かたつむりの恩返し
「あー……今日も最悪だった……」
俺の名前は、牧かんた。二十歳で大学生。
小さなカフェで、アルバイトをしている。
だが、そこで働いている先輩が最悪なのだ。
先輩は女性なのだが、自分のミスを、いつも俺のせいにする。
「ちょっと牧君、私これやっといてって言ったよね?」
「すっ、すいません……でも、それ先輩が頼まれたんじゃ……」
「なに、文句あるわけ?」
そんなやり取りが、毎日続いた。
雨である今日も、俺は先輩にネチネチ文句を言われたのだ。
「はぁー、もうあのカフェやめようかな……」
でも、時給はいいし、先輩以外は皆いい人だしなぁ。
俺がとぼとぼ歩いていると、足元でなにかが動いていた。
「うわっ、かたつむり?!」
それは、かたつむりだった。
かたつむりは周りを気にせず、堂々と歩いている。
「このままだと、踏まれるぞ。ちょっと失礼して……」
俺は、できるだけ力を入れず、かたつむりを持ち上げる。
そして、近くにあったあじさいの葉に乗せてあげた。
「ここなら、踏まれることもないだろ。じゃぁな」
かたつむりに手を振り、俺は足早に家に帰った。
家に着いた俺は、疲れていたためソファーに横になった。
しかし、なんだか寝つけなかった。
「今日はいつもより、ジトジトするなぁ」
すると、大きな影が見えたのだ。
「なっ、なんだ?」
振り向くと、巨大なかたつむりがいた。
それは、どんどん俺の方に近づいてくる。
「ひぃっ、こっち来るな!」
だが、俺の声は聞こえないらしく、上にのしかかってきた。
ヌルヌルとした感じが、とても気持ち悪い。
「ぎゃぁーっ!」
その瞬間、俺は目を覚ました。
すべて、夢だったのである。
「はぁー、助かった……」
しかし、寝る前に比べて、体が楽になっていたのだ。
「あれ、なんだか体が軽い?」
俺は首を傾げたが、汗がひどかったため、風呂に向かう。
次の日、カフェに行くと、あの先輩はいなかった。
他のスタッフに聞くと、どうやら結婚するのでやめたとのことだ。
文句を言う先輩がいなくなって、その日の俺は上機嫌だった。
アルバイトが終わって、俺はスキップしながら帰った。
「今日はなんだか、気分がいいなぁ!」
だが、急に雨が降ってきた。
でも、俺には関係ない。
そして、あじさいの葉にかたつむりを見つける。
俺は微笑み、雨の中を小走りで帰ることにした。
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