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時を越えて  作者: pj.masta
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004

 和真の胸の奥に、不安と期待が入り混じる。


「玲奈、俺たち以外の人間がいるかもしれないんだよな……?」


「ええ。でも、慎重に行動しなきゃいけないわ。その人が味方かどうか分からない」


 玲奈は真剣な表情で言った。和真もそれに頷く。自分たちが転移した理由も分からない今、無闇に行動するのは危険だ。


「……でも、話を聞くくらいはできるはずだ」


「そうね。地下牢へ行きましょう」


 玲奈は十二単の袖を翻し、和真に手招きした。


---


 地下牢へと続く道は暗く、冷たい空気が漂っていた。廊下に並ぶ松明の炎がかすかに揺れ、足音だけが響く。


「地下牢に入るのは問題ないのか?」


「私は藤原家の姫よ。疑問を持たれない理由くらい、いくらでも作れるわ」


 玲奈の落ち着いた態度に、和真は改めて彼女の変化を感じる。かつての彼女は、こんなに堂々とした性格だっただろうか。


「着いたわ」


 玲奈が立ち止まり、牢の扉を開ける。中は薄暗く、鎖の擦れる音が響いていた。


 その中心に、ぼろぼろの衣服をまとった男が座っていた。


「……誰だ?」


 その声に、和真は息をのむ。


 確かに、その口調には違和感があった。古めかしい言葉ではなく、どこか聞き覚えのある響き——現代の日本語だった。


 玲奈が静かに口を開く。


「あなた、もしかして……異邦の方ですか?」


 男はしばらく玲奈を見つめた後、低く笑った。


「……まさか、こんなところで、同郷の人間に会うとはな」


「やっぱり……!」


 和真が思わず前に出ると、男は鋭い目を向けた。


「お前も、転移してきたのか?」


 和真は強く頷く。


「そうだ。お前は一体、何者なんだ?」


 男はしばらく沈黙した後、静かに口を開いた。


「俺は……天野蓮あまの れん。三年前、この世界に来た人間だ」


「三年前……?」


 和真の胸が高鳴る。


 この世界に飛ばされたのは、自分たちだけではなかった。


 そして——彼は、帰る方法を知っているのだろうか?


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