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サボテン  作者: 柘植護人
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一章

続いてぶっとんでいます。ご注意を。

一章:手繋ぎ

あんまり考えたくなかった。自分が選んだ道だったとしても。


「何やってんのサ?」


稽古を終え帰ろうと靴を履いた時には、外はもう夕方だった。道場の玄関の明かりはまだ点いていないらしく、近所の明かりだけで薄暗かった。そしてそんな所で自分だけが“赤”と呼んでいる煙草を吹かしつつ近所の野良猫と仲良く遊んでいる怪しい奴を見つけた。その怪しい奴は黒いロングコートに顎鬚を生やしていて妙に胡散臭かった。いや、その男の言動全てが胡散臭いのだが、その時ばかりは、普段のそれ以上の胡散臭さを醸し出していた。

「お帰り、めーちゃん」

そう言うと胡散臭い男「津田 歳三」は野良猫に別れを告げて立ち上がった。

「オッサン、組の人みたいだぞ?」

と本来、お帰りと言われれば返す筈の言葉を無視して私は言った。「津田 歳三」は、そぉ?と自分を確認してみたが何も収穫が無かったらしく

「帰ろっか?」

と私に煙草を持っていない方の手―右手―を差し出した。少し考えやっぱり背中に背負っていた木刀を下ろすのをやめた。そして木刀の代わりに自分の手を「津田 歳三」の手に乗せる。「津田 歳三」は意外そうに目を見開いたが、直ぐに何やら嬉しそうに歩き出した。私もそれに従って歩き出した。だが「津田 歳三」の歩みは遅かった。「津田 歳三」と私は身長が30cm以上違う。なのに歩みは遅い。そしてそれは普段私が歩く時のペースだった事に気付いた。気付いてはみたものの、何と言えば良いのか見つからなかったので放っておく事にした。歩きながら「津田 歳三」は夕飯の話をして来た。その時の話題は別に何でも良かったのだろう。お互いにお互いの全てを把握するつもりはないし、まして家族でも何でもない。「津田 歳三」は何故か私に取って、迷惑な存在ではあるが消えて貰いたい存在ではなかった。それがあるからか私はこの男を横に置けるのか。

「めーちゃん、今現在の冷蔵庫の中身知ってる?」

そう行き成り聞かれて、記憶の片隅にある冷蔵庫の中身を思い浮かべる。そして

「知らん」

と一言返す。それもその筈。この男が来てからというもの、炊事洗濯などの全ての家事を任せっきりなのだ。私が冷蔵庫を開けるなど、何かを飲む食う以外にある訳がない。何処から金が沸くのかは企業秘密の為思考をここで中断する必要がある。

「何も無いのか?」

「無いねぇ」

「津田 歳三」は飄々とした態度で答える。私は時間を右手首にある腕時計で確認すると

「イッタリーでも食うかな・・・」

と独り言を言った。「津田 歳三」は、お勧めあるかい?と横を歩く私を楽しそうに見下ろした。私は至極当然の様に

「オッサン、アンタが作るのだよ」

意地悪く笑ってやった。

その後「津田 歳三」と共に近所のスーパーへ向かう途中で、通りに咲いている桜の木を見た。「津田 歳三」は

「今度、一緒に見ようね」

と、再び何やら嬉しそうに笑った。


まだまだ続きます。結構続きますね。

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