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時を越えて  作者: pj.masta
32/38

032

 三人は次の目的地である「東の大氷河」へ向けて歩き始めた。


 氷冠の神殿での試練を乗り越えたものの、極北の過酷な環境は容赦なく彼らの体力を奪っていく。視界は次第に悪くなり、冷たい風が吹き荒れる中で足元も凍りついていた。


「さすがにキツいな……」


 和真が息を切らしながらつぶやく。


「でも、目的地は近いはずよ。鍵の模様が示していた場所、もうすぐそこよ」


 玲奈が気を奮い立たせるようにして応じる。


「歩き続けるしかないな。止まったら寒さで凍え死ぬかもしれない」


 蓮が慎重に辺りを見回しながら歩を進める。


---


 雪の中をひたすら進むうちに、彼らの目の前に広がる大氷河が姿を現した。


 それは、どこまでも続く巨大な氷の平原で、表面は鏡のように輝いていた。遠くには青白い氷の壁がそびえ、まるでこの世界の果てのような光景が広がっている。


「これが……東の大氷河」


 和真が息を呑む。


「すごい規模ね。こんな場所が本当にあるなんて」


 玲奈が驚きの声を漏らす。


「ここに次の鍵があるのか……?」


 蓮が険しい表情で言った。


---


 三人は慎重に氷河の表面を歩き出した。


 氷は滑りやすく、一歩踏み出すたびに注意を要した。風はますます強くなり、視界もますます悪化していく。時折、地面に足を取られそうになりながらも、彼らは前進を続けた。


「足元に気をつけて! 転んだら大変よ!」


 玲奈が叫ぶ。


「分かってる! だけど、目的地がどこなのか全然分からない!」


 和真が焦りを隠せない。


「この氷河のどこかにあるはずだ! 諦めるな!」


 蓮が力強く応じる。


---


 しばらく進むと、突然、地面が微かに揺れた。


「何だ……?」


 和真が足を止め、周囲を見回す。


 氷河の下から不気味な低音が響き、地面の一部が盛り上がり始めた。その場所には、大きな亀裂が走り、徐々に氷の表面が裂けていく。


「これは……?」


 玲奈が驚きの声を上げる。


 亀裂の中心から、ゆっくりと氷の柱が突き出してきた。それは、まるで氷の巨人が地面から姿を現すような光景だった。柱の頂上には、青白い光を放つ何かが埋め込まれている。


「見て! あれが次の鍵よ!」


 玲奈が指差す。


「やっと見つけたか……でも、簡単には行かせてくれそうにないな」


 蓮が剣を構える。


 柱の周囲からは、氷の結晶が集まり始め、徐々に人型の形を取っていく。いくつもの氷の兵士が、鍵を守るように立ち並んだ。


「また戦うしかないか……!」


 和真が懐中時計を掲げる。


---


 氷の兵士たちは冷たい光を放ちながら迫ってきた。


 和真は懐中時計の光を放ち、兵士たちを一瞬足止めする。蓮はその隙に剣を振るい、玲奈は魔法で攻撃を加える。


 しかし、兵士たちはこれまでの敵よりも動きが速く、三人の連携を翻弄してきた。


「こいつら、今までより強い……!」


 蓮が息を切らしながら叫ぶ。


「でも、何とかしないと鍵にはたどり着けない!」


 玲奈が魔法を放ちながら応じる。


「行くぞ! 全力で行こう!」


 和真が懐中時計を握りしめ、再び光を強める。


---


 激しい戦いの末、三人はついに兵士たちを全て打ち倒した。


「終わったか……?」


 和真が息を整えながら尋ねる。


「多分、これで大丈夫だと思う……」


 玲奈が周囲を確認する。


「次は鍵を取りに行くぞ」


 蓮が剣を下ろし、柱の頂上にある鍵を見上げる。


---


 三人は慎重に柱へと近づき、鍵を取り出した。


 その瞬間、柱全体が青白く輝き、周囲の氷が静かに崩れ始めた。


「早く出るんだ! また崩れるぞ!」


 蓮が叫び、三人は鍵を手に氷河から離れるために走り出した。


---


 振り返ると、氷の柱は完全に崩れ去り、跡形もなくなっていた。


「やっと手に入れたわ……これで、次の場所に進める」


 玲奈が鍵を握りしめながら言った。


「次の場所はどこだ?」


 和真が尋ねると、玲奈は鍵に刻まれた模様を確認した。


「……この模様が示しているのは、“白銀の祭壇”という場所よ」


「また難しそうな場所だな」


 蓮が肩をすくめる。


「でも、進むしかない。これまでだってそうだったから」


 和真が力強く言った。


 三人は新たな手掛かりを胸に、次の目的地を目指して再び歩き出した。


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