第五話、知識の光、リナ登場!子供たちと市場を救え
集落の市場は朝から賑わっていた。魔法水車のおかげで畑の水やりが楽になり、穀物の取引が増えている。ユウト、ミリア、サキ、タケル、カイトは広場の木造テント下で、次の計画を話し合っていた。テントには「アルテア商会」と書かれた看板が掲げられている。
ユウト『水車で農業が安定した。次は市場をもっとデカくしたいな。交易ルートを広げるとか』
タケル『おう、任せな!俺が隣の集落とバンバン交渉してくるぜ!』
サキ『ハァ、ゴリラが暴走すんなよ。帳簿見ると、資金はまだカツカツだぞ』
ゴードン『フン、交易だの何だの、まず市場の道具を強化しろ。秤や荷車がボロいぞ』
カイト『…俺、秤の魔法具ならもっと改良できる…かも』
ミリア『みんなノリノリだね!ユウト、商会の名前も決まったし、いい感じ!』
ユウトは頷きつつ、集落の外れに目をやる。そこには、ぼんやりと空を見上げる女性がいた。30歳くらい、長い黒髪に地味なローブ。手に持った本が目を引く。ユウトの紋章が光り、彼女を見つめると情報が流れ込む。
*名前:リナ。長所:知識豊富、教え上手。短所:自己評価低い、過去の失敗を引きずる。*
ユウトが近づく。
ユウト『お、リナさん?何してるんだ?』
リナ『…え、誰?私、ただの通りすがり…邪魔ならどくよ…』
彼女は目をそらし、本を胸に抱える。ユウトは「教え上手」を思い出す。
ユウト『その本、なんだ?なんか、頭よさそうな雰囲気だな』
リナ『…ただの古い農業の本。興味ないでしょ、こんなの…』
ミリアが横から覗き込む。
ミリア『うわ、めっちゃ細かい字!リナさん、こんなの読めるの?すごい!』
リナ『…別に。昔、教師やってたけど、失敗して…もう何の役にも立たないよ』
ユウトはピンとくる。集落の子供たちが水車の仕組みを聞いてくるが、誰もちゃんと教えられていない。
ユウト『リナさん、試しに子供たちに農業や水車の仕組み、教えてみねえ?お前、教えんのうまそうだ』
リナ『…は?私が?無理だよ…前に教え子に笑われて…』
サキ『ハァ?笑われたくらいでビビってんの?だったら、やり直せよ』
リナがムッとする。
リナ『…簡単に言うけど、失敗の怖さ、知らないでしょ』
ユウト『知ってるさ。俺もブラック企業でボロボロだった。でも、ここならやり直せる。試してみねえ?』
リナは本を握りしめ、迷う。
リナ『…一回だけ、だよ。失敗したら、責任取ってよね』
昼、広場に子供たちが集まる。リナが緊張しながら農業の本を開き、水車の仕組みを説明。最初はモゴモゴしていたが、子供の「水車って魔法なの?」という質問に答えるうち、目が輝き出す。
リナ『…魔法陣が回転を助けてるの。ほら、この図みたいに、川の力を増幅して…』
子供『すげえ!リナ先生、もっと教えて!』
リナがハッとする。「先生」と呼ばれたのは何年ぶりか。ユウトは紋章の頭痛を感じつつ、ニヤリ。
ユウト『ほらな、リナ。教え上手だろ』
リナ『…子供たち、ちゃんと聞いてくれて…私、こんなの、できるんだ…』
ミリア『リナさん、めっちゃ輝いてた!子供たち、目をキラキラさせてたよ!』
夕方、問題発生。タケルが隣の集落から持ち帰った交易の話が、条件が厳しすぎる。
タケル『チッ、向こうの奴、10シルバーでしか買わねえってよ。赤字だぜ!』
サキ『だからゴリラに任せるなって言ったろ!帳簿計算しろよ!』
リナが本を手に、口を挟む。
リナ『…あの、隣の集落、土壌が悪いから穀物少ないんだよね。この本に、土を良くする方法が…』
ユウト『お、リナ、ナイス!その知識、教えに行ってみねえ?』
リナ『…え、私が?でも…やってみる』
リナが隣の集落へ。彼女の知識で土壌改良の方法を教え、交易条件が8シルバーに改善。タケルが交渉で締める。
タケル『へっ、リナ、やるじゃねえか!お前のおかげで儲けが出るぜ!』
リナ『…私、役に立ったんだ…こんなの、初めて…』
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夜、湖畔で6人が火を囲む。ミリアが魔法のキノコでスープを作る。
ミリア『リナさん、食べて!このキノコ、ふわっとした味だよ!』
リナ『…ありがとう。こんな美味しいの、地球じゃ食べられなかった…』
ゴードン『フン、ガキが増えたな。まあ、賑やかで悪くねえ』
サキ『…ったく、静かに食えよ、ゴリラとジジイ』
タケル『んだと、赤毛!』
カイト『…リナさん、子供たちに教えてて、かっこよかった…』
ユウトはスープを飲みながら、集落の灯りを見る。
ユウト『リナ、お前の知識、すげえよ。商会で、子供や住民に色々教えてくれねえ?』
リナ『…うん、やってみる。私、ここでなら、失敗しても前に進める気がする』
遠くで、エリスの声が響く。
エリス『ふふ、ユウト、仲間が揃ってきたね。次は、市場をこの地域一にしなさい』
ユウトはスープを飲み干し、笑った。
ユウト『地域一の市場か…よし、アルテア商会、もっとデカくするぜ!』