顔で静かに言う。
「私の美しい男の子、恋人に虐めないでください」
それを聞いて一瞬、呆然となり、叫ぶ。
「テメェ、男だったのかよっ!?」
「なんとまぁ、奇妙な組み合わせだね」
「それとも、エラン様に用に有るのですか?」
「その前に聞いておきたいことがある。エラン・・・・さんが行っている学校の名前は?」
この答えは嵐の子から聞いている。
「? ・・・知りませんが、これは関係ないでしょう」
「いいや、関係あるね。場合によっては催眠の可能性もあるから」
「別の質問するぞ。女の子はどこに住んでいる? まさか、恋人なのに、知らないとか言わないよな?」
「・・・っ・・・・」
今度こそ、動揺する女性、いや反帝国派のリーダー格の人。
「アリア! こいつらの言うことなど聞くな! 全部嘘に決まっている! きっと私を殺しに来ているんだ。さっさとやれ!」
エランの言葉に我に還った女性、アリアが剣を抜き、僕らに振るう。すぐに両手で受け止める。白刃取りだ。そんで、ピーコは腹に空中ダブルキック。アリアは吹っ飛ばされて、気絶。
「僕は催眠プログラムを破壊するから、ピーコは説教」
「OK」
アリアに近づき、閉じた両目を開け、じっと見る。
「「ソウルラッシュ」、Lv2 <<幻夢>>」
幻夢。それは人が仕掛ける幻覚を魂エネルギーでさらに昇華させたものだ。時は現実と見間違う程の威力を発揮し、時はそれを停止、リセットすることができる。代償は数日間の意識気絶。しかも目覚ましがいつになるのか分からない。最悪、半年は寝ることになる。
自分の周りに白いモヤが発生し、それがアリアに移り、消えていく。
体をびくんと痙攣し、直ぐに寝息が小さく響く。・・・成功したのを見届けて、意識を手離した。
*
よーーーーーうやく、説教タイムが来ましたぜ、ヘイ!
フッフフフフ、子犬のように怯えている、エランさんよ。可愛いですぜ。いっそ、ムチでしばいてやろうか。さあて、どんな叱り方をしますかねぇ~~~~~~?
小手調べにステップアップして追い詰めてやろう。
「や、やめろ! 寄ってくるな! い、痛い目に合いたいか!?」
「ほほう、イタイ目と来ましたか。それはそれはどんなものか、じっっっっくりと聞かせて貰いたいですな。はっはははーーーーーっははは!!!」
おっと、いかんいかん。テンションが上がりすぎて笑いが止まらん。
「ば、化け物ーーーーーーー!!!! お、お前なんかこうやるっ!」
と、さっきまで子犬のように怯えたいた女の子(?)は床に何か魔法陣をさらさらと書いて、意味不の呪文を唱えた。すると、なんと! 魔法陣から頭とお尻に角が付いて羽が生えた、いかにもな小悪魔が現れてきた!
おっ? 増援登場? いいねーー。敵が増えるってのは! しばく回数が増えるってもんだぜ!!!
「小悪魔インプ様! どうか助けて下さい!」
って、お前が救援を求めるんかい。
ちぇっ、つまんねっ。
「ギィ? ギギィー」
その小悪魔はフワフワと浮かべて、また呪文。
そして、新たな2つの魔法陣からコプリン2体を出す。
そいつは叫び声を上げながら石棒を振り回す。
そして突進してきた。
よし、落ち着いて良く見て・・・・・。近づいたコブリンの腕を掴んで片方のコプリンへ投げる。うん。黒い霧になって消えたな。
「ギィ!!!!!????」
何故か驚く小悪魔。この隙に大きくシャンプする。
小悪魔が何やら呟いて腕を突き出す。
視界が揺らぐ感覚はあるが、意識は失ってない。おそらく催眠の魔法らしいが、悪いね、耐性あるんで。
そんで、小悪魔にカカト落とし。
あっけなく地面にめり込む小悪魔インプ。
立ち尽くす&口が開けたままのエラン。俺は怪しい光を目に宿しながら不気味な笑いで近づく。
「つ~~~~~ぎ~~~~~~~は~~~~~
お前だああああああああああああああああああ!!」
「ぎゃぁあーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
*
Q 催眠のやり方は誰から教えて貰ったのか?
A 小悪魔インプ
Q どうして彼女アリアを選んだのか?
A いつも行動が凛々しいなのでかっこいいと思ったから。反帝国派なんで考えてない。
Q 嵐の子は知っているか? 怪我で入院していることもか?
A はい。私が誰にも言うなって命令したから、聞かれたらマズイと思い、行動したんだと思います。そこらはアリアに頼みましょう。
*
三日後。
フィラリアの病院の玄関。
「ようやく、歩ける・・・・」
包帯を巻いた足を支えるため、木棒を持ち、ため息を吐く嵐の子。
「おう。出てきたか」
「こんにちは」
そこにピーコとエランが現れた。退院お祝いにと掛けてきたのだ。大半はエランの謝罪の為であるが。
「ピーコと言ったな? 聞いたぞ。問題児の伝説を知っているだそうだな?」
「ああ。まぁ、お前さんとは違うがな。何しろ、お金持ちでいつも護衛から逃げ回っている人だからな」
「ん? 同じだぞ?」
「・・・・・・・は?」
「えっ・・・いや、俺、帝国の王族なんだよ。貴族は嘘だけど、大体合っているだろ。確か、王位継承権第4位。ただ、怒りを買っている立場にあるからあんまり名乗りたくないけどな。あ、本名は秘密だ」
「・・・・・エラン。知っていたのか?」
「薄々嫌な予感していた。でもまさか、王族とは思わなかった。誰にも」
「これが俺だからな!」
何かっこつけているんだテメェは。
嵐の子が何かに気づいた。青髪の女性がやってきたのだ。
かなりスタイルがいい。反帝国派のリーダー、アリアとは真逆の雰囲気を漂う。クーインセル。帝国派のリーダー格の人にして、嵐の子の護衛を勤める人だ。
「嵐の子様、迎えに参りました」
「おう。ご苦労さん。ピーコ、じゃあな」
軽く手を振るってから、護衛の誘導に従い、歩いていく嵐の子。
「!」
向こうに人影がいる。アリアと反帝国派の人だ。2人は頭を下げたまま、何も語ろうとはしなかった。
静かに通り過ぎる嵐の子。
喧嘩などは起きず、残されたのはピーコとエランとアリア達だけだった。
重すぎる沈黙に耐えきれず、逃げ出したエランを捕まえて、場を盛り上げようと無理矢理アリア達を酒場へ連れていく。
それらを見下ろす悪魔アボロスの存在に気づかずに。
「・・・・あの2人は俺の計画には邪魔だな。あれを出すか」




