032
三人は次の目的地である「東の大氷河」へ向けて歩き始めた。
氷冠の神殿での試練を乗り越えたものの、極北の過酷な環境は容赦なく彼らの体力を奪っていく。視界は次第に悪くなり、冷たい風が吹き荒れる中で足元も凍りついていた。
「さすがにキツいな……」
和真が息を切らしながらつぶやく。
「でも、目的地は近いはずよ。鍵の模様が示していた場所、もうすぐそこよ」
玲奈が気を奮い立たせるようにして応じる。
「歩き続けるしかないな。止まったら寒さで凍え死ぬかもしれない」
蓮が慎重に辺りを見回しながら歩を進める。
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雪の中をひたすら進むうちに、彼らの目の前に広がる大氷河が姿を現した。
それは、どこまでも続く巨大な氷の平原で、表面は鏡のように輝いていた。遠くには青白い氷の壁がそびえ、まるでこの世界の果てのような光景が広がっている。
「これが……東の大氷河」
和真が息を呑む。
「すごい規模ね。こんな場所が本当にあるなんて」
玲奈が驚きの声を漏らす。
「ここに次の鍵があるのか……?」
蓮が険しい表情で言った。
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三人は慎重に氷河の表面を歩き出した。
氷は滑りやすく、一歩踏み出すたびに注意を要した。風はますます強くなり、視界もますます悪化していく。時折、地面に足を取られそうになりながらも、彼らは前進を続けた。
「足元に気をつけて! 転んだら大変よ!」
玲奈が叫ぶ。
「分かってる! だけど、目的地がどこなのか全然分からない!」
和真が焦りを隠せない。
「この氷河のどこかにあるはずだ! 諦めるな!」
蓮が力強く応じる。
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しばらく進むと、突然、地面が微かに揺れた。
「何だ……?」
和真が足を止め、周囲を見回す。
氷河の下から不気味な低音が響き、地面の一部が盛り上がり始めた。その場所には、大きな亀裂が走り、徐々に氷の表面が裂けていく。
「これは……?」
玲奈が驚きの声を上げる。
亀裂の中心から、ゆっくりと氷の柱が突き出してきた。それは、まるで氷の巨人が地面から姿を現すような光景だった。柱の頂上には、青白い光を放つ何かが埋め込まれている。
「見て! あれが次の鍵よ!」
玲奈が指差す。
「やっと見つけたか……でも、簡単には行かせてくれそうにないな」
蓮が剣を構える。
柱の周囲からは、氷の結晶が集まり始め、徐々に人型の形を取っていく。いくつもの氷の兵士が、鍵を守るように立ち並んだ。
「また戦うしかないか……!」
和真が懐中時計を掲げる。
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氷の兵士たちは冷たい光を放ちながら迫ってきた。
和真は懐中時計の光を放ち、兵士たちを一瞬足止めする。蓮はその隙に剣を振るい、玲奈は魔法で攻撃を加える。
しかし、兵士たちはこれまでの敵よりも動きが速く、三人の連携を翻弄してきた。
「こいつら、今までより強い……!」
蓮が息を切らしながら叫ぶ。
「でも、何とかしないと鍵にはたどり着けない!」
玲奈が魔法を放ちながら応じる。
「行くぞ! 全力で行こう!」
和真が懐中時計を握りしめ、再び光を強める。
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激しい戦いの末、三人はついに兵士たちを全て打ち倒した。
「終わったか……?」
和真が息を整えながら尋ねる。
「多分、これで大丈夫だと思う……」
玲奈が周囲を確認する。
「次は鍵を取りに行くぞ」
蓮が剣を下ろし、柱の頂上にある鍵を見上げる。
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三人は慎重に柱へと近づき、鍵を取り出した。
その瞬間、柱全体が青白く輝き、周囲の氷が静かに崩れ始めた。
「早く出るんだ! また崩れるぞ!」
蓮が叫び、三人は鍵を手に氷河から離れるために走り出した。
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振り返ると、氷の柱は完全に崩れ去り、跡形もなくなっていた。
「やっと手に入れたわ……これで、次の場所に進める」
玲奈が鍵を握りしめながら言った。
「次の場所はどこだ?」
和真が尋ねると、玲奈は鍵に刻まれた模様を確認した。
「……この模様が示しているのは、“白銀の祭壇”という場所よ」
「また難しそうな場所だな」
蓮が肩をすくめる。
「でも、進むしかない。これまでだってそうだったから」
和真が力強く言った。
三人は新たな手掛かりを胸に、次の目的地を目指して再び歩き出した。




