表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
時を越えて  作者: pj.masta
35/38

035

 三人は鍵を手に入れ、次なる目的地「霜銀の宮殿」を目指して再び歩き出した。


 氷海の塔での試練を乗り越えたものの、先行きは決して楽なものではなかった。道中、冷たい風がますます強くなり、雪原は視界を妨げるほどの吹雪に覆われていた。


「ここからどれくらいかかるんだ?」


 蓮が身を縮めながら尋ねる。


「この模様の示す場所が正しければ、あと半日の距離のはずよ」


 玲奈が鍵を手にしながら答えた。


「一刻も早く着きたいところだな。この寒さじゃ、長く持たない」


 和真が顔を覆いながら前を見据えた。


---


 険しい吹雪の中、三人はお互いに声を掛け合いながら前進を続けた。


 途中、雪に隠れた岩に足を取られたり、冷たい風で顔が凍りつきそうになったりと、試練は続いた。それでも彼らは決して立ち止まることなく進み続けた。


「もう少し……もう少しで着くわ」


 玲奈が鍵の模様を確認しながら励ました。


「たどり着けると信じよう」


 蓮が強く頷く。


---


 やがて、彼らの目の前に大きな影が見えてきた。


 それは、雪と氷の中から突き出た巨大な建造物だった。宮殿全体が銀色に輝き、まるで氷でできた彫刻のようだった。その高い塔と広がる城壁は、霜と雪に覆われているにもかかわらず、威圧的な美しさを保っていた。


「これが……霜銀の宮殿」


 和真が息を呑む。


「すごい……本当に現実のものとは思えない」


 玲奈も目を奪われていた。


「でも、これが最後の試練とは限らない。気を引き締めよう」


 蓮が警戒を解くことなく言った。


---


 宮殿の入り口には、巨大な氷の扉がそびえ立っていた。


 その表面には、またしても古代文字が刻まれている。和真が懐中時計を掲げて光を当てると、文字が青白く輝き、扉が静かに開いた。


「中に入れる」


 和真が声を上げる。


 三人は扉の向こうへと足を踏み入れた。


---


 宮殿の中は、冷たいながらも荘厳な雰囲気に満ちていた。


 広い大広間の天井は高く、氷でできたシャンデリアが青い光を放っていた。壁面には精巧な氷の彫刻が並び、その一つ一つが物語を語っているかのようだった。


「ここもすごい場所ね……」


 玲奈が周囲を見渡した。


「次の鍵はどこにある?」


 蓮が前を見据える。


「この先の玉座の間にあるはずよ」


 玲奈が模様を頼りに進むべき方向を指し示した。


---


 三人は慎重に宮殿の奥へと進んだ。


 途中、氷の彫刻が動き出すこともなく、静寂だけが彼らを包み込んでいた。足音が反響する中、ようやく玉座の間へとたどり着いた。


 そこには、豪華な氷の玉座が鎮座しており、その上には再び鍵と思われる光る物体が置かれていた。


「見つけた……!」


 和真が呟いた。


「でも、何かが出てきそうね」


 玲奈が警戒を緩めずに答える。


---


 三人が玉座に近づこうとしたその時——


 大広間全体が震動し、冷たい風が一気に吹き抜けた。


「またか!」


 蓮が剣を構える。


 目の前に現れたのは、巨大な氷の騎士だった。その体は鎧に覆われ、両手に大剣を持っている。青白い冷気をまとったその姿は、まさに宮殿を守る最強の番人といった風格だった。


「こいつを倒さないと鍵は取れない……」


 和真が懐中時計を掲げた。


「気をつけて! これまでの試練よりも強いわ!」


 玲奈が呪文を唱え始める。


「行くぞ!」


 蓮が叫び、三人は氷の騎士との戦いに挑む。


---


 騎士は巨大な剣を振り下ろし、氷の床を粉砕するほどの力を見せつけた。三人はその攻撃をかいくぐり、連携を駆使して攻めに転じた。


 和真は懐中時計の光を騎士に当て続け、動きを鈍らせた。玲奈は炎の魔法で冷気を打ち消し、蓮はその隙を突いて剣を振り下ろした。


---


 激闘の末、三人はついに騎士を打ち倒した。


 騎士の体は霧となり、やがて静けさが戻った。


「やっと……」


 和真が息を整えながら呟く。


「鍵を取れるわね」


 玲奈が玉座の上を見上げた。


---


 三人は鍵を手にし、これで全てが終わりではないことを知っていた。


「この鍵が、何を示しているのか……」


 和真が鍵を見つめながら言った。


「次の場所が分かったわ。この模様が示しているのは、“凍れる世界の中心”……」


「最後の場所かもしれないな」


 蓮が呟く。


「そうね。行きましょう」


 玲奈が強い意志を込めて言い、三人は新たな目的地を胸に歩き出した。


---


 次なる試練が彼らを待ち受けている。しかし、彼らは鍵を手にし、進むべき道を見失うことはなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ