白猫
黒い粒子が、春の光の中で霧のようにほどけていく。
《撃破確認》
《経験値を獲得しました》
《レベルが13に上昇しました》
「……はあっ」
息が荒い。
けど、まだ終わりじゃない。
校庭の黒い穴――さっきよりも大きくなっている。
《第二塔・外縁ゲート 不安定化》
「魔物?」
ずるり、と。
さっきの個体より二回りは大きい影が這い出してくる。
《侵入個体 第二塔 外縁種(上位)》
「うそでしょ……!」
ノクスが低く唸る。
「あれは核が二つある。正面からは硬い」
「どうするの!?」
「時間を稼げ。クロを呼べ」
「……え?」
いるじゃん目の前に。何言ってるの?
その瞬間。
校舎の三階の窓から、白い影がふわりと跳んだ。
「にゃぁ。」
柔らかく着地。
白猫――クロ?。
でも、瞳が違う。
金色に光っている。
《守護獣リンク:副位覚醒》
「クロ……?」
クロはゆっくりと歩き、魔物を見上げる。
尻尾が、二股に分かれた。
「なっ……!?」
ノクスが笑う。
「隠していたな、白き獣」
「うるさいの」
――声が、頭に直接響く。
クロの声だ。
いつもののんびりした調子じゃない。
澄んでいて、強い。
「あおい、風で視界を奪って」
「わかった!」
「嵐魔法!」
《嵐魔法 旋風陣》
砂と空気が渦を巻く。
魔物の視界が遮られる。
その瞬間。
クロの体が光に包まれた。
白い毛並みが、銀の鎧のように輝く。
小さな体のまま。
けれど、圧倒的な魔力。
《白獣術:光裂爪》
一閃。
魔物の体に、十字の光が走る。
ぐらり、と揺れる巨体。
「まだ核が!」
ノクスが影から跳ぶ。
《闇拘束 重圧》
影が絡みつき、魔物を地面に押し付ける。
「あおい、今! 胸の奥、左!」
魔力が胸で震える。
「魔力圧縮――最大!」
体が熱い。
でも、怖くない。
白猫クロとノクスがいる。
「穿てぇぇぇ!!」
白と黒の光が混ざる。
轟音。
魔物の胸を貫いた。
一拍の静寂。
そして――
黒い粒子となって、完全に消滅した。




