第二話、計算の鬼参上!集落のぼったくりをぶっ潰せ
朝日がエメラルド色の湖に反射し、キラキラと輝く。ユウトとミリアは、昨夜カイトが直した魔法具のランタンを手に、湖畔の集落を歩いていた。小さな木造の家々が並び、住民たちは農作業や交易の準備で忙しそうだ。
ユウト『この世界、めっちゃ平和だな。ブラック企業のストレスが嘘みたいだ』
ミリア『でしょ!でもさ、ユウト、女神の「会社作れ」ってどうするつもり?』
ユウト『んー、カイトみたいな奴を他にも見つけて、才能活かせる仕事を作っていくとか…?』
カイトが後ろをトボトボついてくる。
カイト『…俺、ほんと役に立つのかな…また失敗したら…』
ユウト『お前、昨日バッチリ魔法具直したろ。自信持てよ』
カイトはメガネをクイッと直し、気まずそうに目をそらす。
集落の広場に着くと、騒ぎが耳に入る。女の声が響く。
「ハァ?これでいくら!?ふざけんな、ボッタクリ!」
声の主は、赤い髪をポニーテールにした女性。20代後半、鋭い目つきで商人と睨み合っている。服はボロボロだが、姿勢は堂々としている。
ミリア『うわ、めっちゃ迫力あるね。あの人、誰?』
ユウトの手の甲の紋章が光る。彼女を見つめると、情報が流れ込む。
*名前:サキ。長所:計算能力抜群、責任感強い。短所:口が悪い、他人を信じない。*
ユウト『サキ、か。なんか面白そうな奴だな』
ユウトが近づくと、サキが振り返る。
サキ『なんだ、お前。見ず知らずの奴に話しかけんなよ』
ユウト『いや、なんか揉めてるみたいだからさ。どうした?』
サキ『この商人がよ、穀物の値段を吊り上げやがって!1キロで10シルバーは高すぎだろ!』
商人がムッとする。
商人『これが相場だ!嫌なら買わなくていい!』
ユウトはサキの「計算能力抜群」を思い出す。
ユウト『サキ、ちょっとこの帳簿見てみて。なんか怪しい気がするんだ』
サキ『ハァ?なんで私が…って、帳簿?見せてみろよ』
商人が渋々帳簿を渡す。サキがパラパラめくる。彼女の目が鋭く光る。
サキ『…おい、ここの仕入れ値、1キロ5シルバーじゃねえか。倍で売ってんじゃん、ボッタクリ野郎!』
商人が慌てる。
商人『う、うるさい!素人が口出すな!』
サキ『素人?ふざけんな、元OLだぞ。数字は全部頭に入ってんだよ!』
集落の住民たちが集まり、商人を非難。商人はバツが悪そうに値下げを約束して逃げる。
ミリア『サキ、すっごい!一瞬で帳簿のミス見つけた!』
サキ『…別に。こんなの朝メシ前だよ』
ユウトはニヤリと笑う。
ユウト『サキ、お前、集落の交易の帳簿管理やってみねえ?この村、数字に強い奴が必要だ』
サキ『は!?なんで私が…ってか、お前、なんで私の名前知ってんだ?』
ユウト『まあ、ちょっとした勘だよ。どうだ、仕事受けるか?』
サキは疑うようにユウトを見るが、ため息をつく。
サキ『…まあ、暇だし、やってやってもいいけど。失敗したら責任取れよ』
カイトが小さく呟く。
カイト『…サキさん、めっちゃ強そう…』
ユウトは紋章を使った頭痛を感じながら、笑う。
ユウト『よし、決まりだ。サキ、よろしくな!』
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夜、湖畔で4人が火を囲む。ミリアが魔法の果実で作ったデザートを振る舞う。
ミリア『はい、サキも食べて!この果実、甘くてスッキリするよ!』
サキ『…ふん、悪くねえな。地球じゃこんなの食えなかった』
カイト『…サキさん、地球でも働いてたんですか?』
サキ『ああ、ブラック企業でな。毎日残業、給料安い、上司はゴミ。地獄だったよ』
ユウト『…俺もだ。ミリアも。カイトも、なんか似たようなもんだろ?』
カイト『…うん。俺、引きこもってたけど…親に「役立たず」って…』
サキが果実を噛みながら、ポツリと言う。
サキ『…ここ、変な奴らばっかだな。でも、嫌いじゃねえよ』
ユウトは湖を見ながら考える。この世界なら、サキみたいな奴も輝ける。
ユウト『サキ、帳簿管理頼んだぞ。次は、もっとデカいことやろうな』
サキ『ハァ?調子乗んなよ。でも…まあ、やってやるか』
遠くで、エリスの笑い声が響く。
エリス『ふふ、ユウト、順調ね。次はもっと仲間を増やしなさい。この集落、君たちの手で変えられるよ』
ユウトは果実を頬張り、ニヤッと笑った。
ユウト『次か…よし、もっとでかくいくぜ!』