裏山
翌朝。
ほとんど寝ていないのに、体は軽い。
「MPが増えると回復力も上がるのかも……?」
ノクス――今はいつものクロの姿――が、玄関であくびをする。
「無理はするな。器が広がったばかりだ」
「わかってるよ」
朝からスマホのニュースは、ずっと“第二塔”の話題だった。
母が心配して休校にならないの?とか聞いてくるけど、学校からは連絡がないようだ。
クロはいつものように父の膝の上で寝ている。
両親ともクロにデレデレだから。
「いってきます」
ぼくの学校の裏山。
自衛隊の旗や車報道陣、野次馬達。
この町にこんなに人いたんだってくらい。
裏山って言っても頂上まで片道三十分以上かかる。
教室に入ると、みんなざわざわしていた。
「塔見えないね、学校の近くだって!」
「今日、早く帰されるかも!」
真が駆け寄ってくる。
「なあ、あおい。見たか?」
「うん」
こっそり鑑定。
《ステータスオープン》
田中真
12歳
レベル 5
HP 105
MP 40
STR 130
LUK 40
スキル
剣術操作(Lv2)
身体強化(Lv2)
「上がってる」
「え?」
「いや、なんでもない」
どうやら鍛えてるらしい。
ホームルーム中。
校庭の向こう、裏山の方角がかすかに黒く揺らいでいるのが見えた。
先生の声が震える。
「今日は午前授業で下校です。皆んなも知ってる通りダンジョンが裏山にできました。自衛隊が調査中なので寄り道せず、まっすぐ帰ること」
先生が宿題のプリントを配っていると。
ざわっ。
その瞬間。
――ドンッ!!
窓ガラスが揺れる。
悲鳴。
校庭に、黒い穴が開いていた。
そこから、スライムより大きい魔物が這い出てくる。
帰れないようだ。
《侵入個体:第二塔・外縁種》
「うそ……もう来たの!?」
先生が叫ぶ。
「全員、廊下に――」
魔物はフェンスを溶かしながら校舎へ向かってくる。
ノクスの声が頭に響く。
(あおい、行くぞ)
(でも、みんなが……)
(だからだ)
ぼくは立ち上がる。
「トイレ行ってきます!」
「楠!」
廊下を走る。
人気のない階段を下りる。
ステータス
楠あおい
12歳
レベル 12
HP 380
MP 920
STR 210
LUK 65
称号
塔の踏破者(第一階層)
塔の契約者
スキル
魔核吸収(Lv2)
魔力操作(Lv3)
鑑定(Lv2)
嵐魔法(Lv1)
魔力圧縮(Lv2)
固有リンク
守護獣契約
「嵐魔法、使うよ」
校庭に出ると、魔物はもう昇降口を壊しかけていた。
「おおおおっ!!」
突風を発生させる。
魔物がひるむ。
《嵐魔法:風圧弾》
空気の塊をぶつける。
ドンッ!!
魔物が吹き飛ぶ。
でも――硬い。
ノクスが影から飛び出す。
《闇拘束》
魔物の動きが止まる。
「今だ!」
ぼくは魔力を圧縮。
胸の中心に狙いを定める。
「穿て!!」
白い閃光。
魔物は黒い粒子になって消えた。




