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時を越えて  作者: pj.masta
21/38

021

 影が和真たちへと襲いかかる。


「くそっ!」


 蓮が咄嗟に剣を抜き、影の動きを阻止しようとした。しかし、剣はまるで虚空を切り裂くかのように、影を通り抜けてしまった。


「効かないのか……!」


 和真が後退しながら叫ぶ。


 玲奈も焦りを隠せない表情で懐から小さな守り袋を取り出した。それは寺を出る際に円信から渡されたもので、「危険に直面した時に使うように」とだけ言われていた。


「これを……!」


 玲奈が袋を地面に叩きつけると、中から白い煙が立ち上った。煙は瞬く間に広がり、影の動きを鈍らせる。


「今のうちに距離を取れ!」


 蓮が叫び、三人は老人を抱えるようにして村の中心部へと後退する。


 しかし、影は煙を抜けると、再び不気味な動きで追いかけてくる。


「どうすればいいんだ……!」


 和真が懐中時計を強く握る。その光がますます強くなり、まるで彼に何かを伝えようとしているかのようだった。


「和真くん、その光……!」


 玲奈が気づき、懐中時計に目を向ける。


「この光が……何かの鍵なのか?」


 和真は時計を前に突き出した。その瞬間——


 懐中時計から放たれた光が、影を包み込んだ。


「っ……!」


 影は動きを止め、奇妙な音を立てながら徐々に形を崩していく。そして、やがて完全に消え去った。


「消えた……」


 蓮が息を呑む。


「やっぱり、これが“時の鍵”なんだ……」


 和真が呟く。


 その時、村のあちこちで閉ざされていた家々の扉がゆっくりと開き始めた。


「……何が起きたんだ?」


 村人たちが恐る恐る姿を現し、和真たちをじっと見つめる。


 彼らの間にざわめきが広がる中、先ほどの老人が小さな声で言った。


「……お主たちが、“神子”なのか?」


「……!」


 玲奈がその言葉に息を呑む。


「どうして……」


「“神子”は、黄昏の災厄を鎮める存在だと……昔、祖父から聞いたことがある」


 老人の声は震えていたが、その目には確かな期待が込められていた。


「黄昏の災厄を……鎮める……」


 和真は改めて懐中時計を見つめた。


「俺たちが、何かを鎮められる存在だっていうのか?」


「確証はない。でも……」


 玲奈が慎重に言葉を選びながら答える。


「今、和真くんの“時の鍵”が影を消した。それだけは事実よ」


「それじゃ、あの影が何なのか確かめないといけないな」


 蓮が冷静に提案する。


「村の外れには、昔の神子にまつわる祠があるって聞いた。そこを調べれば、何か手がかりが見つかるかもしれない」


「祠……」


 和真が思案する。


「じゃあ、そこへ行ってみよう」


 三人は意を決し、村人たちの感謝の言葉を背に祠へと向かうことにした。


---


 村の外れにある祠は、苔むした石段を上がった先に静かに佇んでいた。


「ここが……」


 玲奈が呟きながら近づく。


 祠の中には古びた灯篭があり、その脇には古い石碑が立っていた。


「これに、何かが……」


 和真が石碑を調べようとした瞬間——


 またしても懐中時計が光を放った。


「っ……今度は何だ?」


 光は石碑全体を包み込み、そこに刻まれていた文字が浮かび上がる。


《神子よ、汝の鍵を以て封印を解け》


「封印……?」


 玲奈が不安そうに呟く。


「まさか、これが災厄を封じていた場所ってことなのか?」


「分からない。だが、やるしかないだろう」


 和真は懐中時計を石碑に近づけた。その光が強まり、周囲の空気が張り詰める。


 そして——


 石碑が音を立てながら動き始めた。


 中から現れたのは——


 まばゆい光に包まれた、さらに古びた巻物だった。


「これが……!」


 玲奈が息を呑む。


 巻物を取り出し、中を確認すると、そこには奇妙な紋章と共に古代の文字がびっしりと記されていた。


「これが、黄昏の災厄に関する……」


 和真たちはその内容を読み進める。


 そこには、驚くべきことが書かれていた——。


《時の鍵がすべて揃う時、真の神子が選ばれる》


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