022
巻物を開いた三人は、そこに記された内容に目を見張った。
玲奈が震える手で指をなぞる。
「……時の鍵がすべて揃う時、真の神子が選ばれる……」
「つまり、今俺が持ってるこれだけじゃ足りないってことか?」
和真は懐中時計を手に取りながら尋ねた。あの光を放つ“時の鍵”が複数存在する。少なくとも、この巻物にはそう記されているようだった。
「そうみたいね」
玲奈が慎重に言葉を選ぶ。
「もし、これが本当だとしたら……」
「黄昏の災厄を本当に鎮めるためには、すべての時の鍵を集める必要がある」
蓮が続ける。彼もまた、その意味を冷静に考え込んでいた。
「でも……時の鍵って一体、どこにあるんだ?」
和真が首をかしげる。
「この巻物には、場所までは書かれていないわね」
玲奈は目を凝らして文字を追ったが、時の鍵についての具体的な位置情報や詳細は一切書かれていなかった。
「手掛かりがなさすぎるな」
蓮が腕を組みながら呟いた。
「だが、少なくともここに一つあったわけだ。他の鍵もどこかに隠されているはずだ」
「問題は、その“どこか”をどう見つけるかだな」
和真がため息をつく。
次の手掛かりがない以上、彼らは進むべき道を模索しなければならなかった。
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祠の外に出ると、夜風が冷たく肌を撫でた。
「村に戻って、もう一度情報を集めてみよう」
玲奈が提案する。
「他に手掛かりがない以上、今は情報を集めるしかない」
「……だな」
和真も同意する。
「少なくとも、村の人たちが異界の影について知っていることがあるかもしれない」
蓮も頷き、三人は村へと足を向けた。
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村に戻ると、先ほどの老人が待っていた。
「あの影を追い払ってくれて……本当に感謝しておる」
彼は深々と頭を下げた。
「いや、俺たちも自分たちが何をするべきか、まだ分かっていないんだ」
和真が率直に答えると、老人はふと顔を上げ、何かを思い出したように口を開いた。
「……そういえば、村の北の森には、かつて“神子の道標”と呼ばれる石碑があったと聞いたことがある」
「神子の道標……?」
玲奈が尋ねる。
「ええ。それは、神子が黄昏の災厄を封じた場所を示すものだと言われておる。もっとも、それがどこにあるかは誰も知らない。だが、森の奥深くにあるという話だけが残っておる」
「それが手掛かりになるかもしれない」
蓮が目を光らせる。
「行ってみる価値はありそうだな」
「そうね」
玲奈も同意する。
「少なくとも、今はその森に行ってみるしかない」
和真も、懐中時計を見つめながら頷いた。
次の手掛かりを求めて——
三人は、再び歩き出した。




