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時を越えて  作者: pj.masta
7/38

007

 和真は息を呑んだ。


 黒い鎧を纏った男の気配は異様だった。まるでこの闇夜に溶け込むかのように静かに佇みながらも、確かな殺気を放っている。


「……誰だ?」


 和真が問いかける。しかし、男は答えず、ただ剣をゆっくりと構えた。


「ヤバいな……」


 蓮が低く呟く。彼の視線は鋭く、まるで相手の隙を伺うようだった。


「和真くん、後ろに下がって」


 玲奈が小声で囁く。彼女の表情には緊張が滲んでいるが、どこか覚悟を決めたような目をしていた。


「逃げる道はあるのか?」


 和真が後退しながら尋ねると、玲奈は静かに首を横に振った。


「この男を突破しなければ、先へは進めない」


「……そういうことか」


 和真の拳が自然と握り締められる。


 男は一歩、また一歩と近づいてくる。その動きには迷いがなく、まるで彼らの動きを全て見透かしているかのようだった。


「来るぞ!」


 蓮が叫んだ瞬間、男が地を蹴った。


 閃光のような剣の一撃が空を裂く。


 和真は反射的に身を伏せた。鋭い風圧が肌を撫で、背後の柱が真っ二つに裂ける。


「ちっ……!」


 蓮が瞬時に動き、男の剣を受け止める。しかし、その力の強さに蓮は後退させられた。


「このままじゃ、押し負ける……!」


 玲奈が急ぎ和真の腕を引く。


「和真くん、こっち!」


 彼女が示したのは庭園の奥に続く細い抜け道だった。しかし、黒鎧の男はそれを見逃すはずもなく、すぐに蓮へと追撃を仕掛ける。


「くそっ……!」


 蓮はなんとか攻撃を受け流すが、一瞬の隙を突かれ、肩を斬られた。鮮血が闇夜に飛び散る。


「蓮!」


「大丈夫だ……こいつ、ただの武士じゃない。動きが異常だ……!」


 蓮が苦しげに言う。


 玲奈は僅かに表情を強張らせた。


「……もしかして、この男も私たちと同じ異邦人かもしれない」


「なに……?」


 和真は驚愕した。


 まさか、この男も転移者なのか? だとすれば、なぜ玲奈や蓮とは違い、敵として立ちはだかるのか——。


「玲奈、お前、こいつの正体を知ってるのか?」


「分からない……でも、この世界にいる異邦人が私たちだけじゃないのなら、可能性はある」


「だが……!」


 和真が言葉を続けようとしたその瞬間、黒鎧の男が再び構えた。


「この世界の理を乱す者は、ここで消えろ」


 低く響く声が、静かな夜に広がる。


 男の剣が、再び閃いた——。


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