さつきパート
「苺姫、大丈夫ですか!」
遠くからリッカの声が響く。少し安心した花屋が、ふざけて
『こ、この声は!』
と刑事ドラマに出てきそうな犯人のようなポーズを決めた。
「花屋さん元気ですね……」
呆れるリッカの肩からダラスが顔を覗かせる。
「やっぱり迷子か……さすが苺」
しかし皐はそれよりも気になるものがあった。
「リッカさん……なんちゅう格好してるんですか……。完全女の子じゃないですか。何してたんです? 全く、萌が幻滅するじゃないか」
リッカはしばし硬直した後、
「そ、そんなのはどうでもいいじゃないかハハハ」
誤魔化せていなかったが、萌が
「皐、今はいいでしょう、緊急事態よ」
とフォローする。リッカはふう、と汗をぬぐった。
「何か手がかりはあるんですか」
メイド3の中で唯一冷静になった優華がリッカに尋ねる。
「ああ、それなんだが、ひとまずこの間のように地下には埋まっていない。安心しろ」
それを聞いて、メイド3が安堵のため息をもらした。
ちなみに『この間』って? と思っている方には
『せーーっつめいしよーー!』
今回は少し出番多めな彼女らに説明してもらおう。
「この間、とは風船犬キミドリの書いた苺姫一作目のことである!」
「あの時苺姫は地下に埋まっていたため、メイド3は畏怖の念を抱いたのであるっ!」
皐と萌はビシッと指を指してウインクを飛ばす。
「あの時は本当にびっくりしました。私たちは苺星人と地球人のハーフですから光合成は出来ないのです」
聖華がそう言ったところで林檎が
「話がずれている」
ぼそりと呟いた。
「それもそうですね、林檎様。さて、さっき言っていたことの根拠ですが、今はもう夜です。植物は夜に光合成が出来ません。それと同じで苺星人もまた夜は光合成が出来ないのです。土にもぐったら最後、窒息死します」
『ほぉーーー!』
林檎を除く全ての人が感嘆の声をあげる。そういえば林檎も純血の苺星人だから光合成が出来るはずなのだが、リッカはまだ見たことがなかった。
「ではメイド3は屋台の捜索、特に甘いものを中心に探してくれ! 俺は一応その他食い物の屋台を探す。林檎様は迷子センターに行ってください。花屋の二人は屋台の裏など、地味なところで溝にはまったりしていないか捜索をお願いします。ダラスと天音は逝ってよsじゃなかったここで待機!」
『はい!』
リッカが何かを言いかけたが、綺麗にハモった声でかき消された。ダラスと天音だけがニヤニヤしていた。
一分後、狂気の速さで広い会場を探した全員が元の位置に戻っていた。そして、『いなかった……』
これまた狂気のシンクロ率で全員が呟く。ダラスと天音の表情がおかしいのにリッカはうすうす気づいていたが、いつものことなので無視していた。
……と、そこに。
「あれ~? みんないたぁー!」
『苺(様)!?』
全員が目をむく中、KYとして有名な苺は
「あ、そーだリッカぁーあのねあのね! 知らない人がわたあめくれたのーえへへ」
「え!?」
「えっと、あのねキツネさんのおめんかぶったひとだったのー」
『天音!?』
全員で天音の方を振り返った。天音はコスプレ会場ではキツネのお面をかぶっていたのである。
「え? ああ、いやぁみんなが探してる間にここに来たからさ」
ピキッと何かが切れる音が聞こえたのはきっとリッカだけではあるまい。しかしリッカが全員の真意を代弁した。
「もっとはよ言えやぁぁぁぁぁぁぁ!」
『もう、びっくりしたよぉー』
リッカがキレて炎髪灼眼モードになったあと、皐と萌が呟いた。
「まあ、苺姫が無事で安心したな」
もう普通の髪の色に戻ったリッカが笑った。
「でもさ、俺としては三日目までいたかったぜ。天音もそういうだろうな」
「ダラスも殴られたいのか」
天音はダラスの傍らでのびている。それを再確認したダラスは半笑いで手を振った。
「まあ、紆余曲折あったが、祭りは楽しいものだよな」
リンゴ飴を食べながら林檎が言う。
……リンゴ飴? 林檎?
目ざとく気づいたダラスが騒ぎ出す。
「うーわ! お前まで共食いかよ! 妹に偉そうに言えないな! とっもぐい! とっもぐい! しかもお前スマホはアップル社だろ!」
しかし当の林檎はしごく真面目に、
「ああ、これか。えーっと……これは別に共食いじゃないんだからね! 林檎の形をした栄養剤なんだからね! ……でいいのか?」
「えええええええええええ!?」
END
※コラボ小説です。