017
夜が明ける頃、和真たちはそれぞれの考えを整理しながら、次の行動を決めるために再び話し合っていた。
「まず、俺たちが知るべきことは二つある」
蓮が地面に線を引きながら言う。
「一つは、俺たちがこの時代に呼ばれた本当の理由。もう一つは、黒鎧の男が言う“神子の選定”の意味だ」
「確かに……」
和真は腕を組んだ。
「黒鎧の男は、俺たちを消そうとした。でも、最後には“選択の時はそう遠くない”って言ったよな? まるで、俺たちがその決断をしなければならないことが決まってるみたいに」
「そうね」
玲奈も頷く。
「私たちは、単なる偶然でここに飛ばされたわけじゃない。何かしらの力が働いた結果、ここに来た。だからこそ、その“誰か”が私たちに何を求めているのかを知る必要があるわ」
「そのために、どこへ行くべきか……」
和真は考え込む。
宮廷の記録庫には、確かに“異邦人”の記録が残されていた。しかし、それだけでは核心には至らなかった。
その時——
「……寺だ」
蓮が呟いた。
「寺?」
「ここから少し離れた場所に、ある僧が住む寺がある。俺は前にそこで聞いたことがあるんだ……“かつて、この国に来た異邦の者は、天の導きを受けた”って」
「天の導き……?」
玲奈が眉をひそめる。
「それって、もしかして……」
「神子のことかもしれない」
蓮は静かに言った。
「もしその寺に、過去の異邦人に関する記録や伝承が残っているなら、俺たちがここに来た理由の手がかりが見つかるかもしれない」
「……確かに、それは調べてみる価値があるな」
和真は頷いた。
「じゃあ、次の目的地は決まりね」
玲奈が立ち上がる。
「私たちは、その寺に向かって“異邦人の記録”を探す」
和真と蓮もそれに続いた。
「行こう。答えを探すために」
彼らは、まだ見ぬ真実を求め、新たな道へと踏み出した——。