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時を越えて  作者: pj.masta
24/38

024

 僧の指し示す方向へ進んだ先には、北の地にあるという大寺院がそびえていた。


 その寺院は、どっしりとした石造りの門を構え、長い歴史を物語るように苔むしている。門の先には広い境内が広がり、多くの僧侶たちが行き交っている様子が見えた。和真たちは慎重にその門をくぐり、寺院の中へと足を踏み入れた。


「すごいな……こんな大きな寺院がこんな場所に」


 和真が目を見張りながら呟いた。


「ここは、この地で最も古い寺院の一つだと聞いているわ。神子にまつわる伝承も多く伝えられている場所よ」


 玲奈が解説する。彼女の言葉に蓮も頷きながら辺りを見回した。


「ここの僧侶たちが“言霊の巻”を保管しているはずだな。もしその巻物を見せてもらえれば、道標に刻まれた古代文字の解読ができる」


「問題は、それをどうやって借りるか、だな」


 蓮が言い、三人は目立たぬように本堂の奥へと進む。そこには数人の僧が集まり、静かに経を唱えていた。


「……あの、すみません」


 玲奈が勇気を出して話しかけると、一人の僧が振り返った。


「何用であられますか?」


 僧の声は穏やかだが、その視線は彼らをじっと見据えている。


「私たちは、神子に関する伝承を調べている者です。この寺院にある“言霊の巻”を拝見させていただきたいのですが……」


 玲奈が頭を下げる。僧は彼女の態度を見てしばらく考え込んだ後、ゆっくりと頷いた。


「分かりました。ただし、この巻物は非常に貴重なもので、軽々しく触れることは許されません。私が案内しますので、ついて来てください」


 僧は三人を本堂の奥へと導く。そこには厚い扉で守られた書庫があり、扉を開けると、中には数多くの古い巻物や書籍が並んでいた。


「これが……」


 和真が息を呑む。僧が棚の中から一本の巻物を取り出し、慎重にその表面を撫でるようにして広げた。


 それは、古代の文字でびっしりと書かれた巻物だった。和真たちは巻物の内容に目を凝らし、道標の文字を解読するための鍵となる一節を探し始めた。


「ここにあるわ」


 玲奈が指差した部分には、道標に刻まれていた文字と同じ形が並んでいた。


「これで、道標の文字の意味が分かる」


 玲奈が慎重に言葉を選びながら解読を始める。その内容を読み進めるにつれ、三人の表情は次第に緊張感を帯びていった。


「どうだ、分かるのか?」


 蓮が気を揉むように聞くと、玲奈は真剣な表情で答えた。


「これは……次の時の鍵の場所を示しているようね」


「次の鍵はどこにある?」


 和真が前のめりになって尋ねる。


「この巻物によると……次の鍵は“黄昏の聖域”と呼ばれる場所に隠されているみたい」


「黄昏の聖域……?」


 和真がその名前に眉をひそめる。


「黄昏の災厄に関する話を聞いたときにも、その名が出てきたな」


 蓮が補足する。


「それって、災厄が生まれる場所なのか?」


「正確には分からない。でも、そこに次の時の鍵があるのは間違いなさそうね」


 玲奈がそう言うと、僧も静かに頷いた。


「黄昏の聖域は、古の時代から封じられた場所として知られています。そこに足を踏み入れることは危険を伴いますが、もしお主たちが本当に鍵を求めているのなら、行く価値はあるでしょう」


「危険……」


 和真は僅かに表情を曇らせた。


「でも、行くしかない」


 蓮がきっぱりと言い放つ。


「次の鍵を見つけなきゃ、どうにもならないんだからな」


「そうね」


 玲奈も頷く。


「この先何が待っているにせよ、進むしかないわ」


 和真も彼らの言葉に静かに同意し、懐中時計を握りしめた。


「分かった。黄昏の聖域へ行こう」


 三人は、僧への感謝の言葉を告げ、大寺院を後にした。


---


 寺院を出た三人の足取りは、今まで以上に確かだった。


 彼らは次の鍵、そしてこの世界における自分たちの役割を見極めるため、さらに深くこの地を探索する決意を新たにした。


 黄昏の聖域へ向かう旅路が、彼らの運命をどう変えていくのか——それは、まだ誰にも分からない。


 ただ、和真の懐中時計の光が、彼らの進むべき道を静かに示しているように感じられた。


 新たな目的地を胸に抱き、三人は北の地へと再び歩き出した。


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