033
三人は新たな目的地、「白銀の祭壇」を目指して進んでいた。
極寒の中、彼らの歩みは徐々に鈍くなっていたが、これまで得た鍵の手掛かりを頼りに、雪原を突き進んでいた。
「次の場所はどんな試練が待ってるのかな……」
和真が息を切らしながらつぶやいた。
「ここまで来て、簡単な場所だとは思えないわ」
玲奈が前を見据えながら応じる。
「でも、これまで何とか乗り越えてきた。今回もきっと大丈夫だ」
蓮が力強く言い、三人は気を引き締め直した。
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白銀の祭壇と呼ばれる場所にたどり着いたのは、厳しい道のりを経た後のことだった。
その場所は、見渡す限り雪と氷で覆われた大地の中にぽつんと存在していた。祭壇は白銀に輝く石造りの台座で、周囲には大きな氷柱が立ち並び、冷たい風が渦巻いていた。
「これが……白銀の祭壇か」
和真が足を止めて見上げた。
「すごい場所ね。こんなところにこんなものが……」
玲奈も目を見張った。
「何かが待ち構えてるのは間違いなさそうだな」
蓮が剣を握り直し、警戒を強める。
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三人は祭壇へと近づき、中央に設置された石の台座の上に何かが埋め込まれているのを見つけた。それは青白い光を放つ石で、鍵の模様に似た形をしていた。
「あれが……次の鍵か?」
和真がつぶやく。
「間違いないわ。あれを手に入れれば、次の手掛かりが得られる」
玲奈が冷静に判断した。
「でも、すぐに取れるとは思えない。これまでの経験上、何かしらの試練が待ってるだろう」
蓮が周囲を見渡しながら慎重に言った。
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三人が台座に近づくと、突然、地面が揺れ始めた。
「またか……!」
和真が身構える。
祭壇の氷柱がひとつ、またひとつと輝きを帯び、その光が中央の台座に集中していった。そして、光の中心から巨大な影が現れた。
「これは……」
玲奈が息を呑む。
現れたのは、氷でできた巨大な獣だった。その姿は狼のように四足で構え、鋭い爪と牙を持ち、冷たい霧をまとっていた。
「こいつを倒さなきゃ、鍵を取れないってことか……」
蓮が剣を構え、獣を見据える。
「やるしかない! 気をつけて!」
和真が懐中時計を掲げる。
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氷の獣は鋭い目で三人を見据えた後、突然猛スピードで飛びかかってきた。
「速い……!」
蓮が咄嗟に剣を振るい、獣の動きを防ごうとしたが、その力強さに一歩押される。
「魔法で援護するわ!」
玲奈が炎の魔法を放ち、獣の動きを鈍らせようとする。炎が獣の体を包み込み、少しずつ氷が溶けていく。
「光が効くかもしれない!」
和真が懐中時計を獣に向けて光を放つ。すると、獣の動きが一瞬止まり、怯むような仕草を見せた。
「今のうちだ!」
蓮が獣の横腹に剣を叩き込み、玲奈がさらに炎の魔法を浴びせる。
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三人の連携は、徐々に獣の体力を削っていった。
獣は何度も反撃を試みたが、三人の息の合った攻撃に押され、最後には動きを止めた。そして、冷たい霧と共にその姿を消し去った。
「……やったか」
和真が息を整えながら言った。
「これで鍵を取れるわね」
玲奈が台座の上を見上げる。
「気を抜くな。まだ何かあるかもしれない」
蓮が周囲を警戒する。
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慎重に台座に近づき、三人は鍵を手にした。
それは青白く輝き、これまでの鍵と同じように模様が刻まれていた。
「これで……次に進める」
和真が鍵を握りしめながら呟く。
「次の場所はどこなの?」
玲奈が鍵の模様を指でなぞりながら確認する。
「……この模様が示しているのは、“氷海の塔”という場所よ」
「また難しい場所になりそうだな」
蓮が苦笑する。
「でも、進むしかないわ。この鍵を手に入れた意味を無駄にしないためにも」
玲奈が力強く言った。
和真と蓮も、その言葉に黙って頷いた。
三人は新たな目的地を胸に、再び歩き出した。




