037
三人は「凍える時の祭壇」を目指し、再び歩みを進めた。
雪原の中を進む彼らの視界は、相変わらず吹雪に覆われていた。しかし、この旅が終わりに近づいているという確信が、彼らを前へと押し出していた。
「この鍵が示す模様によると、祭壇はこの先にあるはずよ」
玲奈が慎重に鍵を見つめながら言った。
「祭壇というからには、何かの儀式を行う場所かもしれないな」
蓮が剣を握り直しながら答える。
「どんな試練が待っているにせよ、これを越えればすべてが終わる」
和真が懐中時計を握りしめ、前を見据えた。
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険しい道のりを進んだ末、彼らの目の前に「凍える時の祭壇」が姿を現した。
それは巨大な氷の円形劇場のような構造をしており、中央には石造りの台座があり、その上に古代文字が刻まれた碑が立っていた。碑は青白い光を放ち、冷たさの中にどこか神聖な雰囲気を漂わせていた。
「これが……凍える時の祭壇」
和真が驚きの声を漏らした。
「とても古い場所みたいね。きっとここが、私たちの旅の終点なのよ」
玲奈が鍵を手にしながら言った。
「でも、その前に何かが起きるだろうな」
蓮が警戒を緩めずに周囲を見回した。
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三人が祭壇の中心へ近づくと、鍵が自然に青白い光を放ち始めた。
その光は碑に反応し、碑の表面に刻まれた文字が次々と浮かび上がっていく。そして、文字の光がさらに強まり、周囲の空気が震え始めた。
「これが……何を意味しているの?」
玲奈が慎重に碑を見つめながら尋ねた。
「何かが呼び起こされている気がする」
和真が懐中時計を握りしめ、身構える。
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次の瞬間——
祭壇全体が眩い光に包まれ、氷の大地が割れ、中央から巨大な影が浮かび上がった。それは、これまでに見たどの試練とも違う、圧倒的な存在感を持つ巨人だった。巨人は純白の氷でできており、頭部には王冠のようなものが輝いていた。
「こいつが最後の試練か……!」
蓮が剣を構える。
「そうみたいね。でも、この試練を越えれば、すべてが終わる……!」
玲奈が魔法の準備を始めた。
「行くぞ!」
和真が懐中時計を掲げ、光を放った。
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三人は力を合わせ、最後の試練に立ち向かった。
巨人は冷たい霧を吐き出し、強烈な衝撃波を放った。和真は懐中時計の光で巨人の動きを鈍らせ、玲奈は炎の魔法で冷気を打ち消す。そして蓮はその隙を突いて巨人の膝を狙い、剣を振るった。
巨人は何度も巨大な拳を振り下ろし、祭壇の床を砕きながら三人を攻撃した。しかし、三人は決して諦めず、連携を駆使して少しずつ巨人を追い詰めていった。
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激しい戦いの末、巨人はついに崩れ落ち、その体が霧となって消えていった。
「終わった……」
和真が息を切らしながら呟いた。
「これで、本当に最後の試練を越えたのね」
玲奈が鍵を握りしめ、涙をこぼしながら言った。
「ここまで来られたのも、お前たちがいたからだ」
蓮が剣を下ろし、静かに笑った。
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試練が終わった後、祭壇の碑が再び光り出し、新たな文字が浮かび上がった。それは「時間の鍵が集結し、新たな未来への道が開かれる」という古代文字だった。
「これが……すべての意味だったのか」
和真が鍵を掲げ、碑の文字を見つめた。
「私たちが手にした時間の鍵が、未来への扉を開く……」
玲奈が静かに呟いた。
「行こう。新たな未来へ」
蓮が前を見据え、力強く言った。
三人は鍵を碑に捧げると、碑が眩い光を放ち始めた。その光に包まれながら、三人は新たな未来への一歩を踏み出した。
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長い試練を乗り越え、彼らはついにすべての鍵を揃え、凍れる時の祭壇で旅を終えた。しかし、それはまた新たな冒険の始まりでもあった。
三人の姿は光の中に消え、そして彼らを待つ未来の世界が静かに広がっていた。




